映像表現を軽やかにやってのける~鎌倉市立玉縄中の実践例~
玉縄中学校の1年生(5クラス189人)は、1年かけてSDGsの知識を身に付けるとともに、自分で立てた問いの解決策をグループで考える課題解決型学習を行っています。
その成果発表の一つの手段として、映像表現を活用できるようになるための2コマのワークショップを開催しました。
「秋も一段と深まり」「小春日和の今日この頃」といった時候の挨拶を、言語表現(言葉や文字)から非言語表現(動画や画像、サウンドなど)に変換する方法を学び、撮影~編集を実践。映像表現は、他人の共感を呼び、アクションにつながっていくことを体感しました。
流れを追って解説します。
1.オリエンテーション(10分)
各教室へZoomでの中継です。
簡単に私の自己紹介。お仕事の紹介などをごくごく短縮版で(笑)
ここからインプットになります。
まずは、ウミガメの鼻からストローが出てくる有名な映像を使って、言語表現と非言語表現で伝わるメッセージにどんな違いがあるのかを考えました。
そして、映像表現は、言語表現と非言語表現が掛け合わさってできていることをポイントとしました。
次に、以下のような「雨」の映像表現を使って、①②時制を感じさせること、③④効果音や音楽が表現の効果性を高められることを伝えました。
①雨が降っている⇒現在進行形
②雨があがった⇒過去完了
③効果音をつける⇒「昨夜の雨が上がったなあ」という詠嘆
④音楽をつける⇒「昨夜はすごい雨だったなあ」という深い詠嘆
2.テーマの提示とグループ協議(20分)
ここからいよいよワークになります。
今日の学習課題は……
次の時候の挨拶を一つ選び、映像で表現しよう!
~「移ろい・変化を描く」がポイント~
A ゆく秋の寂しさ身にしみるころ
B 秋気いよいよ深く
C 秋も一段と深まり
D 小春日和の今日この頃
E 朝夕 一際 冷え込むころ
F 冷気日ごとに加わり
G 追々寒さ向かいますが
・4人グループ
・映像は、30秒を目安に、iMovieで作成する
・画像は3枚以上、動画2カット以上を使用し、合計5~10カットの作品とする。
・画像は、インターネットおよび事前に用意した画像集を利用してよい。
・画像、動画を撮影する際は、敷地内とする。必ず横画面で撮る。
・音楽は、iMovie内のものから1曲を選ぶ。
・言語表現(具体的な言葉や文字)は使わない。人がセリフで説明するカットも使用しない。
・最後にテロップで、グループで選んだ「時候の挨拶」を文字で入れる
3.素材集め(25分)
画像:画像集を使う、ネットから拾う、iPadを使って今撮る
動画:iPadを使って今撮る
音楽:iMovie内のものから1曲を選ぶ
実は、静止画によるスライドショーになってしまうことを心配していたんですが、そんなことはなく、生徒はいろいろと工夫をして動画を撮影していました。
枯れ葉を降らしてみたり、落ち葉越しに日の光を撮ってみたり、デジタルネイティブ世代は軽やかにそういうことをやってのけるんです!
4.編集(30分)
4人での編集作業は手持ち無沙汰になりそうなので、2人ずつに分けました。
「移ろい・変化を描く」がポイントと提示したのもあり、ストーリーを考えようとしていたところがとてもよかったです。
今回はiMovieを使用しましたが、ふだんから編集アプリを使っているので、そこで戸惑うことはなく、内容を思考することに注力ができていたと思います。
恐るべし、デジタルネイティブ! 編集も軽やかにやってのけます。
5.シェアタイム~まとめ(15分)
編集はキリがなくなるので、時間が来たら作業途中であっても完了として、クラス毎にミニ上映会を行いました。
それぞれの教室を回りましたが、とても盛り上がっていたように見受けられました。
参考までに完成作品を2つご覧ください。
生徒の感想
授業する前は、文字と映像を使わないと自分の想いを表現できないと思っていたが、 この授業を通して映像だけでも自分の想いを伝えることができるということを知ることができた。
授業の中で、映像に音楽や効果音を入れると、山﨑監督の言う通り、本当に印象が変わっていって面白かったです。音の重要さがとてもよく分かりました。
前は一人で作業した方が円滑に進んで良いと思っていましたが、この授業を通して、他の人と作業すると、自分にはない考えなどが出て、自分だけでは到底作れないユニークな作品ができることかわかった。
山﨑監督に撮った動画を褒めてもらったことがいちばん印象に残っています。 風が吹き、イチョウが揺れる所のシーンなのですが、風が吹くまで少し待ってこだわって撮った所だったので嬉しかったです。
まとめ
今回のワークショップでは、先生がたと私が考えていた目標に生徒は十分に到達できたと感じています。
担当の先生と何度も打ち合わせをしたこと、サンプル映像の作成や画像集めなどの準備をしっかりしたこと、国語科の先生と連携して「時候の挨拶」について事前学習をしたことなどが奏功したといえます。
おまけですが、私の呼称を「山﨑監督」としてもらったことも、生徒の期待感の高まりや雰囲気の盛り上げにつながったと思います(笑)
デジタルネイティブ世代は、撮影や編集のテクニックはかなり備わっています。
ただ、生徒たちはふだん見慣れたYouTube動画の模倣に走り、それが格好いいものだと思ってしまい、先生もそれでよしとしてしまう雰囲気も散見されます。
私はそれには警鐘を鳴らします。
YouTubeの模倣は娯楽の延長上であって、深い学びにはつながりにくいと思うのです。
今回のワークショップのように、きちんとファシリテートして、映像表現を体系的に学ぶことができれば、伝える力を磨くことになり、将来にわたって使えるスキルになるものと考えます。
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