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理科室まがった【ショートショート】

雨上がりの校舎。
理科室前に置かれた鉢から伸びた
朝顔が水滴を湛えている。
水滴に理科室がぐにゃりと曲がって映っていた。

「おい、本当にこれで大丈夫なのかよ」
「間違いないって。これで成功する」

彼らは夏休みの課題である自由研究に取り組んでいた。
2人で共同研究をしようとするまでは良かったが、
肝心要の内容がいつまでも決まらなかった。

朝顔の観察日記でお茶を濁そうとも思ったが、
生徒指導の理科教員が入道雲の如く
怒りを立ち上らせる様が脳裏をかすめ、
代案を考えざるをえなかったのだ。

そんな2人が思いついたのは光の屈折の実験だ。
1人が家族で水族館に行った土産話を
しているときにもう1人が閃いた。
空気も水も光が曲がらず進めばもっと
よく魚とかが見えんじゃね?

「ネットで調べたらいい薬品が見つかったんだよ」
「そのクスリ、やべぇやつじゃないの…?」
「クスリって言うな、人聞きまで悪くなるだろ」
「それまずいやつって言ってるようなもんだって」
「まぁ任せとけって」

フラスコに白い粉を入れる。
沸騰した水からたちまち白いモヤが溢れ
理科室を満たしていった。

理科室前の朝顔は水滴を湛えている。
その水滴には鏡のようにはっきりと、
理科室の中で慌てふためく2人の様子が
歪むことなく映し出されていた。




うーん、1週間考えたけど難しかった…
来週のお題はもっと頑張ろう。

3月も最終週。
やっと年度の締めができたと思ったら
もう新年度が始まる。せわしないねぇ。

心に余裕を。

今回も、読んでくださりありがとうございます。

ではまた。


たらはかにさんの企画に参加させていただいています。いつも素敵な企画をありがとうございます。


先週の作品も良かったら。

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