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上手さについて考える

絵が上手くなるには


漫画の…主に絵の上手さについてのお話です。
漫画好き、プロの漫画家を10人集めて「絵の一番上手い漫画家さんを選んで」とやると、多分全員一致はありません。「これがナンバーワン」が10人選ばれることだって、当たり前のようにあるでしょう。
何故こうなるかって言うと「上手さにはいろいろある」からなんです。
人体の描写が上手い人もいる、動きの描写が上手い人もいる、線の綺麗な人、構図の上手い人……それらを「絵の上手い漫画家」としてまとめて話すのが普通なので意見が分かれるのです。

絵が上手くなろうという志望者は
「じゃあ絵の上手い人の模写をすればいい」
と思うわけで、編集者もそんなことを勧めたりもします。それはまぁクラシックな絵の上達法でかなり有用です。
注意するのは「この人、好きで上手い」と思った人に集中して模写していくことです。「腕の描き方はこの人で。目はこの人」みたいなやり方はよろしくない。これがよろしくない理由は稿を改めてお話しします。

じゃあプロになったらどうなのか?

ここまでは修業時代の話。
プロになったらこの話は違ってきます。

例えば絵の上手さの一つに「リアルに見せる」というのがあります。画像生成系AI…Midjourney, Stable Diffusionなどが「すごい」と言われる一つには写真のようにリアルな作画ができるからですね。
では、プロの漫画家が「トレーニングを重ねて写真のように描けるようになった」とその技術を駆使したらどうなるか。実は、作品の魅力はそれで上がったりしないのです。『ONE PIECE(ワンピース)』(尾田栄一郎)のキャラクターをリアルに描くと…という画像がネットに溢れているのでご覧になると良いです。
もし万が一『ONE PIECE(ワンピース)』があんな作画になったら、世界中が「?」「これは違う…」と思いますよね。

じゃあプロはどうするのか?

プロは
上手くなっても良いけど、上手くなったのを見せるかどうか慎重になった方が良い
のです。長い連載をしてる間に絵柄が自然に変わることは確かにあります。これはいいのです。読者も受け入れてくれる。
しかし上で書いたように「上手くなったら上手くなった分を全部出してしまおう」というのは、プロ…商業的描き手…としてはリスクが高すぎます。読者の人気が高ければ高いほど、今のその絵以外は求められないからです。

例えば松田聖子


松田聖子は世間的には演歌を歌ってみたりジャスに挑戦したりしていますが(そしてかなり上手い)、自分のコンサートでは相変わらず『青い珊瑚礁』(1980)歌っているそうです。誰でもない、コンサートに来てくれるお客さんがそれを求めているからです。そしてファンのために体型も服装もまるっきり少女のままを維持しています。桁はずれた努力とプロ根性です。(参照・松田聖子オフィシャルYOUTUBE

まぁここまですごい人は滅多にいないわけですが、技術を習得したらプロは取捨を慎重に選ぶものです。技術はものによって、使い手によってはゼロ以下の結果を招くことがあるからです。


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