あなたが掃除をするとき思い出すべきたったひとつのこと
友人Aが小学生の頃、同級生にダンサーがおり、すべてのダンサーが高飛車だと相場が決まっているわけではない、しかしそのダンサーは高飛車だったから、「あのダンサーは高飛車だ」ということで、クラスメイトから疎まれていた。
ある日、大掃除があって、それは机から椅子まですべて裏返し、机の底から椅子の足まですべて拭き切るという日だ。Aは『机拭き係』だったから、机を拭いた。順調に拭き進め、ダンサーの机をひっくり返したのだが、そこにあったのは、無数の、尾を引く彗星を思わせる、鮮やかな痕だった。ところがそれは彗星ではなく、もちろん、なすりつけられた鼻くそだ。
「拭いてあげないと」Aは思った。「誰かに見つかっていじめられる前に、拭いてあげないと」。Aはこっそり教室を抜け出した。水道まで歩いていき、雑巾をよく濡らし、教室に戻ると、ダンサーの机はクラスのみんなに囲まれていて、あだ名は鼻くそで決まっていた。
思い立ったら、急がなくてはいけない。Aはそれを学んだはずだ。
別の日、Aがダンサーの家に遊びにいった。クラスで高飛車だと疎まれるダンサーと、Aは仲良くしていたのだ。Aはダンサーと遊んだ。ダンサーと、ダンサーのシェットランドシープドッグと、みんなで遊んだ。
あるとき、ダンサーがトイレに立った。Aは犬と向かい合わせで待っていた。なかなかダンサーは戻らなかった。Aは犬と向かい合わせで待っていた。それでもダンサーは戻らない。そのうち犬が糞をした。そしてその糞をまるまる食べた。
そこでダンサーが帰ってきた。犬を抱いた。Aは、急がなくてはいけない。「あ、さっき犬が、」と言ったが、そのときにはダンサーと犬はチューしていた。
ハワイが危機になったらハワイキキなんですかね?