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「万葉集」私撰秀歌

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「万葉集」から、これはと思った歌を抜き出していきます。私の趣味で選んでいるので、世間の評価とは違うと思います。
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2016年6月の記事一覧

「万葉集」私撰秀歌 歌巻3・235

「万葉集」私撰秀歌 歌巻3・235

「大君は神にしませば天雲(あまぐも)の雷(いかづち)のうへに蘆(いほり)せるかも

柿本人麿」

●整理:

大君は
神にしませば

天雲の
雷の上に
蘆せるかも

●歌意:

 天皇は神であるから、天に轟く雷(いかづち)の名を持つ山の上に、行宮(あんぐう)を作られた。

●感想:

 するっと読める。「天雲」「雷」「上」と、するすると進み、絵が浮かんでくる。張りのある力を感じる歌。

・‥…‥・

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「万葉集」私撰秀歌 歌巻2・208

「万葉集」私撰秀歌 歌巻2・208

「秋山の黄葉(もみぢ)を茂(しげ)み迷(まど)はせる妹(いも)を求めむ山道(やまぢ)知らずも

柿本人麿」

●整理:

秋山の
黄葉を茂み
迷はせる

妹を求めむ
山道知らずも

●歌意:

 人麻呂の妻が死んだ時──。

 秋山の紅葉が深いために、その中に迷い入ってしまった妻。その妻の許に行こうとするが、私には道が分からない。

●感想:

 意味としてはそれほど響いて来ないが、繰り返し口ずさ

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「万葉集」私撰秀歌 歌巻2・163

「万葉集」私撰秀歌 歌巻2・163

「神風(かみかぜ)の伊勢の国にもあらましを何しか来(き)けむ君も有(あ)らなくに

大来皇女」

●整理:

(神風の)
伊勢の国にも
あらましを

何しか来けむ
君も有らなくに

●歌意:

 大津皇子(弟)が死に、大来(おおく)(大伯)皇女(姉)が伊勢の斎宮から京に来た時──。

 伊勢の国にいればよかった。君がいないのに、私は何をしに帰って来たのだろう。

●感想:

 弟が死んだことに対す

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