メディアの話。無料とフェイスブックとグーグルと広告売り上げ最高と詐欺広告と
私たちは無料が大好きである。
無料であるならば、サービス元が法を犯していても、わりとおかまいなしである。
iTunesが立ち上がり、iPodが売れ、スポティファイが普及する前に、ナップスターがアメリカの大学生の間に大ブームになった。
漫画アプリが多数立ち上がり、漫画=アプリとなる前に、漫画村に読者が殺到した。
どちらも違法である。著作権の侵害である。メディアの市場を盗んだわけである。
漫画村の盗んだ額は3200億円といわれるが、その漫画村が登場したのが2016年。
翌年の2017年は漫画市場が一番底を打ち、4330億円。
なんと漫画市場全体の80%近い規模の売り上げを漫画村は奪っていた計算になる。
その漫画村は2019年に告発、起訴、主宰者の逮捕となった。
その後、どうなったか。
2023年の漫画の国内市場は6937億円。
伸びたのは、漫画アプリ。そう、ウェブにおける漫画ビジネスである。
音楽も、漫画も、CDや紙のコミックからデジタルへ、という消費者のユーザー体験の大革命を促したのは、皮肉にも、「違法サービス」から、だった。
ここで、ポイントはしかし、新しいメディアビジネスは違法サービスからはじまる、とは言い切れない。結果としてそういう部分があったが、本質は「違法かどうか」のほうではない。「無料」というところにある。
ナップスターも漫画村も、基本的に「タダ」だった。
だから、消費者は自分でリスク=お金を払うことなく、新しいメディア体験をし、それが便利となるとさっさと移動したわけである。
「無料=タダ」ってのがポイントである。
今日のニュースでGoogleの1〜3月期の利益が過去最高と報じられていた。日経の記事によれば、
ーーーネット広告事業の売上高は前年同期比13%増の616億5900万ドルだった。そのうち動画共有サービスのユーチューブの広告は21%増の80億9000万ドルと特に好調だった。ネット通販を中心にグーグルの検索連動型広告や動画のブランド広告が増えた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN25EDI0V20C24A4000000/
メタ=フェイスブックも業績好調だ。
「広告収入の拡大にはネット通販が最も貢献した」。メタのスーザン・リー最高財務責任者(CFO)は24日に開いた決算説明会でこう説明した。売上高の大半を占めるネット広告事業の売上高は前年同期比27%増の356億ドルと好調だ。注目は中国発のEC「Temu(ティームー)」や「SHEIN(シーイン)」だ。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN24EHK0U4A420C2000000/
そう。Googleもフェイスブックも、業績好調の中心には「広告」がある。
フェイスブックの広告は最近有名人の広告詐欺問題がようやくマスメディアでクローズアップされるようになった。が、その広告ビジネスが未曾有の好景気なのだ。
サービスを無料にする。
消費者にとって唯一の広告の効能が、これ、である。
広告効果?
そんなものは、消費者の知ったことではない。勝手に企業が計算すればいい。結果として効果があるかもしれないが、消費者サイドから見たら、あくまで「結果」である。
が、その広告のおかげでサービスは無料になる。
違法ネットサービスである、ナップスターや漫画村は「無料」であるがゆえに、消費者が殺到した。違法かどうかを、消費者の大半は気にしなかった。
で、違法でなく、合法の無料化システムとして、ネットの広告は存在し続ける。その広告の内容のほうに「違法性」が生じるのは、無料サービスの「軽さ」と無縁ではない。
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