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舟橋三十子『和音の正体 和音の成り立ち、仕組み、進化の歴史』YAMAHA

「ドミソ」「ファラド」「ソシレ」といった和音について学校で習っているはずではあるが、本当のところは理解できていない。和音とは3つ以上の異なった高さの音が同時に響くことを言うらしい。

4つでも5つでも、100個の音でもよいのであるが、基本となるのは3つの音で構成される「三和音」である。さらに基本中の基本の和音は、「ドミソ」である。

和音は隣同士の音の積み重ねでなく、ひとつおきの音を積み重ねてできている。「ド」の次の「レ」を飛ばして「ミ」、「ミ」の次の「ファ」を飛ばして「ソ」となる。ド+ミ+ソの3つの音が三和音としてひとつの和音となり、この音と、もとの音との距離を「3度音程」と呼ぶ。

「ドミソ」の和音は明るいが、ミの音を半音下げると「ドミ♭ソ」となり、とたんに暗い音となる。真ん中の音は大変重要な役割を果たしている。三和音の一番低い音を根音こんおん、真ん中の音を第3音、一番上の音を第5音と呼ぶ。この配置が変わっても名前は変わらない。「ミソド」でも第三音、第5音、根音と呼ぶ。なお、和音を読むときは、必ず下の音から順番に読む。

音階の始まりの音である主音を根音とするたとえば「ドレミ」を主和音と呼び、安定を表現する。音階の5番目の音を根音とするたとえば「ソシレ」を属和音と呼び、不安定、緊張を表現する。音階の4番目の音を根音とするたとえば「ファラド」は下属和音と呼び、彩りを表現する。これらを主要三和音と呼び、それ以外は副三和音と呼ぶ。

ここら辺あたりで、少し混乱してくる気もするが、細かいところは完全に理解できなくても、作曲家によって和音の好みがあることや、国によって和音の進行が異なることなどの興味深いことがらが本書からわかってくる。日本の伝統音楽には和音という概念がなく旋律の気見合わせでできているようである。

和音のはじまりはピタゴラスによる発見である。ピタゴラスは、職人が叩くハンマーの音から、二つのハンマーの重量が2:1の場合は1オクターヴ、3:2の場合は5度、4:3の場合は4度というように、整数の中でも特に美しい響きを持つものがあることに気づいた。ドの音の2倍の周波数を持つ1オクターヴ上のドと、3倍の周波数を持つソからなる「ピタゴラス音律」を発見した。

本書に載っているQRコードからアクセスすると、音階等を実際の音で確認することができるようになっている。音楽の三要素であるメロディ(旋律)、ハーモニー(和音)、リズム(律動)のうち、ハーモニー(和音)をきっかけとして音楽を理解することができる面白い本ではないかと思う。


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