薔薇館殺人未事件

「以上、あなたが犯人です」

探偵が謎を解き終え、高らかに宣言する。

第一の殺人の密室トリック。第二の殺人のアリバイトリック。第三の殺人の入れ替えトリック。全ての謎が、探偵によって暴かれた。

にもかかわらず、犯人の顔には失意や怒りは見られない。むしろ、困惑の色が濃くにじんでいるだろう。鏡がないので断定は出来ないが、自分の表情くらい自分でもわかる。

だが戸惑うのも無理はないと言わせて欲しい。

第一に、今この場にいるのは、僕と探偵少女だけである。普通謎解きなら全員集めてからじゃないのか?

第二に、この屋敷に来てまだ二時間も経っていない。つまり、まだ僕はこの殺人劇を始めてすらいないのだ。

にも関わらず、彼女はこれから僕が行うはずだった殺人と、その際に用いるトリックの全貌を、顔を合わせるなり解き明かしてしまったのだ。


「……お嬢ちゃん。探偵ごっこもいいけど、人を選んだ方がいいよ」


目の前の探偵――黒いトレンチコートにフリルを無理矢理くっつけた、どう見ても世界に一着しかなさそうな癖の強いファッションセンスを誇る童女に向けて、僕は曖昧に笑うしかなかった。


「ええ。ですから、犯人のあなただけに言っているのです」

そう言うと、探偵少女は――全ての黒幕、かの有名な大学教授もかくやと言わんばかりの悪意に満ちた微笑を浮かべた。


「殺人は容認できませんが、復讐なら手伝うのです」


【To Be Continued】

#逆噴射小説大賞2020

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?