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カボチャを嫌いだと錯覚するには理由がある

カボチャは好きなんです。砂糖と醤油で煮たカボチャは、単身赴任時代の得意料理でした。天丼に入っているカボチャの天ぷらは最後にとっておくほど好物ですし、焼き肉にも欠かせない野菜です。最近ではスープカレーに入っているカボチャも好きですとも!

なのに、なぜかカボチャ料理ときくと一瞬だけ心の奥底の深ーいところで「なーんだ、カボチャかぁ」という気持ちがよぎる。「カボチャかよ」と吐き捨てる感じかもしれない。大好きなはずのカボチャを蔑むのは、我ながら不思議なことですが、実はちゃんと理由がある。

それは幼少のころに読んだマンガ、『ロボット三等兵』の影響なんです。旧日本軍に入隊するも員数外の半端者として三等兵(実際には二等兵が最下位で三等兵というのは架空の階級)という最下位の階級を与えられたロボットが巻き起こす悲喜劇で、『おそ松くん』や『オバケのQ太郎』と並んで大好きなマンガでした。

ロボット三等兵が所属する連隊が戦地に赴いた後、銃後(日本)から慰問袋が届きます。ちゃっかりと一番大きな慰問袋を手に入れたロボット三等兵が大喜びする一方、風呂に入っていて出遅れた連隊長(一番偉い人)が手にしたのは一番小さいの。連隊長はその地位を利用して、ロボット三等兵から大きな慰問袋を取り上げ、小さな慰問袋を押し付けます。

そしていざ、連隊長が大きな慰問袋を開けてみると、中身はカボチャがふたつ。連隊長からロボット三等兵に押し付けられた小さな慰問袋には、チョコレートやキャラメルなどがいっぱいでした。
ロボット三等兵も、「小さくても中身は素晴らしかった」とご満悦。

一方の連隊長は癇癪を起こしてカボチャを蹴り飛ばす。
カボチャは炊事場まで飛んでいく。
炊事兵が「みごとなカボチャだから、特別に連隊長のおかずにしよう」と調理するのですが、戻ってきたカボチャを見た連隊長はカンカンに怒ります。

炊事兵が「あんなにカボチャが嫌いな奴は見たいことがない」とつぶやく姿を、チョコレートを食べるロボット三等兵が笑ってみているという童話的なオハナシでした。

こういうふうにして、カボチャは人気がない食べ物→ちょっと蔑む、という心理の回路が構築されたという次第であります。いやはや、三つ子の魂百までというか、雀百まで踊り忘れずというか。


こういう脳天気なマンガですが、巻を重ねるごとに戦争の凄惨な描写も増えてきます。ガダルカナル島、満州国境など厳しい戦場ばかり渡り歩くロボット三等兵は、もっと読みつがれてもいい作品だと思うのですが。