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移住4日目 残置物片付け

 雲が厚い。今日はまだ、時おり晴れ間もある。
ここ数日の春めいた暖かさから一転、空気はひんやり。灯油ヒーターを付けても部屋が暖まりにくい。都心のマンションは気密性が高くて、冬の暖房といえばホットカーペットでやり過ごせていたけれど、こちらではそうもいかない。
古民家は呼吸をしている家、もとい隙間だらけの家だ。どこからともなく冷気が流れてくる。

 これから改修を始める我が家へと向かう。お試し住宅からは車で5分くらい。標高300メートルほどの山裾の集落にある。築年数は約80年、いまも立派に立ち続けている。

 古民家と呼ばれる物件には大体において前の住人が残した家財があり、何十年分もの埃が積もっていたりする。改修工事前に、これらの残置物を片付けなければならない。
町の補助金が出るそうだけれど、この量を処分するのには相当な金額がかかってしまうらしく、出来る限り自分で解体したり整理したり運んだりしなければならない。

 我が家には、一見するとそれほど多くの家財は無かったけれど、押し入れや箪笥を開けると、出てくる出てくる。
忘れ去られた思い出の品々が、ひっそりと息を潜めて家主の帰りを待っていた。それらを一つ一つ目に留めて、役割を終えてもらう。

 片付けが終わると家の中を清浄な風が通り抜けていった。淡い光が差す空にはらはらと雪が舞う。