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イケメンBeaconが止まらない

突然、心を揺さぶられる時がある。それはイケメン。それは美である。

今朝、それは声で始まった。

PCを開いてYoutubeを見ると、見慣れぬミックスリストにハングル文字が踊っていた。何の気なしにクリックすると、甘い歌が流れ、突然妄想トリップ。

わたしは下町の路地を急いでいた。打ち水が乾き始め、日差しが差し込むと5月でも暑い。家々の間より細かく差し込む光の向かうから、憂いを含んだイケメンが歩いてきた。

完全にスローモーション。むしろ、時は止まった。


美というもの

イケメンというのは、何百メートル離れていても、イケメンだと認識できるから不思議である。

イケメンBeacon※が感知する範囲は、広大で、リアル・バーチャルを問わない。

否、イケメンに限らず、性別なんて問わないし、もちろん、犬や猫にも発動する。

この際、見た目だけではない。雰囲気、ボイス、なんでもあり。

性別・国境・種を超えた、「美」Beacon。その限界を知らない。自分が怖い。

※Beacon : よくお店に近づくと、スマホにメッセージがピコンとくることがありますよね。お店側にBeacon端末が配置されており、スマホが近づいたことを検知して、プッシュ通知するという仕組みだそうです。販促なんでしょうが、スマホ側からしたら迷惑極まりありません。イケメンの場合は、イケメンがスマホ、わたしにBeaconが内蔵されていることになります。イケメンは知ったこっちゃありませんが、わたしの方はイケメンを逃さないという構図になります。

美しいヒト

先日やめてしまった会社に、相当な美しい女性がいた。

その人を見ると、息が止まった。周りの男たちは頰が緩み、だらしなかったが、そんなのは恐れ多かった。この女性はそっとしておかなきゃいけない。

気分はさながら、騎士である。たぶん、わたしはオフィスで、突如鎧を身に付け、鎧の下で息を殺して、彼女を昼夜問わず見守っていた。定時に帰るけど。彼女が去れば、バリバリ音を立てて歩き周りを牽制していたはず。多分昼食は干し肉。

彼女と、鵠沼海岸で出くわした時を思い出す。

ある夏の日、私は息子と娘を引き連れて、江ノ島の海で遊び呆けて、帰ろうかというところだった。

夕暮れ。空気はメロー。これらは、古今東西、美の訪れを定義する「歳美記」にもあるとおり。

何車線もある横断歩道の向こうに誰かがいた。

その距離でBeaconが、来る!と予告した。電流が走る。

彼女だった。

彼女にかしづく永遠の騎士であるわたしは馬から降りて、彼女を守るべく遠まきに頭を垂れて、彼女が通り過ぎるのを待った。実際は、車にひかれるので、急いで通り過ぎたんだけど。


そこで、わたしは、確かに確信した。

美は遠くにあっても、美である。美は遠くにありて思うもの、あれ、故郷か。


CIKIというヒト

話は全く逸れたが、そういう美が今朝突然、路地の向こうからやってきた。天変地異ともいう。

こちらはパジャマで半分寝ぼけて頭をかいていたが、そんなのどうでもいい。あちらが美であり、常にあちらに主導権がある。我らのBeaconは常に命令に従うまで。

で、彼は、CIKIという名前らしい。

検索すると、一応本人が紹介しているMVが見つかった。他の曲も聞いて欲しい。

もちろん韓国語は分からないが、恋の歌、以外の何ものでもない、はずだ。


韓国という国

かつて韓流ブームがあった時、わたしはそれに全力であらがった。日本中が、ママ友もみんなハマってたが、ヨンさまをチラ見しながら、荒ぶる心を縛りつけ、長いブームを何とかやり過ごした。

それはおそらく、24歳で海外出張していた時に出会った、韓国人の年下の男の子のせいである。

あれはマジで危険だった。

まずイケメンの部類だった。かわいい年下のイケメン。まずい。

3ヶ月の海外出張、これもちょうど良すぎる。まずい。

毎週末いろんな場所に誘われ、断らなかった。味見したい気持ちに逆らえない。まずい。

彼は、結婚したら、女性にはうちにいてほしいと言った。僕のお母さんもそうだし、といった。そうなのか、それムリだな、と思った。だって自分のお父さんとお母さんにお金渡したい、だから働かなきゃいけないしな、と、聞かれてないけど、思った。

英語がいまいちで、半歩遅れているわたしに、社内の情報をいち早くシェアしてくれて、困る前に必ず助けてくれた、それが、正直ありがたかった。

笑顔が優しくて、どこか寂しそうで、こりゃ、危険だ、とわたしは思った。すごい偏見であるが、韓国=魅力的=危険の方程式ができた。Beaconが危険と言っている。この沼はハマったらまずい、これがわたしの実感だった。


なので、韓流ブームにもあらがったわけだが、今朝難なく、ダムは決壊した。すでに、決壊GOという勢いだったのかもしれない。あの時決壊してたら、どうなってたんだか。その妄想はやめておこう。


ということで、朝からBeaconが鳴り止まない。これからラップ温泉から、コリアン温泉が始まるかもしれない。分からない韓国語を勝手に頭で翻訳して、イケメンに悶える気すらする。


そして、Beaconに、おまえはもともと節操のない人間だよ、と、言われたような気がした。