サウンドにモテるエンジニアになるには

この記事はunity1week Team-Up!! Advent Calendar 2023の8日目のです。unity1week Team-Up!!とは色んなジャンルのクリエイターがゲーム制作を通して繋がろう!的なコミュニティで、公式サイトはこちらです。unity1weekというゲームジャムを主にターゲットにしているため、この記事もunity1weekで採用されているプラットフォームであるWebGL向けかつ、1週間でゲームを作る前提となっています。
この記事の内容としてはサウンドにモテるエンジニアになるには、つまりサウンドクリエーターの方に「一緒にゲームを作りたい!!」と思われるエンジニアになるにはどうすれば良いかをお教えします。

さて皆さん、モテるために必要な要素とは何だか分かりますか?お金?権力?いえ、違います。

自信優しさです。

古今東西、自信を持っている人に人は惹かれ、更に優しさで畳みかけることで人は心を開きます。(所説あり)

自信とは

では自信とはなんでしょうか?自信とは「サウンドに関する知識があること」と「サウンドに関する実装を出来ること」です。
なのでモテるためにこれらの代表的なものを今回共有しようと思います。

音量に関する知識

実は音量というのは音楽制作でもゲーム制作でも非常に重要な要素です。UnityでもDTMなどの音楽でも共通して音量はdB(デシベル)という単位で表します。
dBと言うと皆さんは騒音の単位として電車の車内が80dBだったり、飛行機が130dBだったりと聞いたことがあるかもしれません。これは忘れて下さい。同じdBでもdB SPL(デシベルサウンドプレッシャーレベル)という別物です。
UnityやDTMで使用されているのはdB FS(デシベルフルスケール)という0dBを音割れする大きな音量、それ以下のマイナスをそれより小さい音量として表した単位です。音楽もゲームもこの0dBによる音割れに注意しつつ、しっかりと狙い通りの音を相手に聞かせることが重要になってきます。
この辺りは過去に作った動画があるので詳しく知りたい人は是非見てみて下さい。(宣伝)

サウンドクリエイターの方は常にこの0dB、つまり音割れと戦いながら良い音楽を作っています。ですので音量についての知識をしっかり身に着けておいて下さい。自信に繋がりモテます。

余談ですが、Unityではサウンドを取り込むと7dB音量が減らされるという隠された仕様があります。これは0dBギリギリで作られたBGMとSEの2音を同時に鳴らしても音割れしないための工夫だと思います。より詳細なところとしては以下の通りです。

  • サウンドアセットの音量を上げるのは難しく、鳴らすときに下げるのは簡単なので0dBギリギリでサウンドアセットを作るのは一般的

  • そのサウンドアセットの音量を7dB小さくすると音量は-7dBとなる

  • -7dBのサウンドを2音同時に鳴らしたときの音量は-1dB(計算方法は省略)

  • 0dBを超えないため音割れを回避できる

インタラクティブミュージック

インタラクティブミュージックとはゲームの状況に応じて音楽が連動する仕組みや、逆に音楽の状況とゲームを連動させる仕組みのことを言います。
例を挙げると、

  • 敵の外見が変化したらBGMが次のパートに進む

  • ストーリーの進行に応じてBGMの楽器が増える

  • BGMの譜面に連動して敵が攻撃してくる

などです。
これらの内いくつかをあらかじめ出来るようにしておくことで自信に繋がり、サウンドにモテます。
またまた宣伝なのですが、上記例の1,2番目のインタラクティブミュージック(通称、BGMの横の遷移と縦の遷移)を実現できるソースコードを公開しました。しかも、更にそのソースコード(コンポーネント)について別のアドカレで同じ12月8日に記事を出しました!記事を興味のある方は是非見てみて下さい。

ジングル

ME(ミュージックエフェクト)とかジングルと呼ばれる音をご存知でしょうか?メロディがある効果音のことをMEやジングルと呼びます。短いサウンドなので通常のSEと同等に扱いたくなりますが、このME/ジングルは絶対にBGMと一緒に鳴らしてはいけません。BGMのメロディとME/ジングルのメロディの2つのメロディが重なって、音としてはめちゃくちゃになります。

逆にME/ジングルの扱いを知っておくことでME/ジングルを正しく鳴らせる自信が付き、これまたサウンドクリエイターにモテます。

優しさとは

モテる要素のもう1つ、優しさとは何でしょうか?優しさは優しさです。ゲーム制作時にサウンドクリエイターの方を優しさで包んであげて下さい。モテます。
でも実際どういうことをしてもらえたらサウンドクリエーターの方が嬉しいか分からない人もいますよね?こちらもお教えします。

すぐにBGMやSEを組み込む

サウンドクリエイターの方はゲーム制作に当然不慣れなので不安でいっぱいです。「納品の形式は正しいだろうか…」「思った通りに鳴るだろうか…」「曲を気に入ってもらえるだろうか…」など沢山の不安な気持ちを持ってゲーム制作に協力してくれています。

そんなときエンジニアができることは「すぐに組み込む」ことです。これだけでサウンドクリエーターの方の多くの不安が解消されますし、モテること間違いなしです。
実際、1人でゲームを作っているとサウンドは最後に入れ込むことも多々あると思います。ゲームをあらかた完成させて、最後にサウンドを全部いっぺんに入れ込む進行です。ですがこれはサウンドクリエイターの方が本当に不安になるので絶対に避けて下さい。

ダミーサウンドは明らかにダミーにする

すぐにサウンドを組み込むためにダミーサウンドを最初に組み込んでおくことがあると思います。サウンド納品時にすぐに反映できるためとても良い方法だと思いますが、このとき組み込むサウンドは明らかにダミーと分かるものにして下さい。SEならピアノの単音だったり、BGMなら適当な民謡とかのフリー素材、有料BGM素材を仮に当てるとしても場面に全く合っていないものにして下さい。

下手に良いダミーを設定するとサウンドクリエイターの方も「今入っているサウンドで良いじゃん…」と感じてテンションが落ちますし、納品時にダミーサウンドと納品サウンドを比較してしまうという不要な比較もしてしまいがちです。ダミーサウンドは明らかにダミーにする、ちょっとした気遣いですがこの優しさがモテることに繋がります。

何度もバウンスさせない

バウンスとはサウンドを書き出すことです。曲や効果音の内容を変えたりしたときには絶対に必要な工程ではあります。それ自体は仕方ないのですが、それ以外のケースでは極力サウンドクリエーターの方にバウンスをさせないで下さい。というのもそもそもバウンスは結構手間です。非常に嫌な制作フローとしては…

エンジニア「もう少しこの効果音の音量を小さくしてもらえますか」
サウンドクリエーター「はい、小さくしてバウンスしました」
エンジニア「ちょっと小さすぎますね、もう少し大きくお願いします」
サウンドクリエーター「はい、もう少し大きくしてバウンスしました」
エンジニア「うーん、調整したら別の効果音が目立たなくなりましたね…こっちの効果音も…」

こんな感じのフローは優しさの欠片もありません。ですが音量の調整というのは前述の通りゲームにとってとても重要な調整項目で、ゲーム全体のサウンドの良し悪しを大きく左右します。ではどうすればサウンドクリエーターの方に優しく接してモテることが出来るのでしょうか?

それはUnity側で音量調整することです。Unity側で音量を上げることは簡単ではないですし音割れしてしまったりもしますが、音量を下げることは比較的簡単に出来ます。なのでサウンドクリエーターの方には最初に大き目の音量でバウンスしてもらい、それ以降はAudioSourceのVolumeなどで音量調整して、バウンスの回数を減らしてあげて下さい。

ただAudioSourceコンポーネントだけでの大量のサウンドを管理するのはエンジニアの方が大変だと思うので、山々田が使用しているアセットを紹介します。

Master Audio 2022です(山々田は2022より前の販売を終了しているバージョンを使用しています)。いわゆるサウンドの統合管理的な立ち位置で使えます。説明が英語なのが難点だとは思いますが…以下のようなことが手軽に出来る点がメリットです。

  • BGMやSEの音量調整:基本ではありますがまとまって調整しやすいです。単位がdBなのも細かい調整時に便利です。

  • ピッチのランダム化:同じ音の繰り返し感がある効果音に設定します。例えばマシンガンの発射音などに小さい値で設定します。なおME/ジングルには設定してはいけません(音痴になってしまうので)。

  • ディレイの設定:アニメーションと効果音のタイミングが合わないときなどに効果音のタイミングを遅らせることができます。バウンス回数減少に役立ちます。

  • ダッキングの設定:ME/ジングルが鳴った時にBGMの音量を自動的に下げられます。2つのメロディのバッティングを防げます。

もし、いつも使っているサウンドの統合管理(お手製SoundManagerなど)がない場合にはMasterAudioを使ってみるのも良いのではないでしょうか?

最後に

最後にサウンドの方にモテるために一番大切なことを伝えます。それは1歩を踏み出す勇気です。「一緒にゲームを作りませんか?」この一言が言えるかどうかがサウンドクリエーターの方にモテるかどうかで一番大切です。
是非、自信と優しさを身に着けた皆さんは勇気を出してみてください。


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