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『貧困化バスターズ』出版余録

 


 ◆その気にさせるもの

 前に『温暖化バスターズ』をAmazonから出版し、小説を書くのはしばらく休もうと思っていた。知り合いから「タヌキのタヌエ姉さんという新ヒロイン候補もデビューしたのに、もったいない」と言われ、またその気になってしまった。

 ◆嗚呼(ああ)「地方創生」

 今作は貧困化がテーマである。もちろん経済的なそれではなく、心の貧困化だ。誤解を避けるため「守れ! 心のワンダーランド」とサブタイトルを付したが、内心、冷や汗ものだった。前書きにも書いたように、まさに天に唾する行為にほかならない。
「これなら天罰が下りることもないだろう」と取り上げたのが、見境のない地方創生事業による環境破壊、オーバーツーリズムだった。

 ◆クロモジよ お前もか

 舞台は例によって四国の山間部。Uターン後、見聞きしたり、ネットで調べた環境破壊の実態を盛り込んだ。
 その中でショックだったのは、クロモジが絶滅危惧Ⅰ類に指定されていることだった。ごく近い将来に絶滅の危険性が高い種、とされているのだ。

 クロモジは子供のころ、ごく身近なところにあった。枝を折ると、独特の芳香がした。早い話が、爪楊枝の材料だ。お茶や精油、薬用にもなることを今回知った。
 その効用ゆえに乱獲されたのか、それとも環境汚染、あるいは無計画な針葉樹(主に杉)の植林により生育場所を奪われたのか。おそらく、いずれもが関係しあっていることだろう。

 ◆火の粉はあなたにも

 絶滅の恐れのある野生種は、レッドデータブックにそれこそゴマンと載っている。意識しようがしまいが、この瞬間にも多くの種が絶滅に向かっているのである。
 さすがに温暖化は鈍感な人の尻に火をつけた。しかし、わが身に火の粉が降りかかることはない、とタカをくくっている人間には、死の床にある野生種たちを思いやる余裕は、ないだろう。「心の貧困化」と言わずして、何と言えばいいか。

 ぼやいてばかりいても、詰まらない。作品では、タヌエを中心とする森の動物たちが、無自覚な人間を懲らしめる展開にしてある。こんなことで溜飲を下げている私はやはり、貧困な心の持ち主なのだろうか。

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