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【舞台】高谷史郎|タンジェント 2024/02/11 ロームシアター京都

【パフォーマンス公演】 Tangent
ロームシアター京都にて、2024/02/11、19時の回鑑賞。

作品情報
総合ディレクション 高谷史郎
プロジェクトメンバー 濱哲史、古館健、白石晃一、細井美桜、南琢也
照明 吉本有輝子
舞台監督 大鹿展明
音楽 坂本龍一 アルバム「12」

 全体的に、天文学や天体の動き、惑星の表面を連想させる作品でした。
最後の方は、少し「星の王子さま」サン=デグジュペリ著のことも想起しました。

印象的だったシーンと感想を記します。

 舞台上部には、アーチ状のレールが端から端まで渡されていて、眩しく点灯するライトがレール上をゆっくりと何度も往復します。
床は白く、石ころがいくつか散らばっていて、白い砂利の集まりもあります。
舞台には、黒い金属性のフラットなテーブル、椅子、シンプルな形の脚立が一つずつおかれ、黒衣のパフォーマーが一人。
パフォーマーがほうきで床の砂利を掃いてあつめてテーブルにのせるシーンで作品は始まりました。

頭上を移動する白い光が、舞台上のものに影をつくり、日の出と日没のように影が伸びたり縮んだりしながら移動しています。
鉄パイプで作られたシンプルな形の脚立がつくるシルエットは三角形。
三角関数の tangent を思わせました。

 前半部分で、スクリーンに映された古い書物には、日食や月食の様子を描いた図、楕円に三角形が書かれた星の運行図のようなもの、アストロラーベを目の位置に持って天体観測をする男性が書かれ、文字は中世ヨーロッパのラテン語なのでしょうか? 天文学が盛んだったイスラム帝国のものなのでしょうか、わかりませが、とにかく古い時代のもののようです。

本のページがめくられていくと、ついには、テーブルの上にのっていた、鏡やガラスコップ、花瓶などが、一斉に天井へ引き上げられ、テーブルの天板が垂直になり、上にのっていた砂利が床にバラバラと散らばります。まるで突然、無重力状態になったようでした。

作品中盤では、高谷史郎氏が登場し、ハンダごてのような棒状のもので、長方形の大きな金属板を線や円を描くように、ひっかいたりこすったりします。激しく火花がちって、ギャアン、ガガガガ、ゴッ、という大きな音が響きます。
金属板に火花で描いた線の軌跡が後ろのスクリーンに同期に投影されて、次々に光が作る美しく不思議な模様が現れては消えていきます。

 私には、それがまるで創成期の地球の表面のように、大地に亀裂が走りマグマが噴き出す様子に見えました。
また、五行思想でいう、火と金(属)の相克関係も連想しました。
作品のクライマックスと言えるパートなのですが、なんと私はここで、眠たくなって数分ウトウトとしてしまいました。
 
ハッとして周りを見わたすと、何人か同じようにコックリコックリしている人がいました。
けして退屈して眠くなったわけではないのですが。
金属的な大きな音が不規則に出ていて、安らかな環境ではないのになぜか催眠効果が。
不思議です。

 後半、再び、女性のパフォーマーが登場し、天井から吊り下げられた4枚の黒い金属板を一枚ずつこすり、聞こえる音に耳を澄ましています。
 マグマが長い年月をかけて冷えて固まり、地中の鉱物になる。それが板状に成形されて今、ここにある。聞こえてくる音は、太古の昔に閉じ込められ、長い年月たったものなのでしょう。

作品後半のスクリーンに投影された映像。
映像の最初には、海あるいは大きな湖の波立つ水面や、山並みを背景にした海あるいは大河のような自然の風景。後半には誰もいないプールに張られた静止した水面が、繰り返しうつされて強調されているように見えました。
 街の映像もありましたが、どこか外国の、街並みを遠くから眺めるような画像で、人も映っていますが存在感は薄く、人々の生活は感じさせないような印象でした。

この映像のパートは、私にとって謎だなあと思いました。
また色々と考えてしまうかも。

そして、最後のほうで、パフォーマーが舞台に背をむける形で椅子にこしかけている場面では、「星の王子さま」の一節を思い出しました。

アメリカ合衆国で昼の十二時の時には、誰でも知っているようにフランスでは、日没です。ですから、一分間でフランスに行けさえしたら、日の入りが、ちゃーんと見られるわけです。でも、それには、あいにく、フランスがあんまり遠すぎます。あなたのちっぽけな星だったら、すわっているいすを、ほんのちょっと動かすだけで、みたいと思うたびごとに、夕やけの空がみられるわけです。
「ぼく、いつか日の入りを四十四度も見たっけ」
そして、すこしたって、あなたは、また、こうもいいましたね。
「だって・・・かなしいときって、入り日が好きになるものだろ・・・」
「一日に四十四度も入り日をながめるなんて、あんたは、ずいぶんかなしかったんだね?」 
しかし、王子さまはなんともいいませんでした。

「星の王子さま」サン=デグジュペリ作、内藤濯訳 岩波文庫、p44,11-p45

本作は、ロームシアター京都のレパートリー作品として制作されたということですので、また観られる機会があると思います。
楽しみにしています!

 ロームシアター京都のインスタグラムで、何枚か公演の写真がアップされていました。作品世界を思い出して浸りたい方におすすめです。

以上。


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