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最強(たぶん)漫画で漫画術

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漫画の、特にコマ割関係に特化した技法について漫画を使って説明してます。 実践的ですよ(たぶん)。
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漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー9「何が言いたいのかわからない」

いや、オレはお前が何を言いたいのか、わからない 本当に良く聞かれる言葉 「何が言いたいか、わからない」 についてである。 初めてこれを聞いたときは 「そんなにボクの表現の仕方が悪いのか」 と自責の念に駆られたけど、今は 「ボクはアンタが何を言ってるかわからないよ」 と、他責の心持ちで聞いている。 なんでこんな偉そうに聞いてるかっていうと、ボクの中で編集者の機能ってのが 「問題を摘出する人」 というふうになってきてるから。問題を上手く摘出して、それに対し漫画が対策を講じ、さら

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー8「もっと絵を上手くした方が良いよ」

ふざけんなよ! そんな偉そうな事言うならお前描けよ! 描けるようになったら言えよ! と、言いたくなるけどそれでは橋下徹くらいの知性になってしまう。そして漫画家としての立場を自ら放り出すことになってしまう。 編集者は編集者だから言えることがあるんだ、と思ってこの言葉を拝受し、分析していく方がいいと思う。 じゃあ、上手いってなんだ? まず考えて欲しいのは編集者が言う「絵を上手くする」「上手い絵」ってのはなんだ?って事であろう。 例えば上はフランシス・ベーコンというイギリ

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー7「まぁいいか」

まぁいいか 編集者からリテイクを出される。直してみせる。編集者がボソッと言う。 「まぁいいか……」 おい……。本当にいいのか? そうなのか? これは漫画家が相当傷つく言葉だ。特に自分の作品を見せているときの漫画家はものすごく敏感だから、なおのことである。編集者が実際どういう意図で言ってるかどうかに関わらず、 「これ以上こいつに言っても何も出来ないだろう。  あとは本人が責任とれば良いんだから、無駄に時間使うのはやめよう」 と言う風にしか、聞こえないのだ。 いきなり打ち棄てら

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー6  「担当から連絡がないんですよ」

担当編集者ってのは同じ漫画を作るチーム……なんだが 漫画専門学校の講師をやっていると学生越しに編集者の態度がしばしば伝わってくる。ボクも自分の仕事をするときは担当の編集者と折衝をするので、自分と重ねながら聞いている。あるとき学生の一人に持ち込みの状況を訊いたら 「担当から連絡がないんですよ」 と情けなさそうな顔をして言っていた。二ヶ月ないという。 「そりゃあもう、よそへ行った方がいいよ」 とアドバイスしたが、実際はなかなか思い切れないだろう。 「その雑誌で面白い漫画を描いて

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー5「それじゃあ売れっこないよ」

子どもの頃の興味は 週刊少年マガジンで仕事してたとき とにかく始めた連載が終わっちゃって編集会議。当時のマガジンは(多分今も)担当編集チーム制だった。 「さぁ次はどうしようか、柳葉さん、子どもの時どういう事に興味があった?野球とかさなんかないの?」 少し考え込んだ。スポーツなんか全然興味なかった。漫画と絵画と……あ、一つ興味あることがあったな。 「歌舞伎を見に行きましたね」 「歌舞伎?」 「歌舞伎。当時まだ先代鴈治郎が生きてて、北条秀司も生きてて。新作歌舞伎なんかを一人で見

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー4 「そのキャラクターである意味がわからない」

どうしてこのキャラクターにしたの? この質問も編集者がよくする。 主に短編とか長編の出だしで聞かれる言葉である。 「他のキャラクターでも良かったんじゃない?」 とワンセットになってることもある。これを聞いてアナタ(もちろんボクも)は思うだろう。 どうしてって……なんとなく。 発想の根っこなんてそんなものである。それでも精神分析でするように深掘りを続けていくと 「実はボクの両親の特に父は毒親で、学校に行ったら『お前に学問は必要ない』と言うし休んだら『人としてダメだ』と言うし、

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー3

一年ぶりに書くので書き方を忘れました 操作の仕方そのものを忘れました。なので前と同じ体裁で書けるかどうかは不明。まぁとりあえず前回の話を続けてみます。 わからないコマ割り=情熱的なコマ割り? そういうわけで『チェンソーマン』を引用しながら、わかりにくいコマ割りの話をしたわけですが、正直言えば藤本さんのコマ割りはそんなにわかりにくくない。80年前の手塚先生と比べればわかりにくいけど、例えば1990年代から20年間の集英社系少女漫画と比べれば圧倒的にわかりやすい。 じゃあ

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー2

もっと情熱的なコマ割りを と編集者に言われた学生がいた。 「なんでしょう、これ」 と訊かれたが、知りませんがな。言った本人に訊いて下さいよ。 というのは、大人の正論だ。長く社会人をやってたら「傷つけられたら牙を剥け」ってどっかで心得てくるものだからだ。 しかし、二十歳くらいの学生が自分より年上の社会人に、むきだしの個人が会社人に質問できるかっていったら、それは難しい。 じゃあどうしましょう? 編集者が訳のわからない要求をしてくるのは前の項でも書いた。こう言う変な…とい

漫画編集者による意味のよくわからない言葉から漫画の本質に近づいてみようのコーナー1

漫画の編集者は電気毛布の夢を見るか こういうコーナータイトルをつけると 「あ、こいつは漫画の編集者を馬鹿にしようとしてるな?」 と思われそうだが……別にそういうわけではない。 漫画編集者は総じて勉強が足りない気がしているのは確か。漫画編集者ってのは大体がサラリーマンで、日本のサラリーマン全体は先進国一強しない勤め人だというのがOECDで報告されているそうだから、そんなに驚くことではない。編集者ってのは大変なのである。どう大変かっていうと……。 ★漫画ってのは奥深い。 漫画

連載漫画の作り方12 発表作と漫画家人生2

風まかせなら 「風まかせなら、じゃあどう生きれば良いのか?」っていうと、 ご立派な考え方はご立派な人たちに聞いて下さい。 ボクが言えるのは 「とにかく楽しくやっていこう」 って事です。そして 「できれば長くやっていこう」 とも言いたいです。 仕事ってのはそういうモノだと思っているからです。 ちょっと変わった例を すごく長くこのシリーズを書いてきましたが、最後に少し変わった例をお話しします。ある大手漫画編集者の例です。 そこの会社はやけに人事異動の多い会社です。もちろん、

岡田斗司夫から漫画の入門書を考える

岡田斗司夫という人がいる 岡田斗司夫はYOUTUBEなんかで動画をいっぱい流してる人だ。動画の内容はサブカルチャーの解説を中心に多岐にわたってる。 いろんな事を知ってるなあ、面白いなあと感心していたが、岡田斗司夫自身については、ボクはほとんど知らない。 ★初期ガイナックスにいた。けどアニメーターではない ★同時進行の不倫が騒動になった ★太っていたけど痩せたみたい。でもまた太ったみたい このくらいである。話しぶりが面白いなあと思って動画を見ていただけである。 それが突如「え

連載漫画の作り方12 発表作と漫画家人生1

作品の保存は常に、丁寧に 長いことやっていく間に浮き沈みは当然あります。思い返すのも嫌な作品もあります。それでも原稿の整理はいつもちゃんとしておくといいでしょう。 今ならデジタルの人が多いのでアナログよりずっと生理は楽ではないでしょうか。 ボクの『笑え、ゼッフィーロ』の原稿はデジタル保存していますが連載を開始した当初から ファイル名 西風001 原稿ファイル 西風入稿001-0102 というふうにナンバリングして保存していました。「連載一回目のファイルで、連載一回目の入稿原

連載漫画の作り方11 発表作と漫画家人生1

原稿料のこと 今は安い?高い? 漫画家のギャラは総じて原稿料と呼ばれています。払われ方はいろいろで一冊丸ごとでいくらってこともあるし、ページ単価でってこともあります。一冊丸ごとの場合は、例えば192ページでいくら…とページ数決まってることもあるし、200ページくらいで、のように大体ってこともあります。 ボクはいきなりWEB漫画を描くという経験がないので、そっち関連はよくわかりません。こっから話す内容は自分の経験と最近人から聞き込んだ話。 実は最近どっかの記事で「漫画の原稿

連載漫画の作り方10 体力と志3

漫画家の体力とは 大ベテランのH先生は今年デビュー55周年でいま連載してる漫画は35年目。近頃では、歩く歩幅も狭くスピードそのものが遅い。それでも月二回の連載を落とさず続けている。クオリティも落としていない。 「漫画家の体力」ってのは漫画を描く体力を言います。結構高齢になっても漫画描いてらっしゃる方がいるのは、この体力はかなり長いこと維持できると言うことなんでしょう。昨夏突如現れた生成系AIがもう少し高性能、使い勝手が良くなればもっと長く保つかも知れません。現状では個人のカ