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丸の内丸善にあるCaféで一期一会

丸の内にある丸善の中に「Cafe 1869」というカフェがある。

以前短期の仕事で、近くのビルで働いていた頃よく通ったお店だ。

心身共にストレスフルで、お昼休みは逃げるように外へ。少しでもその職場にいることを避けたかった。

「Cafe 1869」は書店の奥にあり、窓にむかって座れる席がある。そこから電車が通るのが見える。窓に向かってのカウンター席といえばわかりやすいだろうか。背中側には本棚が並ぶので、独りで過ごすのにはちょうど良い空間だ。

私はホットサンドか、シフォンケーキを注文することが多かった。

ある時、窓の外を見ていると、高架下に並ぶ店の中で1軒、行列ができている店があった。何のお店だろう?と思っても確かめに行く時間はない。

たまたま隣に座ったお客さんに、

「あそこは何のお店なんですかね?」

と訊いてみた。

我ながら意外な行動だった。

普段は人見知りで、こんな風に知らない人に声をかけることはほとんどない。

相手に嫌な顔されたらどうしよう?とか不安だった。

相手の様子(雰囲気など)をちらっと伺ってから勇気を出して話しかけてみた。

すると、その方は嫌な顔もせず、私も高架下のお店のことは知らないとのこと。この質問をきっかけに、その後も食事の間少しお話させていただいた。

彼女は、丸善には仕事で来ていて、専門書を扱う出版社の方だった。

私は元々大学や研究機関で働いていて、今は短期でこの近くのビルで全く別のお仕事をやっていると話すと、彼女の息子も大学で働いているとのこと。そこから話が続いて、お互い詳しいことは話さなかったけれど、たわいもない話をした。

彼女は謙遜していたけれど、その働き方は私からすると理想的で、身なりも言葉も嫌味がなく、知性を感じさせる品の良さがあって、素敵な方だった。

会社も名前もお互い知らないまま、私ももうすぐその時の仕事は終了するので、それまでにまたお会いできるといいな、くらいの感じで別れた。

お話しできてうれしかったこと。楽しかったこと。お礼を言うと、
こちらこそと、返してくださった。

独りで辛かった中、ほんのひととき、誰かと話すことができたのは本当に嬉しかった。

一期一会。

その後お会いする機会はなかったけれど、思いきって話しかけてよかったと思っている。

辛かった日々の中、良い思い出になったできごとだった。

この2年、外食も友人と会うこともままならない日々が続いている。
だれかといっしょに食事をしながらお話できるということが、とてもありがたいことだと、感じられるようになった。

この時の思い出も今思い出し、とても懐かしく思う。

また友人知人たちと食事を囲んで、わきあいあいとおしゃべりできるような日々が早くもどりますように。と願っている。


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見出しの写真は犬のしっぽヤモリの手が撮影しました。

<© 2021 犬のしっぽヤモリの手 この記事は著作権によって守られています>





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