「フリーランス白書2018」雑感
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会から、「フリーランス白書2018」が公開されました。IT 界隈のデザイナー視点で(雑感ですが)まとめてみました。
フリーランス市場は成長中だが
ソフトバンクやユニ・チャーム、丸紅といった大手企業が副業を許可(丸紅は社内副業)し、企業におけるフリーランスへの発注総額も年々増え続けています。
IT 業界に限って言えば、常に人手不足という状態が続いており、かつ効率化の追求のために業務が細分化され、人材も育ちにくい環境になっている企業も多いと感じています。特にデザイナーのような専門職の場合、組織的に教育ができる体制が整っていない企業は、それが顕著に現れています。そのため、専門性や高いスキルを外部のフリーランスに頼る構図は必然であり、この状況は暫く続くのではないかと思います。
現在、国内の労働人口の 1/6 がフリーランス(兼業・副業含む)と言われており、現在政府が進めている「働き方改革」も相まって、フリーランス人口はさらに増えると予想されています。しかし、専業フリーランスの社会的信用力(与信や審査)は相変わらず低いと感じている意見が多く、多様な働き方を社会的に受け入れるためには法体系の整備が急がれます。
二極化が進むフリーランス
会社という組織は教育環境が整備されており、自ら動かなくても一定のレベルまで成長することができます。また、配属された部署の業務が自分に不向きであれば配置転換の希望を出すことができ、苦手なことは得意な人に任せることもできます。
しかしフリーランスは余程恵まれた環境以外では、基本的に自らの時間・資産・労力を捻出しない限り成長できず、苦手なものを敬遠することは自らの首を絞めることになります。これはフリーランス自身の課題ですが、会社という傘の下から出るということは、何を意味しているのかを理解する必要があります。
上記の高田ゲンキ氏の Twitter での投稿は的を射ており、やはり白書の中でも上記の指摘に当てはまる意見が散見されました。自らの成長を他者や行政に求めるということは、それが実現しない限り、現状は脱却できません。
結果、いわゆる「勝ち組」は順調に成長し、「負け組」は兼業・副業フリーランスや派遣社員との価格競争に晒され、その溝は埋められないほど拡がるものとなってしまうと考えられます。
企業側の契約書や社内意識も変化を
前述のように優秀な人材を外部に求めたいというニーズがありながら、機密保持契約やネットワークセキュリティの整備が追いついいない現状があります。これは私自身も経験がありますが、フリーランスとしての大きなメリットである「在宅勤務」ができないケースもありました。
また、未だ発生する金銭の不払いやモラルハザードは以ての外ですが、正社員や派遣社員と同じ勤務体系で縛る要求も未だ根強いようです。企業側には「気軽に相談がしたい」「勤務状況を把握したい」という要望もあるのでしょうが、デザインに関して言えば、ラピッドプロトタイピングやサービスの立ち上げ時など、極端に即時性が求められる場合以外は、電話やチャットで殆どが事足りてしまいます。
また、フリーランスは個人であっても「事業主」であり、契約社員や派遣社員ではありません。そのため、時間で拘束する契約体系でない限り、勤務状況まで監視するのは筋が違います。会社内での理解が得られていない、フリーランスに発注したことがない…といった事情もあると思いますが、フリーランスの活用を検討しているのであれば、このあたりの意識の変化も必要だと思います。
専業フリーランスという生き方を勧められるか
フリーランスの未来は決して明るいものだけでなく、改善しなければならない課題も沢山あります。白書から読み取れるものはごく一部ですが、近年の副業推進の政策や企業変革に対して、フリーランス自身の意識がついていけてない部分があるのではないかと感じています。これは私自身も生存戦略を考えなければならない部分です。
また、フリーランスというものは、自らの理想を追求して独立した人、会社員に適合できずに流れで独立した人、育児や介護でやむを得ず独立した人、子育てが一段落した人や定年退職後などのセカンドキャリア…など背景も様々であり、ビジネススキル面も会社員として仕事を進める上で必要なスキルを充分に経験した人から、充分な経験を得られずに独立した人、そもそもビジネスに興味がない人…などバラバラであると白書のコメントを読んで改めて感じました。
そのような背景のため、行政が率先して何かの基準を作り、フリーランスの環境を整備することはなく、特に人脈作りやキャリア形成を国が援助することはないと考えています。
以上のことから、今の「働き方改革」の流れに乗って気軽にフリーランスに…というのはお勧めできません。やはり個人であっても「事業主」である以上、会社員とは違う覚悟が必要であり、それを受け入れ、自ら打破できる自信がなければフリーランスという生き方はお勧めできません。
しかし、フリーランスが再就職しやすくなるような取り組みは必要だと思います。これは昨今盛んに叫ばれている「女性が輝く社会」とも関わってきますが、育児のため一度離職した人が再就職をしやすくなる事と同じで、多様な働き方を受け入れるためには変化が必要なのではないかと思います。(まずは履歴書の年齢の欄を無くすことから始められる?)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?