【東京2020サッカー男子】準々決勝・日本vsニュージーランド~策なし、勇気なし、選手への信用なし…不安が的中した森保采配~

オリンピック準々決勝、日本はニュージーランド相手に決め手を欠き0-0でPK戦へ。谷のセーブもあり日本がなんとか準決勝に駒を進めた。試合前の記事で予想していた通りの消耗戦となったが、試合のカギを握ると見ていた森保監督の采配は消極的なもので不安が的中した形となった。詳しく振り返りたい。

チャンスを作るも重さが見られた前半

日本のフォーメーションは毎度お馴染みの4-2-3-1。フランス戦のスタメンから実質4人を入れ替えてきた。1トップは1戦目、2戦目とスタメンだった林大地、左SHに相馬。この2人はおそらく森保監督の中で序列が最も上なのだろう。右SBは出場停止の酒井に代えて橋岡。そして左SBはこれまでスタメンだった中山に代えて旗手を使ってきた。おそらくは連戦の疲れを考慮してなのだろうが、決勝トーナメントに入って休ませるのならフランス戦でローテーションすべきだっただろう。

一方のニュージーランドは3-5-2。中央のラインに人を多く配置してきた。昨日の記事でも述べたとおり、日本の攻撃を抑える有効な手段は大外は捨てても中央を固めること。当然ニュージーランドはスカウティング済みである。

ニュージーランドは2トップが日本の2CBに同数でプレッシャーをかけるため、吉田と冨安は余裕を持ってビルドアップができない。中盤はアンカーを置いた日本とは逆の三角形で噛み合わせているため遠藤、田中蒼はフリーで受けられない。日本は確率の低いロングボールを蹴るかサイドに逃げるしか手立てがなく思うように攻撃を組み立てられなかった。

一方3バックのニュージーランドは日本の前線に対して数的優位なので余裕を持ってビルドアップできた。幅を使いながら長短織り交ぜたパスで日本ゴール前に迫る。フィジカルに頼ったロングボール主体のチームかと思い込んでいたが、ショートパスも上手く使えるテクニカルなチームだったことに驚いた。

戦術的には分が悪かった日本だったが、久保&堂安が中央を固めた3バックの脇を狙いチャンスを作った。9分、自陣でボールを奪った日本は遠藤がうまく相手を剥がし中央を持ちあがる。林が中央でCBを引き付け、その脇で堂安が受けシュート。直後にはショートコーナーを右サイドで受けた久保がカットインしてクロスを上げると見せかけて縦の林へ。林の低いクロスに遠藤がゴール前で合わせるがゴールはクロスバーを越えた。前半最大の決定機だった。

また日本の中盤はニュージーランドのプレッシャーを回避するためポジションをずらして対応した。前半30分、2列目に上がっていた田中蒼が相手の間でパスを受け遠藤に落とす。遠藤から素早い縦パスが相馬へ通る。ワイドに張ることの多かった相馬は内へ絞ってフリーになっていた。ドリブルで斜めに切り込むと堂安がゴール前に走りSBを引き付ける。相馬は堂安の走りでフリーになった右サイドの久保へパス。久保はフェイントで縦へ抜けゴール前の堂安へ。見事な連携でチャンスを作った。

しかしそれ以外は拮抗した展開が続く。ニュージーランドもウッドを中心にチャンスを作ったがフィニッシュの部分では精度を欠き日本の守備陣を崩すには至らない。どちらも得点を奪うことなく前半を終える。10日間で4戦目だけに日本の動きにやや重さを感じた前半だった。

後半、ニュージーランドのシステム変更に対応しない日本

後半立ち上がり6分、ニュージーランドにアクシデントが襲う。3バックの一角、キャプテンのリードがケガにより交代。これによりニュージーランドは4バックにシステム変更した。ケガによる交代だったにも関わらず、この交代により日本の中盤は劣勢を強いられる。

ニュージーランドは2トップはそのままに、中盤をダイヤモンド型に配した4-4-2に。遠藤&田中は2人で3枚をケアしなければならない。徐々にニュージーランドがボールを保持する時間が長くなる。3バックから4バックになったことにより日本の前線からのプレスは効くようになったが、一度中盤に通されると数的優位のニュージーランドにパスをつながれ主導権を奪われる。ただ前半同様ニュージーランドはラストパスやクロスの精度を欠くため決定機には至らなかった。

後半15分過ぎには完全にニュージーランドペースになっていたが、森保監督は動かない。決定力のあるチームが相手なら先制されてもおかしくない時間だった。対応策としては3バックにするのも有りだと思うが、そんなオプションは試していない。久保か堂安を下げアンカーを置くのが得策だろう。

ようやく動いたのは後半24分。中山が準備していたのでアンカーに置くかと思いきや、相馬と交代。旗手を前に上げて左SBに入った。そして林に代えて上田。システムの劣勢に対応する交代ではなく、ただ人を代えただけだった。

ニュージーランドとしてはそのまま押し込みたかったところだが、さすがに疲れが出たかプレーが雑になりファールも多くなる。個の力で上回る日本がやや盛り返す。

後半34分、ニュージーランドが勝負の2枚替え。直後に日本は堂安の個人技から上田が決定機を迎えるが決めきれず。39分にはニュージーランドは4枚目のカードを切る。残り時間を考えれば当然の動きだ。

しかし日本は動かない。試合後森保監督は「90分で勝負を決めたかった」と言っていたが、ならばなぜ2人しか交代カードを切らないのだ。結局森保監督の「勝負を決めたかった」というのは、久保や堂安が個人技で打開してくれるのをただじっと待つということなのだ。

0-0で延長に突入。そこでようやくカードを切る。田中蒼→板倉、旗手→三笘。三笘にしてみたら後半のうちに入れて欲しかったはずだ。選手からすれば後半残り10分で投入されれば試合を決める「ジョーカー」という意味合いだが、延長に入ってからの交代は疲労による穴埋めという印象になる。ここぞというときに期待を込めて送り出せないのはベンチにいる選手を信頼していない証拠だ。三笘も、その後投入された三好も最後まで試合に入っていけなかった。選手の気持ちを考えれば仕方がない。

延長戦も個人技による突破にしか活路は見いだせなかった。結局のところ森保監督には戦術的オプションは皆無で、最初のシステムのまま疲れたら人を入れ替え後は選手任せ。テストマッチと変わらない表情でただ見守るだけ。

選手の中心にいない森保監督

試合は延長でも0-0のまま、PK戦での勝利。勝利は嬉しいし選手はよく戦ったと思う。しかし延長でもPK戦でも輪の中心で選手を鼓舞する森保監督の姿が見られなかったのはとても気になる。実際のところ選手はどう思っているのだろう。

準決勝は3日後。ドリームチームのスペインが相手だ。直前のテストマッチでは調整段階だったユーロベスト4メンバーたちがどんなパフォーマンスを見せるのか。疲労困憊の日本がどう立ち向かうのか。もはやただ見守るしかない。

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