見出し画像

『いつも、日本酒のことばかり。』特別企画「蔵元のことばかり。つづくこれからの話」

<前置きのようなもの>
はじめましての方もそうじゃない方も、こんにちは、山内聖子です。私はつい先月の5月17日に、『いつも、日本酒のことばかり。』(イースト・プレス)という本を上梓した物書きです。
https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781618791

まずは、はじめまての方に向けて、本書に載っているプロフィールを自己紹介がわりにさせてください。
「呑む文筆家(唎酒師)・公私ともに17年以上、日本酒を飲みつづけ、全国の酒蔵や酒場を取材し、『dancyu』や『散歩の達人』など、数々の週刊誌や月刊誌で執筆。日本酒に深い愛情を注ぐ一方で、ときに日本酒の酒質をシビアに洞察する。日本酒セミナーの講師としても活動中。著書に『蔵を継ぐ』(双葉社)」

さて、このたびは、タイトル通り『いつも、日本酒のことばかり。』の特別企画として、『蔵元のことばかり。つづくこれからの話』の連載をはじめることにしました。

はじめる理由はこうです。

『いつも、日本酒のことばかり。』は、日本酒についてあらゆる角度から魅力や謎に迫った一冊ですが、日本酒の醸造工程を一つ一つ紐解いた「じっくり、つくられる」の章では、多くの蔵元さんたちに教えを請いました。
本来ならば発売後に、ご協力いただいた蔵元さんたちにお会いしてお酒を飲みながら、今期のお酒づくりに向けた話をどこかにまとめて書いたり、新たに執筆するべきことを模索しているはずでした。

ところが、新型コロナウィルス感染症の影響で互いにそれどころではなくなり、私のことはさておき、酒蔵には暗雲がただよいはじめます。

日本酒を扱う多くの飲食店が休業を余儀なくされ、すべての日本酒イベントが中止あるいは延期されたことで、他の業種とおなじく、酒蔵や酒屋もふくめて日本酒業界全体が経済的な打撃を受けます。

つまり、とりわけ日本酒を提供する飲食店は、日本酒の消費を支える大きな存在なのです。
おのずと飲食店にお酒を販売する酒屋さんも、酒蔵に対して出荷制限をしなくてはならず、出荷を減らされたり出荷がゼロの月もあった、という蔵元さんたちの話も耳に入るようになりました。

新型コロナ禍の時期は、つくったばかりの新酒が多く出回る頃とも重なり、蔵元は手塩にかけたお酒を目の前に、消費の落ち込みをどのように受け止めているのか。
会うことが叶わない蔵元さんたちを思い、私は毎晩のように自宅で彼らの日本酒を飲むたびに、そんなことをいつも静かに考えつづけていました。

そして、緊急事態宣言が解除され、ほんのわずかでも前に進むことが可能になった現在。これまでもふくめて蔵元たちが考えていることを、私は今だからこそ知りたいと思いました。

多くの日本酒の酒蔵は100年を越える長い歴史をもち、災害や戦争など、あらゆる困難を乗り越えて今があります。
そんな歴史を背景にもつそれぞれの酒蔵は、今回の危機にどう向き合い、今後をどのように見据えているのか。
表面からはうかがい知れない蔵元の機微を文章におこし、特に日本酒が好きなみなさんに伝えたいと思いました。

それが、noteで連載をはじめる発露です。
というわけなので、本企画はあくまでも私の勝手な動機ではじめることであり、どこまで蔵元さんたちが対話に応じてくれるかは未知数です。

しかし、ありがたいことに、まず、本書に推薦文をくださった「獺祭」の桜井博志会長が、先日、リモートインタビューに応じてくださいました。
さらに、他にも、本書で登場する蔵元で参加表明をしてくれた方も多く、全員が登場するかは未定ですが、可能な限り伺った話をここで書いていきたいと思います。
まだまだ手探りな状態で走りはじめる不定期の連載ですが、ぜひご一読いただけるとうれしいです。
それでは、次回までみなさまどうかお元気で。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?