2013.07.11 じゃあ俺が…初めての人なんだ?

先日、近所に住む妹Aが
「もはや使えるバスタオルが1枚もない」
と言うので、

(世間様に“バスタオルも与えず手で拭かせている姉”だと思われても癪だな…)

と思い、2枚ほどうち(独居)の物干し竿から、

<わざわざ><洗いたての><顔をうずめたくなるような><シミ一つない>
バスタオルを持って行ってあげたのに、手渡した瞬間、

「うわっ…この感触…あぁ…」

と言って遠い目をされた。

「懐かしいね…実家、思い出すわ…」

そう、うちのバスタオルはバリバリだ。
ハンカチもフキンもクロスも、全部バリバリしている。
柔軟剤を使ってないからだ。
実家でもずっとバリバリのタオルしか使ったことがなかった。

タオルはバリバリであり、バリバリはタオルであるので、
所詮CMで見るふかふかのタオルなんていうものは、
過剰演出でしかないのだろうと思っていた。

なのに上京して、彼氏が出来て、
人様の家で初めてバスタオルを借りた時の衝撃。
ち○こが生えるかと思った。

なんであなたのバスタオルはふかふかなの!なんでどうしてわたしのおうちのバスタオルはずっとバリバリでほんともうそれはずっとずっとバリバリ、バリバリだったんだからぁ!

と、思わず彼氏とバスタオルをもみくちゃにした。

「ちょ、えぇ!?それダウニーだよ、だ・う・に・い。」
「は、はへぇ…?」(なにそれ…このしとなにいってゆの…)
「柔軟剤だよ、じゅう・なん・ざい…オケ?」


全然OKじゃない。
まったくもってOKじゃない。
そもそも柔軟剤ってなんなの、
なんて言ったらいいのこのキモチなに、
全然…
全然分からないよ!

胸はざわざわ。やたらざわざわ。
森山良子にも負けないぐらいのざわわ感。

(水泳の時間になっちゃんのタオルがふかふかしていたのは、きっと“おろしたて”だったから。)
(ゆうき君のタオルがいい匂いなのは、きっとお母さんが“いい匂いのひと”だから。)

ずっと、ずっとそう信じてきたのに…

あぁ…違ったんだ…
あのCMのふかふかのタオルも…
それじゃああれは…企業努力だったんだ…
本物の、“ふかふか”だったんだ…

打ちひしがれたわたしに彼氏はそっと柔軟剤を渡し、

「じゃあ俺が…初めての人なんだ?」

と笑った。

ナニがどうしてどういう意味での“初めて”なのかは分からないまま、

(そっちは初めてでもないんだけどな…いやまてよでもそっちじゃなくてこっちかな?)

なんて思ったり思わなかったりで、
だがしかし男性が持つ処女信仰的なものを壊して嫌われたくはないと
変な気配りというか要らぬ配慮をした私は
バリバリのタオルよろしく彼に抱かれ、
『脱・バリバリ宣言!~もう“蒲焼さん太郎”なんて呼ばせないからっ~』
そう堅く誓い、柔軟材と共に眠りについたのであった。

あれから9年、目の前に差し出されたタオルはなぜかバリバリしたままだ。
妹の目が虚ろになってしまうくらい、バリバリのままだ。
なぜだろう。

あぁそうだ、洗濯機だ。洗濯機がいけないのだ。
あんなにキレイでピカピカしていて、
新品サイコー!洗濯サイコー!な毎日を送っていたのに、
もう7年も使ってるからなのか(どう考えてもそれ)、
日ごと柔軟剤ポケット(と呼ばれる柔軟剤をセットする場所)が汚れていき、
もうそんじょそこらのゴシゴシやぼりぼりでは落ちない汚れになってしまった。

だからやめた。もうやめた。わたしはふかふかなんてやめたの。

バリバリというスタイルを、(や、ちょっとそれあんまゴシゴシさせないで)
このオリジナルバリバリマイスタイルを、(だからちょっと、顔は強くこすんないで)
ふかふかと生きている今の若者達に、(そうじゃなくてホラ、もっとこうやさしくっ)
提示して(ちがうよそこは押さえるように拭いてよっ)
いきたいのである(いっ…いたっ)


痛いよっ…!
やっぱ痛いよっ…!
バリバリしてて痛いよっ…!

妹が流血沙汰になっていないことを…願うばかりだ。

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