【演劇感想】ハイバイ「再生」
2023/7/9 山口情報芸術センターYCAM (山口県山口市) にて鑑賞。
使用された楽曲
One More Time / ダフト パンク
Walk This Way / エアロスミス
Speed / Atari Teenage Riot
希望と栄光の国 (行進曲威風堂々 第一番) / E.エルガー
My time / bo en
Laser / Banvox
終演後に行われた岩井バーにてお会いした方にシェアして頂きました。
ありがとうございました!
東京公演とは楽曲と動きが一部違っていたそうです。
感想
ダンサブルな音楽に合わせて、9人の出演者たちが全力で、無秩序に時に関係を見せながら動き、踊り、時に叫ぶ。セリフはない。
物語設定も、人間関係も無い。
各人の衣装とメイクは奇抜で珍奇。そしてバラバラで統一性がなく、舞台セットにもなんの脈絡もない。
観客が共感できるのは大音量のノリのいい音楽のみ。
出演者の全力のパフォーマンスを、何の意味も象徴も感じさせることなく、純粋なバカ騒ぎに演出できているのが凄いと思った。
そして、そのバカ騒ぎが全力で「再生」されるのである。
2回目の「ワンモアタイム〜♪」が始まってから、どこか違う所があるに違いないと考えて、目を皿のようにして一生懸命見たのだが、どうも全く同じことが繰り返されているようだった。
立ち位置や動作、振り付け、顔の表情・・・。
3回目が始まったとき、
これは再生されることそのものを観るものなのだ、と気づいた。
動画サイトやInstagramで、同じ映像を何度も繰り返し見てしまうことがあるが、それを連想した。
しかし、動画の繰り返しと確実に異なっているのは、出演者たちの身体の生理的変化と、舞台上で物の散らかって行くさまを目の当たりにすることである。
1回目と3回目のパフォーマンスは、同じようで違うのであった。
出演者の誰もが、疲れを見せずにエネルギッシュに動きまわり踊っているが、少しづつ息が上がり、全身から発汗し、衣装ははだけてメイクは落ちている。
床には、紙吹雪やリンゴのかけらが散乱し、並べられたペットボトルや積み重ねられた本は崩れている。
時間の流れは一方方向通行で不可逆なもの、ということを改めて感じた。
同じことの繰り返しの毎日でも、確実に時は過ぎている。
身体は成長していくか、老いていく。
そういう感想を持った。
YCAM スタジオB では、アート展示や音楽ライブも行われる。床はフラットで何もない四角い空間。催しに合わせて、舞台や座席が設営される。
今回は、舞台セットが床に作られ、床面の続きに一番前のクッション席があった。
椅子席は、二列目から階段状になっていて、段差が高かったので、前席のお客さんの陰になって見えないというストレスが無く、とてもよかった。
ステージと客席がかなり近く、出演者の顔をつたう汗までよく見えた。
岩井バー
終演後に、YCAM館内で開かれた「岩井バー」にて、岩井秀人さんや出演者の方々にお伺いしたお話しを一部紹介します。
このお芝居に台本はない。
叫ぶ場面は、本当に叫びたい気分になって声が出てしまっている。
音楽に合わせて、各人が自由に動いたり踊ったりして、それを岩井氏が、「その動きは後にして」「もっと前に出てきて」など指示を出して作っていく。 ( バレエやダンス作品に近い作られ方なのでしょうか。)
衣装は、衣装担当さんが、各人の好きな色や格好を聞いた上で用意してくれた。
劇中に出てきたリンゴは山口で買ったもの。ジューシーで美味しかったが、汁気が多すぎて食べるシーンでは苦しかった。
多田淳之介氏の原案では、バカ騒ぎが繰り返されるのは同じだが、いちおう物語の設定がある。ラストシーンが異なっている。
こちらから東京や三重公演とくらべて、どうでしたか?とお尋ねしたら、
舞台と客席が近かった、照明のせいもあるかもしれないが、お客さんの顔がよく見えていた。
また、(部屋の広さの割に)意外と人が(多く)入ると思った。
と言われていました。
岩井バーに現れた出演者の皆さんは、舞台で見た印象と違って、どなたも細くてシュッとしていました。エキセントリックな雰囲気もなく別人のように柔和な表情。
皆さん、舞台や映画、テレビドラマなど色々なところで活躍されているので、また別の作品でお会いできたら応援すると思いました。
次回のハイバイの作品を楽しみにしています。
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