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何がリアリズムか、戦争回避のための専守防衛・平和戦略を 20221201

weekly newsletter 058/20221201

防衛費の倍増方針

 岸田政権は、防衛3文書(国家安全保障戦略・防衛計画の大綱・中期防衛計画)の改定を進めており、併せて防衛費の増額の方針を打ち出しました。

 防衛に資する研究開発費などを加えた安全保障関連経費について、2027年度時点で国内総生産(GDP)の2%とするように防衛大臣・財務大臣に指示を出したとのこと。現在、GDP1%の枠内に収められていた防衛予算は、これまでの倍額の11兆円規模となります。GDP2%にすることは、米国と中国に次ぐ世界第3位の規模の武力を備えることを意味します。

 23年〜27年度の防衛費の規模と財源については与党と協議の上、年内に決定するとのこと、防衛費確保のための増税議論も必至の情勢です。

抑止力で日本を守れるか

 ウクライナ戦争、北朝鮮のミサイル発射、台湾海峡をめぐる緊張の高まりなど、日本国民の間に戦争への不安が広がっています。そうした状況を受けて、政府は日米同盟による抑止力の強化、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を含む防衛力の大幅な増強を目指しています。抑止力強化一辺倒の政策で本当に戦争を防ぎ、国民を守ることができるのか、大きな疑問です。

戦争を回避することが目標

 防衛政策の目標は、何よりもまず、戦禍から国民を守ることであり、そのために戦争勃発を回避すること、戦争をしないための努力を尽くすことが求められます。どんな形であれ戦争が始まれば国民の命と暮らしは壊されてしまいます。
 戦争回避については、相手国が日本の政策や行動に呼応することを想定する必要があります。抑止力を名目にした防衛力の強化は相手国にとっては脅威となり、武力の拡大につながり軍拡競争となります。抑止の名目で進められたとしても、武力の増強からは緊張関係が生まれ、戦争勃発のリスクを高めることになります。

なにがリアリズムか

 防衛力の増強、抑止力の論理をリアリズムだとする主張が聞かれますが、本当でしょうか。
 抑止を機能させるには、相手国に対して決定的な打撃を与える力を保持し、それを行使するという意思を示す必要があります。行き過ぎた抑止は日本の安全を守るよりも日本の安全を脅かすものになります。

平和主義の意義

 日本は戦後これまで平和主義を国是として専守防衛を貫いてきました。「日本は戦争をしない国」であるとの世界の認識が日本に対する信頼を生み、日本の平和につながってきました。世界の緊張が高まっているいまこそ、日本は他国に対して決して戦争はしないこと、武力による攻撃を受けた場合の万一の備えとしての「防衛力」を強化するとの意思を明確に打ち出すべきです。
 平和外交の推進、健全な相互依存関係・相互理解の醸成、安保理を含めた国連改革を進めることが喫緊の課題です。戦争回避のためにやるべきこと、できることは数々あります。日本そして世界の平和構築につながる政治の実現を目指します。

原子力発電所が武力攻撃の目標になるということ

 経済産業委員会にて、原子力発電所に対する武力攻撃の問題を取り上げました。原子力規制委員長も認めるように、原子力発電所はミサイル攻撃など武力攻撃には無防備。また日本のミサイル防衛も全てのミサイルを迎撃できるものではない。ひとたびミサイルが着弾すれば、東電福島第一原発事故を超える過酷事故は避けられません。
原発の存在自体が国家安全保障上の大きなリスクです。他国からの武力攻撃の危機を訴えながら原発回帰の方針をとる岸田政権の政策は致命的な矛盾をはらむ、ご都合主義といわざるを得ません。

東京新聞 2022年4月9日 Webより


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