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保険金詐欺との闘い

(Twitterはこちら → @yanagi_092)

4年目になりました。前回記事のとおり、公認会計士に向けた勉強を始めたのですが、熱中できるものがあると、仕事への不満もどうでも良くなるというか、不思議な感じで日々を送っていました。

自動車示談の世界では得ることのできない、コーポレート系の知識が面白かったのかもしれません。

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保険金詐欺(自動車盗難)

損害保険には様々な保険金詐欺が横行しています。損害サービス部門でよく話題になるのは、自動車盗難です。これは、暴力団等の反社会勢力が関与しているケースも多く、以下のような構造が見受けられます。

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このように主犯格は表に出ず、まるで「オレオレ詐欺」の「受け子」のような人が、言われるがままに保険金詐欺をするケースが見受けられます。私が経験したのも、この事例でした。

ぼく「この度の盗難は大変でございました。何時くらいに盗難に気付いたのですか?」
借金返せない人(契約者)「さ・・・、最近全然乗ってなかったのですが、気付いたら無くなってたので、けっ、警察に届け出をしました」
ぼく「(高級車の所有者と言っているけど、住んでるのは安アパートで、かつ車好きには思えない。何か変だ・・・)」

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保険金詐欺事案における立証責任の所在

この話は深堀りするとキリが無いのですが、要するに保険金詐欺として保険会社が支払謝絶をする場合は、保険会社側が「この事故は詐欺だ(故意だ)」ということを証明しないといけない構図(※)になっています。

(※)保険種目(傷害、火災、自動車)によって微妙に考え方は異なりますが、細かな話は省略します。なお、この後の異動先の「損サ企画」で、この辺りの法律論(立証責任論)を整理のうえで、不正請求に関する社内マニュアルを作成するのですが、それはここから約3年後の話


ここで、保険金詐欺事案において、保険会社側が「故意である」と立証することは極めて困難を伴います。なぜなら、契約者が「わざとやりました、故意です!」とは絶対に言いません。このような背景から、保険会社側は調査会社(探偵会社)を起用して、疑わしい間接事実を積み上げていきます。

①車を買ってすぐの盗難、②こんな高級車を変えるような資力は無い、③物理的に盗難が難しい駐車場形態、④高級車には最新の盗難防止装置が付いているので盗難は不可能、、、、等、故意であることの直接的な証拠ではないにせよ、関連する事実を積み上げるイメージです。

そして、どれだけ間接事実を積み上げたとしても、「故意だ」と言えるレベル(※)に至らなかった場合、保険会社は保険金支払いをしなければならないのです。

(※)仮に裁判になった場合を想定して、裁判官が「これは故意だね、保険会社の勝ち!」と言ってくれるレベル感で、法律用語で「故意免責に係る裁判所の心証形成」と言ったりします

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とはいえ、保険会社側の法律論の解釈も担当者によって相当なバラつきがあるのも事実で、「この事案は絶対にあやしい、俺が言うから間違いない。だから支払謝絶だ!」という職人気質(&脳ミソ筋肉)な担当者が一定程度存在します。

このような損サ職人の感性は鋭いものがあり、彼らが「詐欺だ!」という事案はほぼ間違いなく保険金詐欺です。とはいえ、法律的な立証論に照らして「故意だ」というレベルに至っているのか否かという検討が弱く、勢いのまま支払謝絶をしている人がそれなりに居るのも事実です。

ぼく「東京海上の損害サービス部門って、論理的に見えて意外とパッション系の人多いよな・・・」

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なお、私が担当した保険金詐欺事案については、バックに反社会的勢力が居たこともあって、訴訟に発展する可能性もありましたが、あやしい間接事実を積み上げ、弁護士にも相談のうえで、「これなら訴訟になっても、裁判所に『故意』として認定してもらえるレベル感だろう」という結論になり、支払謝絶としました。(訴訟にもなりませんでした)


損害サービス部門5年目・自由論文の検討

先輩「やなぎ、損害サービス部門は5年目に自由論文が課せられる。やなぎは来年5年目だろう?1年先のことだけど、今からじっくり考えておいた方がいいよ」
ぼく「分かりました、いつもありがとうございます!」
ぼく「(そうだな、そもそも大手の損害保険って料金が高いけど、ダイレクト系って代理店手数料が無い分だけ安いよな。そして、残念ながら大手損保は料金が高い分だけの良質な損害サービスができているとは思えないし、そういったことを書こうかな・・・)」

(続く)

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