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漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー6  「担当から連絡がないんですよ」

担当編集者ってのは同じ漫画を作るチーム……なんだが

漫画専門学校の講師をやっていると学生越しに編集者の態度がしばしば伝わってくる。ボクも自分の仕事をするときは担当の編集者と折衝をするので、自分と重ねながら聞いている。あるとき学生の一人に持ち込みの状況を訊いたら
「担当から連絡がないんですよ」
と情けなさそうな顔をして言っていた。二ヶ月ないという。
「そりゃあもう、よそへ行った方がいいよ」
とアドバイスしたが、実際はなかなか思い切れないだろう。
「その雑誌で面白い漫画を描いていくんだ」
と、満を持してその編集部に行ったんだから他に行く気がしなくても当然だと思う。
担当編集者は漫画を作るチームのはずなのに何故こういうことになるのか。
今回はボクの感じる漫画の編集者の闇を、なるべくストレートに語ってみる。


編集者はハラスメント体質(になりやすい)

例えば週刊少年ジャンプへ持ち込みとか投稿する人の年齢は小学生くらいからいるという。実際専門学校で、19歳の時点で投稿して6年目という学生に出会ったこともある。編集者が35、6歳だったら自分の子どもを相手にしてるような年回りになる。漫画をろくに描いたことない子が目をキラキラさせながら「漫画家になりたいんです」なんてやってきたら、そりゃあ
「漫画を教えなきゃ」
なんて思うだろう。それ自体は否定すべきものではない。ここでちょっと編集者が漫画家とどう向かい合ってるか、その状況をざっくり箇条書きにしてみよう。

①自分(編集者)は編集部を代表して接している。ただし相手は自分の所属する編集部を目指して来たわけで、自分を目指してきたわけではない
②漫画家が仕事にありつけるかどうかは編集会議などでの自分の折衝にかかっている
③結果が出なければ、それは漫画家の力不足である
④原稿料などを払うのは会社で、自分の懐は痛まない
⑤漫画家はだいたい自分より年若く、社会人経験もほとんどない
⑥漫画家は自分のアドバイスを忠実に聞く。何度リテイクしても忠実に聞く
⑦二次商用における漫画家の窓口は自分が引き受ける

こういう感じである。会社によって差違はあるだろうがおおむねこんなものでしょう。んで、この状況をなるべく平たく見ると浮かんでくるのは
責任は回避しやすいし、権限は拡大しやすい
って事だ。妙な全能感を抱きやすいからそうなる。やっているからわかるが学校の先生もにたような感覚だ。そしてこれは
ハラスメントが起きやすい状況
なのである。ハラスメントとは虐待である。虐待とは穏やかではないが、上の⑥なんて虐待の一種になりかねない。

担当によるハラスメントだったらどうするか

改めて断るが、当然ながら
全ての担当がハラスメントをするわけではない。
ビジネスとして適切な距離感を維持できる人がほとんどである。だが、出来ない人も確実にいる。冒頭の学生の担当編集者は出来ない人に分類できる。
自分が「担当だから」と学生をキープして、出されたネームに対し何ヶ月も音沙汰ないという行動はハラスメントと言って良い。
こういう人と出会ったらどうするか?
一番良いのはさっさと見切りをつけて他へ行く
だと思う。これはあらゆるハラスメント関係でのボクの鉄則だ。確かにその雑誌なり編集部なりを目指してきたのにしっぽを巻いて退散するのはいやだろうし、辛いだろう。しかし運悪くそういう出会いになってしまったら、さっさと逃げ出すことが、結果エネルギーを空費することを避けることになる。上で「運悪く」と言ったが、こんなのは所詮運だからだ。運を嘆いていても仕方がない。悪い運があれば良い運もある。良い運を見つけに行った方がいい。

だから編集者にお願いしたいのは

自分がハラスメントを起こしやすい立場だと自覚して欲しい
ってことである。本当にこれにつきる。


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