なぜあなたは担任の言葉を忘れられないのか

子供時代の担任の発言はいつまでも胸に残る。卒業シーズンの今だから、そのことをよりいっそう強く感じる。

小学5年のころ、体育のあとにマットを片付けていた。その作業のなか、偶然私と担任が二人だけで体育倉庫に入るかたちになった瞬間があり、そのとき偶然奥の壁に落書きを見つけた。私のクラスの男子に向けた、辛辣な悪口だった。

釘付けになった私を心配して、担任が寄ってきた。彼も壁の悪口を見とめた。

そこからの担任の動きは迅速で、落書きの内容を他言しないよう私に釘を刺すと、体育倉庫を出、鍵を掛け、クラスのメンバーを全員教室へ帰した。おそらく彼はそれから壁の落書きを拭き取り、残りのマットを片付けたり、職員室でほかの職員に事態を報告したり、そういう奔走をしたのだと思う。

教室で私たちクラスのメンバーは担任が帰ってくるのを待っていた。すでに体育の次の算数が始まる時間になっていた。教室は騒がしかった。ちらと見ると、悪口を書かれた池尻は熱心に隣の女子へと話しかけてはあしらわれていた。

担任が扉を開けた。大きな声を出したが喧騒は鎮まらなかった。しかし担任は話し出した。

「悲しい知らせがある」

我々は自然と静かになった。全員が担任に注目した。

「体育倉庫に、このクラスの生徒の悪口が書かれていた。もちろん名前は言わないが」

すこしざわついたが、我々は担任に注目したままだった。ふたたび担任は口を開き、

「まずこれを言っておきたい。絶対に二度と、こんなことはするな。悪口を書かれた人がどれだけ傷付くか解るか? 今回は先生が先に発見したけど、本人が見つけてしまったらどれだけショックを受けたと思う? 池…」

ハワイが危機になったらハワイキキなんですかね?