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実際に使える防災知識とは 2

さて、前回からの続きです。
このシリーズでは具体的に実際に使える防災知識とはなんぞや?という、説明はしません(笑)

読み進めていく内に「なるほど~!こりゃ、覚えておきたい」と思える物が見え隠れする文章が書けたらと思っています。
なぜなら、その人の持つ知識や、住む地域によって必要な情報が変わってくるからです。読む方に、必要な情報を拾って貰おう形式です。

もっと言うと、このシリーズは災害別には書きません。
長くなりますし、情報がばらばらになり頭に入りにくくなるからです。
その代わり、シチュエーション 別で対処方を書く形にしていきます。
そうした方が、記憶に収納されやすいと思うからです。

では、今回はまず防災の基礎と言われる「身の回りの危険」と「避難経路」「避難場所」の確認について書いていきたいと思います。

まず、質問です!皆さんは自宅や職場の場所をハザードマップで
確認したことがありますか?

自治体で詳しいマップを作成しているところがありますが、探すのが面倒だと思いますので。確認したことが無い方は、国土地理院のハザードマップポータルサイトを開いて見てください。
別途に自治体のハザードマップが有る場合は、国土地理院の方からリンクが提示されますので、そちらで確認するのが良いでしょう。

私の高校時代の恩師が、戦時中に大地震を経験している人でした。
軍事工場に学徒動員で働いており、静岡にあった三菱の工場でミサイルを作っていたそうです。

その時に、ミサイルが倒れて多くの学友を失ったというので防災にも力を入れている方でした。授業を中断して、なぜか大きな地図を広げて生徒1人1人の自宅にシールを貼らせて自宅周辺の災害リスクを説明するという・・・。
私学だから出来た、オリジナル授業を受けました。

1人1人、裏に山があるとか。
ここは、昔沼だったから液状化の心配がある。
海が近いから、津波を想定して避難を考える必要がある。

等々、細かく指示してくれたのです。
最後に「君達が大人になって、家を出て家庭を持ったとき。この知識は役立つ、必ず役立ててくれ。これ以上、大事な人を知識が無い事で失うのは避けたい。そんな気持ちからの授業です。以上!!」そういった恩師の目が少し潤んでいました。

それ以来、私はいつでも彼の伝えた情報を元に転勤が決まると、転勤前に周囲の災害リスクを調べ。引越直後に、周囲を歩いて確認するようにしています。そして、近所に知り合いが出来たら、過去の災害について聞いて見る。

これが、私の転勤ルーティーンになっています。
この時、神社も必ず確認します。理由は、気が向いたら書いてみます(笑)

この時の授業の様子を書いてみます。

まずは、黒板に貼られた大きな白地図には恩師みずから被災の可能性がある場所が色付けされた状態で掲げられていました。

参照資料として、リアルに自治体が出しているハザードマップをだしてみました。
ついでに、説明し易いように文字入れをしてみました。

地図は、私の地元地域ですので、土地勘があるのでこちらを例に挙げて話を進めていきます。

例えば、下のハザードマップを見てください。実際に、自治体が出している物です。

下側が海、海岸線に色が塗ってありますがここが自治体が予測している津波浸水予測地域です。塗られている色が濃いほど、浸水する深さが深いと読みます。
※水の深さ<深い←紫-赤-黄→浅い>※

パッと見で川が2本あり、左側が浜川、右側が大谷川になります。
どちらも、津波が遡上して流域が浸水していることが分かります。

特に、左の浜川は小さな川ですが。

海から真っ直ぐでは無い上に、曲がっています。
そのせいで、水の押し寄せる方向に向かって水があふれ。
特に、川が大きく曲がっている所で、浸水地域を広げています。
基本、川が曲がる所では遡上した津波の勢いは抑えられず進行方向に向かって水があふれ出して一体が広く浸水するのはセオリー通りです。

逆に、曲がりくねっていない川の場合。
遡上(そじょう)の勢いがある下流地域だけの浸水で済むのが右側の大谷川で確認出来ると思います。

こんな感じで、読んでいきます。
ハザードマップを確認出来ない出先でも、このセオリーは同じなので。
イザという時に、こういうパターンを頭に入れておくと非常に有効な事があります。覚えておいて下さい。

静岡市ハザードマップ

そして、過去の浸水地域についてですが。
近年、住宅地の造成や、道路整備に伴い。
昔ながらの凸凹した土地が整地され平らにされている場所が多くなっています。上の地図をご覧ください。濃い紫の★マークが並んでいるのがお分かりになりますでしょうか?
探してみてくださいね。

ここは、昔からなぜか一部だけ盛り上がった地形になっており。
この地域は「150号線から北に逃げれば津波は大丈夫」と言われてきました。この★の部分が旧150号線になります。

昔は、土地が尾根の様に盛り上がっていました。私が幼い頃は、学校に通う時にこの盛り上がりを越えるのが大変なほどの坂道でした。今は、ほぼ原型を残さないほどに削られ平らになっています。自治体は、過去の災害からの経験則でハザードマップを作ります。

しかしながら、今現在。
過去の被災例を元に避難マップを作ることは実は意外と危険だったりするのです。では、上の地図を再度見てください。

この地図では過去に、少しでも浸水したという記録が有る場所を水色の点線で表示しています。

今後の浸水予測と、過去の大地震での少しでも水が入ったという地域は大きく違う事が分かります。

まあ、基本的に津波が川を遡上したことによる浸水のように思いますが…。

それに対して、自治体が避難を呼びかける地域がオレンジの点線で示されています。私の予測では、自治体も過去に浸水した事実が無ければ、強く言えない部分があるのでしょう。

しかし、今の地形では、過去津波が来なかった地域でも波を被る危険性があると予測しているのは明らかだと思うのです。

ちなみに、個人的には右の川の近くに赤字で×を打っていますが。
この辺りまで逃げたら良いんじゃね?って思うのですが。

この地域に住む方に聞いた所、津波避難訓練が年に2回ほど有り。
「東名高速道路の高架を越えて、高架より北側まで歩く訓練」をするそうです。さあ、東名高速道路の高架はどこかというと、赤い●印が並んでいるおところです。

事実を照らし合わせると、自治体としては最悪、東名高速道路の高架近くまで津波は来るであろう。そんな予測をしているのが、とても良く分かりました。

いかがでしたでしょうか、いかに過去の災害からの情報が現在では生かしにくいか。分かると思うのです。これから、自宅を買われる時も十分考慮に入れる事をお勧めしたいと思うのです。

ここで、もっと重要なことを書いてみます。
津波がどこまで来るか、どのくらいの高さなのか。
それより重要なのが、こちら。
「津波到達時刻」です。

静岡市駿河区津波到達時刻マップ

皆さん、10分あったら逃げられるから大丈夫とか思いますよね。
ただ、上の但し書きを見てください。
「地震発生から」と書かれています。
そうなんです!揺れている時間も含めて、揺れ始めから津波が来るまでの時間がカウントされるのです。
一般的には、揺れ終わってから何分で津波が来るかを書いて有ると勘違いしますが。ここ重要!!テストに出ますよ!!的ノリで。

揺れ始めから何分で、津波がくるのかと考えてこれを見てください。
大きい地震は「長いね、いつまで揺れるんだろう」って言ってしまうほど長く揺れます。

これを読んでいらっしゃる方で、東日本大震災を被災されている方はお分かりの通り。
プレート型の大地震は、揺れている時間がとても長いです。

過去の3連動型の南海トラフ地震は、10分近く揺れていたこともあったそうです。絶望的な話ですが、揺れが収まる前に津波も来る地域があるということになるのです。

下手をすると、避難所に逃げようと自宅から出たところを津波に襲われる可能性もあります。ですから、必要な情報は自分で作るのです。

津波到達まで、我が家は何分かかるか。
到達時間から、揺れている時間を差っ引きます。
残された避難に使える時間が算出できます。

そして、近くの避難所指定された場所が津波で壊れそうにない鉄筋コンクリート造の建物であるのか。家より海に近い場所に無いか確認しましょう。

その後、1度で良いので避難所まで自分の足で歩いてみてください。
避難経路に倒れてきそうなブロック塀が無いかとか。危険な部分が有ったら、迂回出来そうな道は有るのかも事前に確認しておくと良いと思います。ここで、もう一つ大事なこと。

被災直後は、道路にヒビが入ったり、陥没したり。
ブロック塀が倒れたり、場合によっては家が崩壊して道を塞ぐ事も有ります。そんな状態で、いつもと同じペースで歩く事は出来ないということも加味して考えます。

避難に掛かる時間を、色々な障害物を乗り越えて避難するという前提で計算しておくことも大事になります。

こんなイメージでも良いのかも・・・手持ちの写真

そして、避難をするとき必ずブレーカーを落としてから家をでること!
これお約束です。
絶対に忘れないで下さいね。

玄関のに、避難用としては軍手と運動靴ヘルメットを入れた袋を準備するのも良いかも知れませんね。

実際に、パンプスや、革靴では歩きにくいですし。障害物を乗り越える時に、手をつくと怪我をする可能性があるので軍手あると楽です。

大前提が、速やかに避難ですから。被災後に、色々持って出ようとして手間取って津波にさらわれないようにして下さいね。

最後に、津波避難「笑い話で済んだ危険な話」を書いて今回は締めたいと思います。2004年 紀伊半島南東沖地震の際のお話です。

我が家は、自宅窓から海を見下ろすという高台に住んでいました。
海辺の幹線道路から、自宅まで登りきるのに一休みしたいくらいの傾斜がある高台です。

ですから、本震の後に防災無線が津波避難を呼びかけても無視。
消防車が回って来てましたが、なぜこの高台にまで避難を呼びかけて回っているのか皆目(かいもく)見当がつきませんでした。

この地域の避難所は、高台を降りた海辺に有る公民館でした。
正直、古くて低層の公民館より。
高台にあって、新しい鉄筋コンクリートの我が家の方が安心なのは誰が考えても分かる筈・・・でした。

しかし、直ぐにマンションエントランス付近が賑やかになりました。
我が家、当時は1階エントランス横の部屋でしたので。
窓から顔を出すと、幾つかの家族が防災用のリュックを背負い出ていく所でした。そして、私にこう言うのです
「津波警報が出てるから、早く避難した方が良いですよ」
顔色は真っ青、早足で坂を下っていきました。

深夜24時近く、真っ暗な海に向かって子供の手を引いて坂を下っていく夫婦が何組か。単なる大馬鹿者にしか私には見えませんでした。

遠目で見ると、他の一軒家の人達もぞろぞろと出て来て坂を下っていくのが見えて、呆然としたのを思い出しました。

皆さんだったら、どう思われますか。
わざわざ、低い場所にある避難所に向かう高台の住人。

結局、津波は1m以下で・・・。
港に停泊中の船が被害を受けた程度で済みましたが。

これが10メートル近い津波が来たら、どうなったでしょうか。
想像するだけで、恐ろしいです。

と言うわけで、ただ自治体の言うなりに指定された避難所に避難すれば良いと言う訳では無いことは一目瞭然だと思います。

皆さんも、事前に色々と調べておくことで焦ってあり得ない行動を取ってしまう事が無い様にして下さいね。

次回は、家庭内の危険箇所について書いてみたいと思います。

最悪の状況は、当然…自宅が倒壊して閉じ込められてしまうことですが。
それ以外でも、ドアの前に物が倒れてきて部屋に閉じ込められてしまう。
落下してきたもの、揺れで飛んできた物で怪我を負うなんてこともあります。家具の固定も、案外盲点があるようです。

その後は、被災後に覚えておくと生活が格段に楽になるであろう話など。

内容を考えております。スローペースで更新していくと思いますので、ゆっくりお付き合い戴ければと思います。

長文にお付き合い戴きましてありがとうございました。