バーニーG

スポーツ歴がまったくない歴史オタクが息子の少年野球チーム入団とともにコーチに就任。「汗…

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スポーツ歴がまったくない歴史オタクが息子の少年野球チーム入団とともにコーチに就任。「汗」「根性」「友情」とまるで縁のない生活から一変し、いつしか野球オタクに成長した愛と奇跡の物語である。 基本的に実話だが、登場人物すべてのプライバシー配慮と身バレ防止のため一部フィクション

最近の記事

息子が少年野球チームに入ったら人生変わった VOL:7 たかが少年野球、されど少年野球

北千住駅から徒歩1分。繁華街に入ってすぐの場所にある「千住の永見」という居酒屋で、小学校から高校まで同級生だったAと待ち合わせた。学生時代にラグビーをしていた男で、今は新聞社の運動部に所属してプロ、アマを問わずにスポーツの記事を書いていた。2人の勤務先と自宅を考慮し、ともに電車1本で帰れる北千住を選んだのだった。 おとなしく目立たない私は、いつもクラスの中心にいるAと2人になることに緊張した。だが、かれは相手によって態度を変えるような男ではなかった。初めて一緒に帰ったときに

    • 息子が少年野球チームに入ったら人生変わった VOL:6 大荒れコーチ会③

      「何を言っているんですか! 別にうちの息子のことじゃないですよ」 Xさんは、ヘッドコーチの反撃を受けて立ち上がって叫んだ。場がシーンとなった。私が初めて出席したコーチ会は、Xさんがチーム批判を展開したことから殺伐とした雰囲気になり、多くの人はうつむくように下を向いた。ヘッドコーチは言葉を続けた。 「今日のスコアブックはこれです。また、昨年の出場データも持ってきました。先ほど監督も言ったように、長期的に見ると出場機会に差はありません。打席数を比べてみてください。ただ、一番少

      • 息子が少年野球チームに入ったら人生変わった VOL:5 大荒れコーチ会②

        練習後に帰宅して長男と風呂に入った。運動しているとはいえ、一日中、1月の寒空にいたわけだから、湯船につかるとこわばっていた体がとけるように感じた。長男は何度も頭までもぐって気持ちよさそうにしていた。 「おれ、ショートをやりたいんだよ。みんなはピッチャーがいいって言うけど、ショートの方が格好いいなあ。巨人の坂本みたいになりたいな」 ショートの位置ぐらいは分かるが、役割まではよく分からない。巨人の坂本という選手は名前も聞いたことがなかった。いや、きっと有名なのだろうが、何しろ

        • 息子が少年野球チームに入ったら人生変わった VOL:4 大荒れコーチ会①

          ある水曜日の夕方、品川の関連会社で打ち合わせを終えると午後5時だった。帰社しても急ぎの案件はなかったので、直帰することに決めた。日の短い1月とあり陽は落ちかけていたが、まだ真っ暗にはなっていなかった。そんな時間に自由になるのは珍しいことで、どことなく気持ちが弾んだ。 大井町に行くことにした。1人で早い時間から飲むには最適の場所で、路地の角にある立ち飲み店でコップを傾けていると、いけないことをしているような背徳感が何とも心地いいのだ。JR京浜東北線に1駅だけ乗り、大井町の路地

        息子が少年野球チームに入ったら人生変わった VOL:7 たかが少年野球、されど少年野球

        • 息子が少年野球チームに入ったら人生変わった VOL:6 大荒れコーチ会③

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          息子が少年野球チームに入ったら人生変わった VOL:3 妻への疑念

          コーチとして初めて参加した練習。最初は何をしていいのか分からず、ベンチ付近でウロウロしていた。他のコーチから話しかけられるが、皆そろったように野球経験を問うてきて、私が「ルールすら分かりません」と答えると、興味を失ったように離れていく人もいれば、「私もなんですよ。でも大丈夫です」と勇気付けてくれる人もいた。その1人、小柄なMさんはニコニコしていて、いかにも人がよさそうだった。気を許して少し話をした。 「Mさんも、毎週末きているんですか? 休む暇がありませんね」 「そうなん

          息子が少年野球チームに入ったら人生変わった VOL:3 妻への疑念

          息子が少年野球チームに入ったら人生変わった VOL:2 コーチと呼ばれて…

          翌朝7時に目覚ましが鳴ったが、しばらく布団の中で逡巡していた。寒い季節は起き上がるためには勇気がいる。平日はその勇気を絞り出しているのだが、土曜日までそれが必要となるとは思わなかった。 「早く起きて準備してね」 妻の声に駆り立てられ、しぶしぶ起きていくと、長男はすでにジャージに着替えて野球帽をかぶっていた。ユニフォーム一式はスポーツ店に注文したが、まだできあがっていないという。ちなみにグローブもバットも持っていない。妻と長男で買いに行ったものの、あまりに種類が多くて決めき

          息子が少年野球チームに入ったら人生変わった VOL:2 コーチと呼ばれて…

          息子が少年野球チームに入ったら人生変わった VOL:1 金曜の夜

          金曜日の夜は「1人で酒を飲む」と決めている。会社では総務部署に所属しており、接待や打ち合わせなどの会食はほとんどない。その代わり上司や同僚から「今日はゆっくり飲めるよな」と会社付近の居酒屋に誘われる。それも嫌いではないのだが、最初は時事ネタやゴルフなどの雑談をしていても、酔いが回ると仕事の話になる。これだと休日に向けて気持ちのリセットができず、土曜の朝にモヤモヤした気持ちが続き、「夕べ、何か余計なこと言わなかったかな」などと振り返る時間も出てくる。休みに集中できないのだ。

          息子が少年野球チームに入ったら人生変わった VOL:1 金曜の夜