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ありがとう、おかえりLINKIN PARK

読み間違いじゃなかった訃報

 Chester Benningtonの訃報を知ったのは、日本時間2017/7/21朝のこと。最初、私はそれを英語でTwitterに投稿された文面で知った。全く信じられなかった。私が英語できないから読み間違えたんだろ……と思ったけれど、どれだけ調べても事実は変わらなかった。
 日本語のメディアの投稿を見て、彼の死が確定した時の喪失感は忘れられない。

 当時の私は会社勤めだった。喪失感のまま出社し、職場の先輩に「リンキンのチェスターが死んじゃって……」としょんぼりした胸の内を語ったり、誰もいないコピー機の前で突然涙がこみ上げてさめざめと泣いたりして一日を過ごした。
 Chester Benningtonが死んでも世の中が当たり前のように進んで行くのが不思議でならなかったけれど、その”当たり前のように進む世の中”に救われた気もした。


私の中のLINKIN PARKの変遷

 訃報を知った2017年当時の私は、LINKIN PARKの熱心なリスナーだった訳ではない。私が夢中になってLINKIN PARKを聴いていたのは、アルバムで言うと"Hybrid Theory"(2000)と"Meteora"(2003)の頃。

 うわあ、ジャケット見るだけでもう泣けてくる……。

 収録曲を挙げると、例えば"Papercut""In the End""Faint"、そして"Numb"。好きな曲を言い出したらキリがないが、私が特に好きなのは"Numb"だ。この2枚のアルバムは名曲揃いだった。

 フェスで彼らのライブを見たのはもちろん、単独公演にも足を運んだ。思い出深いのは、2007年のさいたまスーパーアリーナで開催された来日公演。サポートアクトがYELLOWCARD(わかる)とDIR EN GREY(意外すぎる)で、生まれて初めてビジュアル系のライブを目の当たりにするきっかけにもなった。

 好きなアルバムが上記2作品であることからもお察し頂ける通り、私はLINKIN PARKなら激しめな楽曲が好きだ。なので、それ以降しばらく続く穏やかな楽曲が増えてからのLINKIN PARKはあまり聴かなかった。

 そう言えば、Chester Benningtonがボーカルを務めた別のバンド、Dead By Sunriseの来日公演にも足を運んだ。2010/1/27の東京 LIQUIDROOMだ。あの距離感で彼の音楽を聴けたのは、今考えてもかなり貴重だったように思う。

 久々にアルバムを好きだと思ったのは、5枚目の"Living Things"(2012)。やっぱりChester Benningtonにはシャウトして欲しいし、Mike Shinodaのラップもキレキレの方が好き。音は尖ってた方が好き。私が好きなLINKIN PARKが聴けるのは嬉しかった。

多分"Hybrid Theory"は友達が貸してくれて聴いた。"Meteora"は好きすぎてしょっちゅう聴いていたのか、箱がべこべこになっている。"Minutes to Midnight"は買ったけど、ちょっと自分の好みに合わないな……としょんぼりしたアルバムだった(もちろん、好きな曲もある)。"Living Things"は試聴してよさげだと思って入手したんだろう

 Chester Benningtonが天に召されたのは、そんな私がLINKIN PARKと程よい距離感を保っていた時期のことだった。まだ終わっていないはずの音が急に途切れて、時間が止まった気がした。

 それ以来、LINKIN PARKを聴くと涙が出たり目頭が熱くなるようになった。彼らの音楽に接するのが怖くなった。Chester Benningtonが居たあの頃のLINKIN PARKの音楽を、聴きたいと思えなくなった。


まさかのうさぎ映画で再会

 なーんて思ってたら、2018年公開のうさぎ任侠映画『ピーターラビット』に、Mike Shinodaがキレッキレのラップ楽曲"Remember the Name"を提供していた。

元々、監督とMike Shinodaそれぞれの子どもが同じ学校に通っていたという縁はあったらしい。Chester Benningtonが亡くなった後、監督がLinkin Parkのトリビュート・コンサートでMike Shinodaに会ったのがきっかけで実現したコラボだったとか。

 いや、なんでまたうさぎ。しかもバチバチにかっこいいし。

 私は映画『ピーターラビット』が大好きだ。マクレガーさん役のDomhnall Gleesonのファンで、彼の体当たりなコメディを見るのが大好きだからだ。更に私は、主人公ピーターを演じたJames Cordenのファンでもある。
 そしてこの映画のいいところは演者だけじゃなく、使われている楽曲。音楽ファンにはぜひ音楽も楽しんで欲しい映画だ。(例えば、主題歌の"I Promise You"はVampire WeekendのEzra Koenig製作。)

 この映画でMike Shinodaの楽曲に再会出来たのは意外だったけど、Chester Benningtonを亡くしたばかりの辛い時期に、Mike Shinodaが音楽を手放さずに居てくれたことが嬉しかった。映画館でキレッキレのラップが聴けたのは、私にとって本当に救いだった。


ありがとう、おかえりLINKIN PARK

 そして時は流れて2024年9月。巷がOasis復活に湧く最中、LINKIN PARKは謎のカウントダウンを延長し、何かを発表しようとしていた。
 その結果が、2024/9/6(日本時間)に配信されたこのライブ。

 日本在住の私はリアタイ出来なくて、最初にTwitter(今ではもうXだ)でLINKIN PARKについて発信した海外メディアの投稿で見て何が起きたのかを知った。
 LINKIN PARKが活動を再開した。
 新体制になって、アルバムもリリースする!!!

 私が新しい彼らの姿を初めて目に・耳にしたのは、公式が投稿したこちらの映像だった。(先述のYoutubeで配信されたライブの切り抜き。)

 大好きな"Numb"を、新しいメンバーで演奏するLINKIN PARK。ボーカルはEmily Armstrong、ドラムはColin Britton。

 泣いた。なんかもう泣いた。
 ありがとう、ほんとにありがとう。
 そう思えて、嬉しくて嬉しくて私は泣いた。

 私はずっと、LINKIN PARKの楽曲を聴くのが怖かった。ずっとChester Benningtonのボーカルを聴くのが怖くて、あの日からずっと時間が止まったような気がしていた。でも、Emily Armstrongが歌う"Numb"を聴いた瞬間に私の時間が動き出した。

 彼女は決してChester Benningtonではない。声真似をしているわけでもない。それなのに、彼女の声は驚くほどにLINKIN PARKの音楽にぴったり重なっている。こんな奇跡が起きるなんて。

 そして新曲“The Emptiness Machine”も公開された。MVは、それぞれバンド以外のことをしていたLINKIN PARKメンバーが、Emily Armstrongの歌声に引き寄せられ戻って来る様を描いた内容になっている。

 もう、だばだば泣いた。かつて私が好きだったLINKIN PARKの音が帰って来た。きっとEmily Armstrongの歌声が、LINKIN PARK彼ら自身の時間も動かしたんだ。そう思った。

 そして、新しいLINKIN PARKの楽曲を聴きながら、私はひしひしと熱く痛いくらいに感じた。
 彼らがどれだけChester Benningtonを大切に思っているのか、唯一無二の存在だと思っているのか。そして、彼の死を含めた過去のすべてを受け入れて、新しい体制で前に進もうと決めたLINKIN PARKの決意を。

 LINKIN PARKは強いバンドだ。彼らが音楽を手放すはずがない。
 ありがとう、おかえりLINKIN PARK。
 私はこれまでのLINKIN PARKが大好きだ。そして、”今の”、”これからの”LINKIN PARKの音が聴きたい。早く、たくさん聴きたい。私の人生には、LINKIN PARKの音が必要だ。

 2017年にコピー機の前で泣いていた私に教えてあげたい。
 2024年9月、やっぱりお前はLINKIN PARK関連で泣くことになるよ。でもそれは最高の嬉し涙だから、大丈夫だよと。

※アルバム”FROM ZERO”は2024/11/15発売! やったー!



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