やみなかみ

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薔薇館殺人未事件

「以上、あなたが犯人です」 探偵が謎を解き終え、高らかに宣言する。 第一の殺人の密室トリック。第二の殺人のアリバイトリック。第三の殺人の入れ替えトリック。全ての謎が、探偵によって暴かれた。 にもかかわらず、犯人の顔には失意や怒りは見られない。むしろ、困惑の色が濃くにじんでいるだろう。鏡がないので断定は出来ないが、自分の表情くらい自分でもわかる。 だが戸惑うのも無理はないと言わせて欲しい。 第一に、今この場にいるのは、僕と探偵少女だけである。普通謎解きなら全員集めてか

    • エルフの女騎士がオークに捕まって屈辱を味わう話

      こうなることはわかっていた。 爵位だけが取り柄の無能上司をブン殴った結果、単騎でオーク軍中枢に放り込まれたら、すぐに捕まることくらいは。 「さて、お前ら!好きなように楽しむがいい、ブヒヒッ!」 オーク軍の司令官が去り、牢に残されたのは拘束された私と若いオーク数名。 女捕虜が辿る道も、当然わかっている。慰み者だ。 醜いオークに汚されるくらいなら、潔く―― と、私が決断するよりも先に、盛大なため息が聞こえた。 「なあ、どうする? 本当にヤんないとダメか?」 「当たり前だろ

      • 欲望金貨は世を巡る

        中3の冬。私は、自殺することにした。 両親の死、親族からの虐待、学校でのイジメ。 何より、誰からも助けて貰えない孤独に耐えられなくなったからだ。 これ以上、誰かに踏みつけられるくらいなら――捨ててしまおう。私の、ちっぽけな命なんて。 ぼろぼろになったセーラー服が、夜のビル風に煽られる。 傷と痣だらけの身体と、ずたぼろになった心にも冷たい風が吹く。 「……おかあさん、おとうさん。ごめんね」 私の手に唯一残された、両親の形見のコインを握りしめて―― 廃ビルの屋上から、飛び降りた

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