『First Love 初恋』が傑作すぎたので渾身の感想&考察を書いてみた!
Netflixのオリジナルドラマ『First Love 初恋』を観ました。
いや〜、とても面白かったです!
生きててよかったと思えるくらい感動しました!!
この感動をなんとか形にしたいと思い、ネタバレ満載の感想&考察を書いててみましたので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
(まだ『First Love 初恋』を観てないよって方は、下記の文章はまだ読まない方がいいので、すぐにドラマを観てください!)
素晴らしかった点
作品の根底に流れる強烈なメッセージ
このドラマを観た方は、ただのラブストーリーではないと肌で感じませんでしたか?
私は、この作品に次のような強烈なメッセージを感じました。それは、
「どんなに今がつらくても、どんな不運に見舞われても、前を向いて懸命に生きていれば、いつかきっと明るい未来が待っている」
ヒロインの也英は、大学1年生のときに事故で記憶障害となり、人生の歯車が狂い始めてしまう。やがて医者のユキヒトと結婚するも、姑と折りが合わず離婚をし、経済的な理由で子供の親権も失わざるを得なくなり、学生の頃からの夢っだったCAの道も閉ざされて人生のどん底を味わいます。
それでも息子の綴(つづる)が心の支えとなり、懸命にタクシードライバーとして働き、前向きに生きてきました。
一方、晴道も、也英から記憶障害のために忘れられて、思いが届かぬまま也英が他の男と結婚してしまうという絶望を味わったものの、自暴自棄にならず、前を向いて生きていき、目指していたパイロットの道へと突き進みます。
そんな不遇ながらも懸命に生きていた也英と晴道が20年の時を経て結ばれていく過程を描いたこの作品は、どんなに今が思い通りにいかなくても、前向きに生きていくことの大事さを強烈に教えてくれました。
映像の美しさ
通常のテレビドラマでは、予算の制約のためか、5箇所くらいのセットで撮影されたシーンを、交互にグルグルと何度も展開して作品が作られています。
例えば「会社の中、男主人公の家の中、女主人公の家の中、公園、いきつけのバー」などの舞台で撮影されたシーンが、何度も順繰りに繋げられていたりします。
そんな限られた場所で撮影された映像を、なんとかうまく繋ぎ合わせて作品にしているのは凄い技術と努力だなと感心しますが、やはりときどき「あぁ、またこの場所か」と少し食傷気味に感じることもあります。
その点、この「First Love 初恋」は、さすがNetflixの予算だけあって北海道の大自然、東京、札幌、教室、教室の屋上、公園、工場、空港、自衛隊基地などなど、多彩な舞台背景があって、アートのような映像美に魅了されました。
「ジグゾーパズル」のような構成
この作品で特徴的だったのは、過去と現在のシーンが何の前ぶれもなく小刻みに入れ替わって描かれている構成です。
この構成は、物語にときどきセリフで出てくる「ジグゾーパズル」をイメージしたものなのだと、後々で気づきました。
物語の結末に向かうにつれ、少しずつ大事なピースが埋まっていき、也英と晴道が結ばれるという「絵の完成」までをじっと息を呑むように見守る、そんなラブストーリーの構成に痺れました。
色彩の使われ方
この作品では「青」が非常にポジティブな色として使われていました。
寒竹(かんちく)監督のこだわりから、「寒竹ブルー」と呼ばれているそうです。
也英の学生時代のマフラーやリュック、初デートの服は青。大人になってからの也英にとって心の支えである綴のファッションも全身青。也英がCAの格好で空港を練り歩くときの服の色も青。
「青=ポジティブ」という印象を与えることによって、逆に也英が青色を身につけていないときは、也英にとって苦しい時期であることを示唆していました。
一方、晴道の家族は、食卓での食事のシーンでみんな赤の服を着ていました。
也英と晴道の恋を象徴する花「ライラック」は紫で、青と赤の混色です。
色彩に丁寧に意味を与えている寒竹監督の見せ方がとても素敵だと感じました。
時系列まとめ
1998年7月4日 火星探査機「のぞみ」打ち上げ
12月9日 宇多田ヒカル「Automatic」リリース
12月10日 也英16歳誕生日(高校1年生)。也英と晴道交際
2001年3月11日 也英と晴道、高校卒業。ライラックの木の下にタイムカプセルを埋める。
2001年4月 也英、東京の大学入学。晴道、自衛隊入隊
12月頃 也英、交通事故により記憶喪失
2003年12月9日 火星探査機「のぞみ」ミッション終了。也英、妊娠。晴道、自衛隊にて初フライト。
2007年1月 也英が姑に嫌悪感を抱きユキヒトの浮気を発見するシーン。優雨(晴道の妹)結婚
2011年3月11日 東日本大震災
2018年 第1話冒頭(札幌)。也英、タクシー運転手。晴道、オフィスビルの警備員。
8月 也英と晴道、火星観覧会を見る。
各話の感想&考察
第1話「リラの花咲く頃」
「リラの花」とは「ライラック」のことで、花言葉は「初恋」です。
冒頭のモノローグは物語を印象づける大事な言葉なので、全文を書き起こしてみました。
第2話「きみの声」
第2話で個人的に好きなシーンは、オウタロウと也英がボーリングの練習に行くシーン。
土砂降りのなかオウタロウが「自主練のための自主練のしすぎで腱鞘炎になってしまった」と落ち込んでいるところ、也英が雨の中に飛び出して「思っていることと反対のことを言うゲームをしましょう」と笑顔で雨に濡れるシーン。
つらいことがあっても、前向きに笑顔で生きていこうとする也英の力強さが感じられました。
第3話 「ナポリタン」
自衛隊のシーンはお金がかかっていそうで、すごい贅沢なシーンですよね。ドラマでは考えられない豪華な演出です。
この第3話では、非常に気づきにくい小ネタを発見しました。
也英の大学時代の回想シーンで、授業中に友達からCDを返却されるのですが、「一枚入ってないのがあったよ」と言われ、也英は宇多田ヒカルのファーストラブのケースを見つめます。
いったい、そのCDの中身はどこにいったのか?
そう!そのCDは第7話で晴道の部屋からポータブルプレイヤーと一緒に出てきます!
もし、そのCDの中身を晴道に貸したままでなければ、也英の記憶は戻っていなかったので、すごい運命を感じますよね!
第4話 「Space Oddity」
也英が高校生のときに打ち上げられた火星探査機「のぞみ」に、也英は自分の名前を入れてもらいます。
「のぞみ」は5年間にわたるミッションが失敗に終わり、火星から遠ざかり太陽系を永遠に旅する衛星になるのですが、ちょうどその頃に也英は、記憶喪失によって晴道を忘れユキヒトと結婚します。
つまり「のぞみ」がミッション失敗により宇宙を彷徨うことになった結果が、也英と晴道が結ばれなかったことのメタファーになっているのです。
第5話 「Talk in Sign Language」
綴とウタのエピソードもとても面白いですよね。
ウタが綴に言った次のセリフも、この物語の根底に流れるメッセージを色濃く反映しています。
また、妹の結婚式での晴道のスピーチも、同じニュアンスを含んでいます。
第6話 「The Sixth Sence」
高校時代の英語の授業のシーンで、先生から「この物語からあなたは何を学びましたか」と質問されて也英が答えたセリフも重要なメッセージでした。
第6話では、高校時代の晴道と也英が一夜をともにするシーンが描かれていますが、これって結構重要だなと思いました。
なぜなら、也英と晴道が肉体的にも初めての相手であり、精神的にも肉体的にも二人は「初恋」の関係だということを示しているからです。
第7話 夢のあとさき
冒頭で也英がCAの格好で空港を闊歩するシーンは、とても印象的でした。
その後の展開を見て、このシーンがとても悲しいシーンだと分かって辛いのですが…。
也英の過去のシーンで、工場での仕事を解雇され、おそらく綴の教育費が払えないことが原因で、ユキヒトに親権を渡すことになるのですが、その際、親権者変更届を書いているときに涙でインクがしみます。
この涙でしみたインクこそが、冒頭のモノローグで言われていた「青の時間という名のインクのしみ」なのだと思いました。青の時間というのは英語で「ブルーモーメント(夜明けの始まりと夕焼けの終わりに辺り一面が青いひかりに照らされる現象)」なので、万年筆のインクの名称なのかなと推測できます。
そして、綴がユキヒトの車に乗せられて去っていくときに也英が号泣するシーンは、本当に胸が痛くて涙しました。満島ひかりさんの演技が凄まじかったです。
そんな人生ドン底にあって、叶わなかった夢を味わおうとCAのコスプレで空港を闊歩する也英は、もはや狂気のさたでした。さらにそのすぐあとに工場の殺菌室で全身消毒を受ける地味さの対比が、あまりにも強烈でした。
第8話 或る午後のプルースト効果
2001年3月11日に也英と晴道は高校卒業とともに10年後に開けるタイムカプセルを埋めるのですが、10年後はちょうど東日本大震災が起こり、記憶を無くしている也英はもちろん、晴道もタイムカプセルを開けることなく時が過ぎていきました。
第8話では、晴道と恒美が親密だった時期と別れが描かれ、晴道の心に大きな痛みが刻まれる様子が示されます。
そして、也英はオウタロウに背中を押されて晴道に告白しますが、恒美を深く傷つけてしまった晴道には受け入れることができず、日本を経つことを決意します。
ラストで、FirstLoveの曲を聴いて、也英が記憶を思い出すシーンは私号泣しました。
このシーンは満島ひかりさんの演技がすごかったです。視線の動きと表情で「記憶が戻って晴道の愛を知った」也英の心情をあれほど絶妙に表現できるのは、満島ひかりさん以外は不可能だったのではと思います。
第9話 「初恋」
記憶が戻った也英はタイムカプセルを開き、そこに晴道が残した手紙を発見します。
そこからの展開は、文字通り筆舌に尽くし難い、日本ドラマ史上に刻まれるような素晴らしいものでした。2020年のコロナの影響で海外渡航できず、3年間足止めすることになった展開も絶妙でした。
3年後に感動の再会を果たしたシーンは最高のカタルシスでした。
也英が空港で「晴道!」と放った声が、すごい熱量を帯びていて私の涙腺をワンパンで崩壊させました。
最後に
自分史上最高に感動した、本当に素晴らしいドラマでした!
こんな素晴らしい作品を作ってくださった関係者の皆さんに感謝申し上げます。
読んでくださり、ありがとうございました!
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