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日高杏子『色を分ける色で分ける』京都大学学術出版会

虹が7色という概念は、日本では、江戸時代の蘭学により広まったのではないかという。『吾妻鏡』では5色であり、一般的な日本人は5色程度と考えていたのではないかという。

ヨーロッパで、イギリス英語は、ニュートンの著書『光学』により7色に統一されているが、一般大衆は6色程度とされ、フランス語は7色であるが、ドイツ語は5色が多く、ロシア語は4~7色と幅があるという。また、アフリカでは2~8色、中国の伝統では5色である。

日本で「虹は七色」と答えるのは、明治初期のイギリス由来の教育のたまものであり、その色の名称もゆれがあったという。そもそも、ニュートンは7音階(ドレミファソラシ)に結ぶつけたもので、「音階」と「天球の音楽」というピタゴラスの世界観に紐付けている。色を分けることはなかなか難しい。

LGBTのレインボーフラッグは8色(ピンク、赤、オレンジ、黄、緑、ターコイズ、藍、紫)だが、制作上の都合で6色(赤、オレンジ、黄、緑、青、紫)が定着している。

日本のチョコレートのパッケージは、赤・黒・金色が多いが、アメリカでは、黄・青など、日本ではほとんど使われていない色が使われる。アメリカでは、チョコレートは安くて気軽な栄養補給できるスナックであるが、日本では、外国由来の贅沢品であった雰囲気が残っているという。

ハレは紅白、ケは黒青。男は白青、女は赤ピンクなど、色によって区別されていることが多い。それらの色によって分けることも時代ととも変遷する可能性がある。また、肌の色によって分けることは人種差別につながるとされるが、景観法のように色を規制しようとするものもある。

色について、その区分を決めることのむずかしさ、また、色によって、区別することのむずかしさを追究することにより、世界の文化の違いまで感じられる本になっていると思う。


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