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不要不急の銀河。不要不急の無礼。

NHKのドラマ&ドキュメント「不要不急の銀河」 を見た。


5月。緊急事態宣言下。どうドラマをつくったらいいのか、どうしたらドラマが作れるのか。試行錯誤しながらドラマづくりを始めたスタッフ・出演者の様子を見せながら、コロナ禍で営業ができなくなったスナックを舞台にした物語を描く…という、意欲作。

画面の右上には日付が記され、スタッフのオンラインミーティングからドキュメント部分がはじまる。

「この時期、ドラマ撮っていいんですかね?」
「“本当にドラマが必要なのか?”と、問われたら答えられるのか」
「臆病な人たちをどうするか」
「フリーの人をどう守るのか」
「行くべきか、止まるべきか」

スタッフひとりひとりが感染源になるのではないか、と追い込まれている様子がよくわかる。仕事ではチャレンジングなことをしながら、緊急事態宣言解除後、我が子を学校に通わせることに心がついていかないひともいる。

会社の顔と家庭の顔。
攻めたい自分と臆病な自分。
大丈夫と思う自分と、大丈夫じゃないと思う自分。

番組では、医師に協力を求め、撮影現場のさまざまな仕事にアドバイスをもらう。

あるスタッフが言う。
「医療班に頼っていてはいけない。理想は自分たちで決めたガイドラインを自分たちでやる。考えて肚に落とさないといけない」。

あるスタッフが言う。
「法律はお前だと言われながら、ガイドラインを突きつけられている状態」。

それぞれの事情も、立場も、感情も、感覚も違う。違いがあるのはわかるけど、違いのすり合わせ方がわからなくて、ドラマの演出以前に、感染のことを考えて頭がいっぱいになってしまいそうな感じ。

とはいえ、そんなせっぱつまた状況で作ったとは思えない、というか、そんな切羽詰まった状況だからこそなのか、短い時間ながらも、時にくすっと笑え、胸に迫るドラマになっていた。ドキュメントとの合わせ技で見せてくれたことにも感謝だ。


不要不急ってなんなんだ


出演者のリリー・フランキー曰く。「コンビニがない町にもスナックがある」「不要不急ではないけど、生きるためにスナックが必要な人がいる」「あれは必要で、こっちは不要だろうって、無礼だ」と。


わたしは3月に県外に行った。音信不通になっていた我が子のもとへ、3月になったら会いに行こうと去年から決めていた。しかも夫は年明けから県外に単身赴任中で。どうにもこうにも、世間がのぞむ #stayhome からはみ出していく…(泣笑)。

4月には息子の突然の帰郷や引っ越しがあり、胃袋がひっくりかえりそうなほど悩み、最悪の事態を考え、家族で話し合い、私はどうすべきか、何ができるのかを突き詰めて考えた。

当時出した答えは、
・不安に飲み込まれない。
・目の前のできることを一所懸命やる。
・もしも感染したら、ふりかかるすべての出来事を引き受ける。

あの頃は、#stayhome という言葉を聞くたび苦しかった。

新規感染者が出ると耳にする「(こっちに)来るなよ〜」「県外に行くなよ〜」というなんてことはない世間話は、今もつらい。

誰かの視点では不要不急でも、違う視点から見れば、生きていくうえで本当に欠かせないことかもしれない。

そして「誰かの視点」と思っているものが、実は「自分が作り出した視点」だったりもするんだよね。


ドラマの中で効果的に使われたのが、
中島みゆきの「ファイト」。

(歌うのは、のん)


冷たい水の中を震えながらのぼってゆけ

怖くて震えるけど、未来への不安を振り払って進まなきゃいけない時が、人にはあるのだ。


取材を受けていたスナックのママさんが、「カラオケはすごいんです。知らない人の生身をいきなり見せられる感じ」と言っていた。


そうか、カラオケは全身全霊の解放なのか。

きっと多くの人が、自分で作り出した不安を分厚く着込んでしまったこの半年。脱ぎ捨てて、パーっと裸になりたいよねぇ。

広い広い公園で、カラオケ大会🎤をしたらいいんじゃないのかな。もう、いろいろ面倒くさいから、ひとりで大声で歌うだけでもいいや。



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