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SEKAI NO OWARI『umbrella』の歌詞が好きって話

 音楽好きの皆さん、歌詞の考察とかしたことあります?

 まあ大抵の音楽好きの人なら、歌詞の一つや二つに心惹かれることありますよね。今日はそんな話です。


 今日考察したいのはSEKAI NO OWARIさんの『umbrella』です。

 最初にお詫びしなければいけません。この曲は去年のフジテレビのドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』として書き下ろされた曲なのですが、私は当該ドラマを一切見たことがありません。ドラマなどのために書き下ろされた曲は、そのドラマのためにあることは分かっているのですが…

 では、そんな私がなぜこの曲に惹かれたのか。それはある方が歌ってみてくれたからです。

 はい、自分の最推しのYuNiちゃんです。YuNiちゃんが8月にこれを歌ってから、この曲ずっと好きなんですよ!というかYuNiちゃんのエッジボイスが儚さ100%で好きすぎる…

 …今までの私のnoteを見てきた方なら分かると思うんですが、記事にどうしてもYuNiちゃんを入れたいだけです、すみません。YuNiちゃんをもっともっと布教したいんですよ…!

 気を取り直して、『umbrella』歌詞の考察と参りましょう!


そもそもJ-POP雨降らしすぎ問題

 突然ですが皆さん、今まで見てきた邦楽の曲で、雨が降っている曲といったらなにを思い浮かべますか?

 とりあえず私はバルーン『雨とペトラ』が思い浮かびますね。

 ご本家のflowerも味があるロックボイスで最高だけど、YuNiちゃんのイケメンボイスもかっこいいから聴いてくれ(何としてでもYuNiをねじ込みたい人間)

 「雨とペトラ」の歌詞はこうですね。

雨が降ったら きっと 頬を濡らしてしまう
枯れてしまった 色ですら 愛しくなるのに
目を瞑ったら もっと 遠く霞んでしまう
煩くなった雨の音 笑い飛ばしてくれ!

 この方は失恋したのでしょうか、それとも人生に疲れて投げ出したくなったのでしょうか。土砂降りの雨の中にただ一人います。「頬を濡らしてしまう」とあることから、恐らく傘なんて持ってないんでしょうね。まあもしかしたら涙で頬が濡れているのかもしれませんが。

 どんどん見ていきましょう。次は美波『カワキヲアメク』です。

迷で
応えられないなら ほっといてくれ
迷えるくらいなら 去っといてくれ
肝心なとこは筒抜けで 安心だけはさせられるような
甘いあめが降れば
傘もさしたくなるだろう?

 この曲もあめ(雨と飴のダブルミーニング)が降っていますし、なんなら傘も開こうとしています。だけれども最終的には…

もういい
ああしてこうして言ってたって
愛して どうして? 言われたって
遊びだけなら簡単で 真剣交渉支離滅裂で
思いもしない重い真実(うそ)は
タブーにしなくちゃな?
きっと
期待してたんだ出来レースでも
公式通りのフレーズも
踵上がる癖もう終わりにして
空気を読んだ空晴れないでよ

今日も、雨。
傘を閉じて 濡れて帰ろうよ

 いや傘閉じるんかい。傘をさしたいという気持ちはどこ行った。

 ところでKing Gnuが『傘』っていう名曲を作ってるんですよ。題名に思いっきり「傘」って入っているから、きっと傘をさしたままどこかへ行く歌詞なんだろうなぁ〜!!!

さよなら
ハイになったふりしたって
心模様は土砂降りだよ
傘も持たずにどこへ行くの?

あれこれ
不安になったって
どうしようもない
“運命でしょう?”
曇りガラス越しのあなたには
もう何も届いちゃいない

 いや初っ端から傘さしてないじゃないかよ。立派なタイトル詐欺じゃねーか!!

 …冗談は置いといて。歌詞の中に現れる「雨」って、大体は濡れるためにあるものなんですよね。それもずぶ濡れ。そうすることで、人の心が暗くなっている様を表していることが多いと思うんですよ。そして、「雨が上がる」と歌詞で書かれていた場合、その心も晴れて気持ちが上がることになると思います。

 そしてその場面に傘は不要なんですよね。傘をさしてたら濡れることの表現になりませんから。King Gnuの『傘』も、ミュージックビデオを見れば分かると思いますが、自分にとって大切な人が傘を持たずにどこかへ行ってしまうことで、その人が雨に濡れながら大変な思いをしているかも、って思わせる歌詞なんですよ。

 ちなみに我らがYuNiちゃんにも、雨が降っている歌詞が一つあります。『花は幻』です。

 「花は幻」のラスサビはこうなっています。

花は幻のように
雨に連れ去られてく
色褪せた花びらを撫でて
過ぎた季節に手を振る

花は幻のように
雨に連れ去られてく
見上げてた首の角度さえ
少しずつ忘れてゆく
花びらの道を
ひとり 踏みしめて

 前半では、降り続く雨によって花を枯らしています。そして後半では、雨によって足元に散らばった花びらを踏みしめて歩く、という構造になっています。めっちゃエモい(語彙力)。


『umbrella』は他の「雨が降る歌」とどう違うのか

 では今回ご紹介する『umbrella』も、誰かが雨に濡れている悲しい歌なんでしょうか?

 いいえ、違います。イントロのフレーズから見ていきましょう。

鏡に映る私は透明だった
分かってた事でも知らないままの方が良かった

 鏡に映る私が透明…?一体どういう事でしょうか?

 それは歌詞を見ていくとすぐに分かります。1番Aメロを見てみましょう。

私は君を濡らすこの忌々しい雨から
君を守る為のそれだけの傘
それは自分で決めたようで運命みたいなもの
何も望んではいけない 傷付くのが怖いから

 これをみると、この歌詞の中の「私」が誰か、一目瞭然ですね。

 この物語の主人公は「傘」です。しかも、「鏡に映る私は透明」なので、「ビニール傘」であると考えられます。

 傘が主人公の歌なんて、初めて見ました。私が最初YuNiちゃんのおかげでこの曲を認知した時、「傘が主人公なんて、すげえ」と思いましたね。常人の発想なら思いつかない。

 続きを見ていきましょう。歌詞では「私」=「傘」が、「雨」について「忌々しい」ものとして表現しています。記事前半で「雨」が歌詞の中で暗くてネガティブな役割を果たすと解説しましたが、「私」もそう考えていることが伺えますね。この曲は、全体を通して「雨」で「君」の気持ちが沈まないように、「私」が守ってあげる、という構造になっているのではないでしょうか。

 そして「私」の役割について、「君を守る為」だけの存在としています。「私」自身もネガティブな印象を抱きますが、実際「傘」の役割はそれまででしかありません。その役割は、人間によって「私」が製造され、販売された時から決まっていた「運命」でしかないのです。

 続いて「何も望んではいけない 傷付くのが怖いから」とありますが、恐らく「私」は「君」=「傘の持ち主」に対して一方的な恋愛感情を抱いているのでしょう。しかし、「君」に対して、これ以上交わることはできません。「私」は、「君を守るためのそれだけの傘」でしかないのですから…

もう一度あの日に戻れたとしても
繰り返してしまうでしょう 私はきっとそう

 再び「私」が「君」と交わることができる時は、雨の日のみ。その時はきっと、「君」に対して恋心を抱いてしまう。だけれども、「君」を傷つけてしまうかも…。メンヘラの片思いって感じがしますね…

この雨がこのままずっと降れば
願ってはいけない そんなことは分かってる だけど
君に降る雨が いつの日か上がって青空を望んだら
その時私はきっと

 何度も言いますが、「私」と「君」を繋ぎ止める唯一の方法は「雨」。そのため、雨が降り続けることを願っていますが、「君」としては「雨」よりも「青空」の方がいい事も「私」は知っています。「雨」は「忌々しい」ものですからね。

 しかし、きっと雨があがったら、「私」の恋もそれで終わりなのです。「忌々しい」ものから守るために生まれたヒーロー的な存在であるはずの傘なのに、雨が止んだら役割終了です。切ない。


天候に惑わされる「私」

 さて、1番を見てきましたが、「傘」がめちゃくちゃネガティブな恋心を曝け出す歌詞となっています。私たち人間にもそういう時ありますよね?あの人に告白したい、けど告白したら今までの関係を壊してしまうかも…。そういう、結ばれそうで結ばれない恋を描いた歌なのです。

 2番では天候にもっと注目しなければなりません。続きを見ていきましょう。

もっと自分の事をこんなに知らなければ
もう少し幸せな未来も望めたのかな

 「私」が「君」に対する恋心を知らなければ、ただ雨の日に「君を守る為」だけの「傘」であり続けたのに、と。悲しい。

あの雪の日 私を閉じ空を見上げた
泣いてるように見えた笑顔に私は触れられない

 ここで天候が「雨」から「雪」へと変わります。思えば、「傘」の役割は「雨」から身を守るためだけのものではありません。「雪」から身を守ってもいいはずです。しかし、この歌詞においては「傘」の役割を「君を濡らすこの忌々しい雨から/君を守る為」と限定しているため、「雪」が降り始めたら「傘」を「閉じ」て役割終了です。

 ちなみに先ほど「雨」がネガティブで暗いものを表すと言いましたが、「雪」はどういう様子を表すでしょうか?「雨」から「雪」へと天気が変わる山下達郎の名曲『クリスマス・イブ』を例に考えてみましょう。

雨は夜更け過ぎに
雪へと変わるだろう
Silent night, Holy night
きっと君は来ない
ひとりきりのクリスマス・イブ
Silent night, Holy night

 この曲における「雪」の役割って、「孤独」だと思うんですよね。雨と比べて雪は静かに降りますから、それがまた孤独の悲壮感を出していると思います。

 もちろん全ての曲において「雪」が「孤独」を表す役割を果たしているとは思いませんが、『umbrella』からもこの「孤独」感を感じるんですよね。それは「傘」の孤独でもあり、「君」の孤独でもある。二人を繋ぎとめていた要素が、「雪」の登場で消えてしまうのです。

哀しくて美しい思い出が
走馬灯のように 希望がちらついてしまう
この醜くて本当の気持ちが強くなる前に
きっと吐き気がするほど眩しい太陽

 それでも、雨の中二人で歩いたあの日を繰り返してしまう。しかし、止まない雨などなく、そのうち晴れて雲の隙間から「太陽」が覗くことでしょう。J-POPでは「止まない雨などない〜♫」などと陽気に歌われることも多いですが、「傘」にとっては「太陽」は「吐き気がするほど」嫌いな存在なんですよね…


曲の終わらせ方がエモすぎる(語彙力)

 物語は落ちサビへと続きます。

私の気持ちは自由だと誰かが言った
そんなことないわ 運命よりも変えられないの

 この部分一番好きなんですよねぇ〜!「私」が「君」に対して恋心を抱いたのは、工場で「傘」として製造され、売り場で「傘」として販売され、そして「君」の手に渡ったあの時からずっと「運命」として続いているってことなんですよ!普通の人間であれば、人生の中で数多の人とコミュニケーションできるので恋愛対象も星の数ほど考えられますが、「傘」にとっては「君」ただ一人としか触れ合うことはできないんですよ…

この雨がこのままずっと降れば
願ってはいけない そんなことは分かっていたはず
君に降る雨が いつの日か上がって青空を望んだら
その時私はきっと

 大サビはほとんど1番サビと同じです。しかし、「分かってる だけど」が「分かっていたはず」に変わっていることで、「傘」の諦めきれない気持ちが伝わってきませんか!?たった一言変えただけなのにエモさが倍増するのすげー、Fukaseさん天才ですね…

 ここで物語は一通り終わります。しかし、しかしですよ、この曲アウトロでもまだエモエモな続きがあるんですよ…

雨が静かに上がり傘立てに置かれた傘
忘れた事さえ忘れられてしまったような

 …皆さんには午前中雨が降っていたが午後になって晴れた日にコンビニなどに入店し傘を傘立てに置いて買い物を済ませて、満足して傘を傘立てに置いて帰ってしまった、そのような経験ありませんか!?僕はあります。

 そう、この曲は最後に人間のやりがちな行動を指摘して終わるんです。なんだか苦い味がしますね…。そして、これをされた「私」の気持ちを考えるとまた、切ないですよね……


おわりに 〜歌詞考察って楽しいね〜

 いかがだったでしょうか。SEKAI NO OWARI、『umbrella』で初めてちゃんと聴いたんですけどめっちゃいいっすね。何度も言いますが、「傘」の一人称目線から語るというのは初めて見ました。常人には真似できないような、斬新な発想です。

 ちなみに、YOASOBIの『ハルカ』も、原作小説である鈴木おさむの『月王子』やMVを見ると、「マグカップ」目線の物語であると分かります。こういった曲を聴くと、「物を大切にしよう」って思わされますよね。こういう曲好きかも。

 今回初めて「歌詞考察」なるものをしてみたんですけど、楽しいですねこれ。もちろん歌詞の解釈は自由なので、「ここはこういう解釈もできるんじゃね?」と思ったらぜひコメントしてください!

 それでは最後まで見てくださってありがとうございました!

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