【東京2020サッカー男子】日本VSフランス~完璧主義がもたらした完勝~

グループリーグ最終戦。フランスに4-0で快勝した。日本はほぼ完璧な試合で圧倒したが、招集に苦労したフランスの五輪代表は国のネームバリュー程に恐れる相手ではなかった。今の日本には勝って当然の相手で、そこまで完璧に叩きに行く必要があったのか?というのが正直な感想だ。

引き分けでもOKの試合でもベストメンバー

日本のスタメン。メキシコ戦から代えてきたのは3人。1戦目は三好、2戦目は相馬だった左のアタッカーに旗手。1トップは1戦目2戦目と精力的に動いていた林に代えて上田。そしてケガから復帰した冨安をCBに入れてきた。左SHとトップに関してはそもそも固定されていない印象が強いので実質的に現状のベストメンバーを組んできたと言っていい。

引き分けでも1位通過できる試合だったわけで、先を考えるともう少しローテーションしてもいい気がした。2CMFの遠藤と田中、両SB酒井と中山がイエローカード持ち。また暑さとハードな日程で長時間出場している選手には疲労の蓄積もあるだろう。決勝トーナメントに入れば否が応でも消耗戦になってくる事を考えると、調整できる最後のチャンスだったはずだ。

森保監督はテストマッチでは「総力戦」をアピールしていたが、結局のところ中心選手は固定して戦っている。メンバーを落として万が一グループリーグ敗退となったら…というリスクもあるが、それで負けるのならメダルには届かない。

これは週に1試合の国内リーグではない。短期決戦では先を見据えてあえてリスクを取るという考え方も必要だと思う。競泳では瀬戸大也選手が予選で余力を残して負けてしまったが、決勝進出が目標ではなく金メダルに照準を合わせた戦略としては理にかなっている。森保ジャパンも「ひとつでも上に上がる」ことが目標ならいいのだが、メダルを本気で目指すのなら例え負けたとしても思い切ったローテーションをすべきではなかったのか。

完璧だった前半40分。お粗末な残り5分。

フランスのシステムは4-1-4-1。アンカーを置いた中盤の構成で、日本の中盤ときっちり噛み合う形にしてきた。

フランスとしては中央を閉めて外からのクロスは許容しようという狙いだったと思う。これはこの先も対戦相手が取ってくるであろう戦略で、日本の攻撃陣は足元はうまくスピードもあるが、大外からのクロスに競り勝てるフィジカルは持ち合わせていない。久保や堂安が足元で受けて中央を崩すか、そこから外へ展開して深いところまで侵入してからの低いクロスやマイナスボールで点を狙う。フィジカルで勝るチームにとっては大外は捨ててでも中央を固めれば対応しやすい。

しかしながら前半の2点とも中央の縦パスから生まれている。サイドを起点に幅を使った日本のビルドアップで中央にスキが生まれた…とも言えるが、フランスの監督からすれば考えられない失点だろう。2試合で7失点しているだけあってフランスの守備陣は非常にクオリティーが低かった。

前半に2点リードした後、フランスの中盤サバニエが負傷退場。正直この時点で試合は決まったと言っていい。少なくとも前半のうちにフランスに流れを変える材料はなく、前半残り5分の日本のタスクは、「失点をしない」はもちろんのこと、「カードをもらわない」「けが人を出さない」の2つが重要。そのまま折り返せば後半からローテーションを実行できる。

しかし前半44分、酒井宏樹がイエローをもらう。これで累積2枚で次戦出場停止。それほど危ない場面ではなかっただけにもらわなくてよいカードだった。ベンチからの注意喚起はなかったのだろうか。監督によっては怒り狂ってもおかしくないプレーだったと思う。

後半、もはや可能性の感じないフランスを叩きのめす日本

酒井のイエローはあったものの、それ以外はパーフェクトで前半終了。ハーフタイムに大幅な選手交代があると思ったが代わったのは久保→三好のみ。メキシコ戦後半にバテていたにも関わらずフル出場を強いられた久保がようやくお役御免。55分にようやく酒井→橋岡。酒井がイエローをもらった時点でアップのペースを上げさせて後半スタートから入ると思っていた。次戦は準々決勝でスタメン濃厚。1分でも長い時間試合に入れるべきだ。そして遠藤、堂安、田中蒼を代えたのは3点目が入った70分以降。決勝トーナメントなら理解できるが、1点差で負けてもOKの試合でこの交代策は慎重すぎる。後半のフランスには全く可能性を感じなかった。それでもメンバーをできるかぎり落とさずに「完勝」を目指した森保監督だった。

ニュージーランド戦のカギは森保監督の勇気ある采配

おそらくニュージーランドは中盤を省略したフィジカルに頼った戦いをしてくるだろう。日本にとって決して得意な相手ではなく消耗も激しい。接戦になり日本の足が止まった時に思い切った交代カードを切れるのか。グループリーグの采配を見る限り非常に心配である。

ユーロの決勝トーナメントでは交代カードによって一気に流れが変わり試合が動くことが多かった。個のクオリティーで圧倒して逆転したフランスはわずか数分で追いつかれた。交代選手が躍動したスペインやイタリアは接戦の延長を勝ち切った。3人の交代枠では起こりえなかった展開が5人の交代枠では起こってしまう。それだけ監督の采配が重要だということだ。

できることなら日本らしくボールを保持して前半のうちに試合を決めたいところだ。ここまでのツケを払わされる結果にならないことを祈る。



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