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メディアの話 トランプさんとレーガンさんとタフガイと南伸坊さんと冗談と

トランプさんの暗殺未遂報道。

シークレットサービスに抱えられ、耳から血を流しながら、拳を振り上げる姿を見て、すぐに思い出したのが、南伸坊さんのデビュー作『面白くっても大丈夫』(1981)に収められた「冗談がナウイ」というコラムであった。

本書は高2の私に最も影響を与えた本なのであるが、このコラムで描かれているのは、1981年3月31日にワシントンDCで講演の後、大統領選用車両に乗り込もうとするロナルドレーガン大統領を、ジョディフォスターファンのジョンヒンクリーが、ジョディフォスターに覚えてもらうため、というトンデモ目的で銃撃し、レーガンを暗殺しようとした事件のこと、である。


シンボーさんは、何を書いたか。

このときレーガンさんがかました冗談、である。

私より年上の方たちは覚えているかもしれない。

銃に撃たれた瞬間、レーガンさんは冗談を言いまくったのだ。

ーードナルド(原文ママ)レーガン米大統領が、こないだピストルで撃たれた折に「ダッキングするのを忘れたぜ」とジョークを飛ばして、株を上げたらしい。手術中にも医師団に対して「もちろん君達、共和党員なんだろうね」とクギを刺したりして受けたという。医師団の方も傷口を縫い合わせながら「とりあえず今日のところは」なんか答えながら、糸切り歯でプチンなんて糸を切っていたりしたらしい。アメリカ人は余裕があってなかなかよい。小生はハッキリ言って気に入った。

ーーこの後、シンボーさんはむっちゃ不謹慎な話を連発するのであるが、ぜひ本書を手に入れて堪能いただきたい。

というわけで、今回のトランプさんの銃撃された後の反射的な振る舞いは、あれ、むしろアメリカのメインストリームの男性文化かもしれない。

普段ら、徹底的に叩き込まれてなければ、絶対にできない。

銃の音を聞いただけで、膝ガクガクである。

ましてや掠めただけで、失神である。

が、アメリカのタフガイたちは、膝ガクガクも、失神もしない。

しちゃダメなのだ。タフガイだから。

生死の淵に立ったとき、毅然と振る舞い、ジョークをかます。

そんなクールが、アメリカでは求められる。

のかもしれない。

どこでどう叩き込まれるのか。誰か教えてください。

先日読んだ「フレンドシップ」日経BPには、アメリカ人のとりわけ男たちが、そんなタフでクールであり続けるカルチャーに実は疲弊している、という話が出てくる。



https://www.amazon.co.jp/dp/4296001744/

そんなことを思い出した。

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