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メディアの話。赤い月と皆既月食と天王星と写真と

 2022年11月8日。皆既月食だった。見た人も多いだろう。日本全国がものすごく晴れた。東京も晴れた。空気が乾いていて、水蒸気がない。おかげで街中でも星のまたたきが見えた。

自宅の前の道からちょうど上がってきたばかりの月が見える。三脚にカメラを乗せて、構えてみた。

いい月だ。

18時19分。左下から欠けてくる。


18時29分。
過半数が欠けた、19時5分。
地球の光を反射しているのだろう。影になったところが赤く鈍く輝き、残った部分が白くひかる。こちらの目とカメラの露出のせいもある。
19時11分。
19時19分。
ほぼ完全に地球の影に入る。全体が赤く鈍く輝く。頭のてっぺんがほんの少し白い。
19時29分。ほぼ均一な光に。完璧な皆既月食。


とはいうものの頭のてっぺんがほんの少し明るい。
19時46分。より均一な赤に。左下に天王星が迫ってくる。
皆既月食になると月の光が鈍るため、月の周りの星がはっきり見えるようになる。都心の明るい道ばたから、普通のカメラでここまで撮れる。いかにこの日の空気が澄んでいたか。

より天空に近い方に明るい星を見つける。木星だろうか。試しに撮ってみた。
なんと、ちゃんと撮れていた。今のカメラはすごい。。。

木星。
木星。衛星までは見えない。
 20時9分。まだまだ綺麗な皆既月食。左下の天王星がはっきりわかる。
20時10分。拡大してみるとわかるのが、たった2秒程度のシャッタースピードでも星が動いているのがはっきりとらえられること。けっこうなスピードなのだ、地球の自転は。天王星が軌跡を描く。
20時40分。天王星が月の影に入る瞬間。左下に見える。はじめてみた。そして最後の観察になる。たしか次にこの光景がみえるのは400年くらいあと。さすがに生きていない。


天王星。かくれました。


21時10分。皆既月食が終わる。


21時11分。暗い方に露出を合わせると、再び出てきた月は白飛びを。いかに明るいか。
21時13分。明るい方に露出を合わせるとこうなる。
皆既月食をここまでちゃんとみたのは始めてだ。

2時間ほどカメラを三脚につけて道っぱたに座ってた。

月も面白かったけど通りすがりの人が面白い。犬連れが多い。10組以上はいた。夜は犬の時間でもある。

近所の小学生や中学生や高校生も出入りする。

「わ、すげえ天王星映ってる!」

自動車で帰ってくる人も足を止める。

酔っ払いのオッチャンオバチャンも足を止める。

飛行機が幾つも月の脇を抜ける。

シャッタースピードたった2秒で星が線を描く。

星は確かに動いている。

全然飽きない。

家族が呆れて出てくる。

まだ見てるの?

見てる。

「夜ふかしの歌」という素敵なラップがある。

このラップに感化されたすてきな漫画があって、この曲をエンディングに持ってきたアニメもある。

夜、じっと定点観測。空と生き物としての人。

家の前でできる最高のアミューズメント。

夜ふかしとしての定点観測。そして。皆既月食はメディアである。みんながカメラを持っているいま。SNSにつながっているいま。

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