コゲコゲトースト(短編小説)

コゲコゲトースト


「好きって言ったら怒る?」
幼馴染に突然問いかけられた。最初は脳みそがショートして何を言っとるんか理解が出来んかった。俺は朝ご飯用の食パンをトースターで焼いている最中で、せや、朝の寝起きやから余計に頭が働かない。いや、むしろ今の言葉は何かの聞き間違いかもしれへん、俺寝起きやし。
「ごめん、なんて?」
「好きって言ったら怒る?って聞いたんや」
「……誰を?」
「アンタをよ」
聞き間違いやなかったらしい。待ってくれ。俺は今までずっと、この幼馴染のことが好きやった、異性として。でも、コイツは学生時代は普通に彼氏が出来とったし、俺はあくまで幼馴染なんやろなって諦めて、他に女を作ったりもしたけど、やっぱりコイツやないと無理ってなって、女に何度もビンタされた。
何が起きとんのや?あかん、理解が追いつかへんわ。俺はまだ夢を見とんのやろか?
「…なんでそんなこと聞くん?」
幼馴染は顔を下に向けて、申し訳なさそうに答えた。
「………好き、になってん…いや、好きなのを今更気づいてん。ほんまにさ、ずっと一緒におってさ、お互いカレカノ作っといてさ………」
顔を上げたかと思うと、顔を赤くして泣きながら続きを答えた。
「ほんまに、今更やんか………気持ち伝えたら関係が変わるかもしれんし、幼馴染相手が好きとか気持ち悪いとか思われるかもしれんとかさ、考えたけどさ、」
「待て待て、一旦落ち着きや。ほれ、深呼吸」
感情が昂って過呼吸になりそうになった幼馴染の背中を擦った。
「は、っ…ほんま、そういうとこやで…ずっと、待ってくれるやん…そういうとこ……心地よくて……」
ポロポロと涙を零す幼馴染を見て、更に愛しさを感じた。
「アンタの隣に、ずっといるのが私じゃないって想像すると、とても悲しくて」
「…遅いわ、アホ」
「…え?」
ここで俺は幼馴染を強く抱き締めた。
「俺はずっと前からお前のこと好きやってん。でも、お前には彼氏がおることが多かったし、それやったら他の女って考えたけど無理やったわ。お前やないとあかんかったわ、俺」
「……ホンマに?からかっとるわけやないよね?」
「アホ、からかっとるだけなら抱き締めてへんわ」
「……っ、よかった、よかった」
安心感と嬉しさからか、俺の胸で更に泣き出す幼馴染。頭を撫でてあやしてると、ふと思い出した。
「あ、トースト」
「…あ」
朝ご飯用に焼いてた食パンは焦げていた。
「あちゃー、話に夢中で忘れとったわ。お前も焦げててええな?」
「私が話したのが原因やもんな、ちゃんと食べるよ」
2人で笑いながら食卓につく。焦げたトーストは、苦いのにやたら美味しかった。

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