欲望金貨は世を巡る

中3の冬。私は、自殺することにした。
両親の死、親族からの虐待、学校でのイジメ。
何より、誰からも助けて貰えない孤独に耐えられなくなったからだ。
これ以上、誰かに踏みつけられるくらいなら――捨ててしまおう。私の、ちっぽけな命なんて。

ぼろぼろになったセーラー服が、夜のビル風に煽られる。
傷と痣だらけの身体と、ずたぼろになった心にも冷たい風が吹く。
「……おかあさん、おとうさん。ごめんね」
私の手に唯一残された、両親の形見のコインを握りしめて――
廃ビルの屋上から、飛び降りた。

『あーあー、勿体無えなァ!』

不意に、誰かの声がした。どこか皮肉さを含んだ、若い男性の声が。

『捨てるくらいならその身体!命!俺に、よこせェェェッ!!』

歓喜と欲望に満ちた絶叫の声の主を探している間に、地面が迫り――
地面に激突した私の身体は、無数の金貨となって飛び散った。

【つづく】

#逆噴射小説大賞 #逆噴射プラクティス


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