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慰謝料基準の謎

(Twitterはこちら → @yanagi_092)

入社2年目になり、交通事故のケガが重症となる事案も担当することになりました。今回は、損害保険会社のタブー的存在である「慰謝料基準」について、当時から思っていたことを書きたいと思います。


重症事案の担当

先輩「やなぎは2年目にもなったし、重症事案を担当してもらって、経験を積んでもらおうと思う。通称『JK事案だ』」

ぼく「女子高生?」

先輩「重症・高額の略だ!」

ぼく「なにそれ、だっさ~www」

東京海上ではダサすぎる略語が多数ありました。例えば、新人の教育係をSP(先輩SenPai)とか、副主任(FSN)、主任(SN)、課長代理(KD)、担当課長(TTK)とか、常務(JM)、専務(SM)、、、あとナレッジマネージャーをNMGとか言ってたな、Knowledgeじゃないのかよ。

そのなかでも「JK事案」はダサ過ぎたので、いつも「重症事案」って言ってましたが、会社が色々なところで「JK事案」って言うので、「そんなに女子高生を連呼するのは止めて~w」と思ってました.。

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話を戻します。重症の被害者に対して、私は誠心誠意で対応をしていました。示談前でも積極的に前払金をお支払いをするなど、全力で被害者の方の金銭的サポートをしていました。この辺りは、普段の苦情処理とは異なって、社会的使命を感じる仕事であったと思います。

このように、真剣に重症の被害者と向き合って、容態が安定すれば示談の話になります。しかし、ここで私は慰謝料基準の矛盾と対峙することになります。


損害保険会社の賠償に対する考え方

交通事故の示談において、原則的には裁判例に則って検討を行います。レンタカーの認定期間や、新車の場合の賠償、そして過失割合等は、過去の裁判例を参考に示談内容を決定します。このような背景から、損害サービス部門の人は不法行為に関連する法律や裁判例の勉強をする必要があるのです。

しかし、ケガに対する「慰謝料」については話が一転し、なぜか裁判基準を採用しません。独自の低額な慰謝料基準を使っていますので、現在の各保険会社が提示する慰謝料基準は以下のようになっています。

保険会社の慰謝料基準(少額) < 裁判での慰謝料基準(高額)


ぼく「重症の被害者の慰謝料を社内基準で計算したんだけど、裁判基準と比較するとトータルで数千万以上差が出るな・・・(汗」

結局、私が担当した事案は被害者に弁護士が付いて、「慰謝料を裁判基準にして、更に利息を付けてくれたら示談をするよ。ダメなら裁判で。」という話になり、保険会社の慰謝料基準から1千万円以上は跳ね上がった金額での示談となりました。

ここで、なぜ保険会社は慰謝料だけ裁判基準を採用しないのでしょうか。結局のところ、急に裁判基準を採用したら、保険会社の収支(損害率)がとんでもないことになるという「大人の事情」に過ぎないと思っており、東京海上の社内でも保険会社の慰謝料基準の合理性について、明確に答えているものはありませんでした。

普段の損害サービス業務では、過失割合等の苦情対応において「過去の裁判例では・・・」と切り返すのが一般的である一方、慰謝料の算定では裁判基準を用いないのが、どうしても納得ができませんでした(今も納得していない)

更に、被害者が全国にある「交通事故紛争処理センター(通称:紛セ)」に相談をすれば、無料で第三者の弁護士が仲介をしてくれますので、裁判基準の慰謝料を得ることができる仕組みもあります。

いずれにせよ、「弁護士に委任」or「紛争処理センターに相談」をした被害者だけ、裁判基準の慰謝料を得ることができて、何も知らない被害者は低額な慰謝料しか得ることができない仕組みに対して、金融庁さんはどのように考えているのでしょうかね。

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特別連休(5連休)

東京海上では、年に2回5連休を取得することができます。これは色々な口コミで書かれていますが、ほぼ間違いなく年に2回取得することができます。

多くの金融機関で同じような制度をとっているのですが、これは、担当者を長期不在にさせることで不正を防止する側面もあるのです。不正をしている人が5日連続で不在にすると、何かしらの問題が噴出するので、仕組みとしてはよくできているなぁと思います。

そして私の場合も、5連休中に対応が後手後手になっていた事案(不正ではありません)が紛糾してしまい、休み明けに先輩社員にすごく怒られたのですが、この経験を契機として「財務会計の勉強をしてみようか・・・」と考えるようになる出来事があったのでした。

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(続く)

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