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闇鍋Project 作者人狼短編集

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闇鍋プロジェクトの作者人狼に寄せられた作品を、開催回の区別なくまとめた短編集です。
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記事一覧

冷たいほうじ茶

 茹だるような暑さに汗を拭いながら顔を上げれば、陽炎が信号機の赤を歪めている。  しかし…

祖父の家

広大な畑にポツンとたつ家 私は久々に祖母の家に来ている。 こんな早朝でも、農家の祖母なら起…

人の夢と書いて「儚い」という字となる

 世界は「儚い」に満ちている。  例えば、道路脇に咲いた一輪のタンポポ。排ガスにまみれて…

ルール

「お前、赤信号渡ったらしいな。地元じゃ有名人だぜ。」 前からうざかった地元の奴がいつにも…

ラーメン屋の話

ラーメン屋に行くのが趣味である。自宅の周りにある有名どころは大体2年ほどかけて回り切り、…

____とおぼえ

               おれは柵を飛び越えた。そこまでは勢いよくできるものだ。そし…

てんし-

ねえ、そこで何をしているの?                                                      まあ何をしようとしているかくらい分かっているんだけどね。                                                                                                                                           でも君の足

二度寝

 窓から差した光の一筋が、飲み残しの水を入れたグラスの中で跳ね回って、テーブルの上に陣を…

前略 15歳の俺へ

前略 15歳の俺へ マジな話、その道を選ぶのは辞めておけ。 信じるかどうかは知らんが、俺は…

修繕

優しいけれど、どこか不思議な感じのする彼女が好きだった。 「この子、タロちゃんっていうの…

瓦礫の中で

 瓦礫から顔を出して周囲を伺う。気色悪いゾンビどもの気配はない。ぼくは倒れた冷蔵庫に近寄…

シャボン玉

数年前の事件で何十人者死傷者を出して以来、シャボン玉を作ることは法律で禁じられている。ど…

ギャルゲーは簡単

 美少女と恋愛することをシミュレーションするゲームが存在する。  虚構と戯れ、虚構に告白…

大陸への船

 船着き場から出た船は大陸南部にある町、サルヴァの港に向かって問題なく航路を進んでいるらしい。  らしい、というのも、今まで島を出たことなどない私は、大きく波打つ波を見て、正直なところ今に沈まないものかと怖気づいてしまっていた。  そんな、度胸なんて持ち合わせていない私が故郷を出るのには事情がある。  私についてより、まずは島について話そう。  島の中では資本経済はなく、基本は村を一単位とした自給自足と助け合いで生活をしている。  時折、漁の収穫の一部を大陸の港に卸して、必