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映画の基本をちょっとだけ~横浜市立緑園西小の実践例~

これまで、動画づくり・映像制作を授業に取り入れるに当たって、映画(フィクション)はあまりオススメしていませんでした。
※ここでの映画の定義は、DVDで観るような劇映画だけでなく、テレビ放送やネット配信されるようなドラマ、ショートムービーを含めます。

理由は簡単で、映画を作るのは難しいからです。
映画芸術と言われるぐらいですから、専門性の高い理論と技術、そしてセンスが必要です。
また、生徒同士が出演し合う内輪ウケであって、文化祭であれば価値はあると思いますが、授業での取組となると、今ひとつ学びに広がりがないように感じていました。

そんな中、拙著を読んでいただいた小学6年生の先生から、こんなご相談をいただきました。

「SDGsを伝える総合学習の発表をドラマ仕立ての映像で行いたい」

難しいとは思いましたが、よくよくお話を聞くと、いわゆる寸劇を映像表現にしたいとのことだと気づきました。
それならと思い、先生と一緒に以下のような2コマのワークショップを考えました。

映画制作の基本である「シナリオのカット割り」をもとに、プロによる撮影や編集の実践を見せる。
カット割りで視点の変化を考えることで、伝える力を向上させる。
さらに、児童たち自身が書いた寸劇の台本を使って、カット割り・撮影・編集に挑戦し、映像制作を体感しながら学ぶ。

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実際は、こんな授業でした。
前半を順を追って説明します。

インプット:映像表現だからできること

ウミガメの鼻にストローが刺さった映像がいかに人の心を動かしたかを説明。

例題:実演を見てカット割りを理解する

こんなシナリオを用意しました。

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私が監督、先生がカメラマン、児童2人が出演です。

1.1シーン1カットで撮影

まずは途中で止めることなく1シーン1カットで撮影をします。
実際は児童が演じています(しかも熱演!)が、セキュリティの関係上、アニメーションをご覧ください。

2.カットを割って撮影

カットを割ったシナリオを配布します。

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最初に配ったシナリオとの違いに気づかせます。
今度はカットを割って撮影して、先生が急いで編集します。

3.2つの映像の比較

1シーン1カットで撮ったものと、1シーン6カットで撮ったものを見て、その違いに気づかせます。
「カットを割った方が映像らしくなる」と児童は頭の中ではイメージできていますが、この実演によりその理屈を理解します。

具体的には……
・複数のカットから一つのシーンができていること
・カメラの位置が変わることで、視点が変化すること
・フレームサイズが変わることで、印象に強弱がつくこと

後半の時間は、類題として、児童によるシナリオを自分たちでカット割りして、撮影、編集をしました。

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授業を終えて

確かに映画作品を作るのは難しいですが、このように体系立てた説明とファシリテートがあれば、映画的な表現の可能性もアリだな、というのが今回の実感です。

このクラスでは今後、シナリオの指導や、編集の進捗チェックなどをする予定です。
次なる展開をお楽しみに!

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