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十七才の地図〜THE TOKYO TOILET

新宿の摩天楼に暮らしていると、高層ビルや空を見上げてばかり。つい足元を失ってしまう。40歳を超えてからトイレに行く回数が増えた。昔はトイレに居るひとりの時間が好きだった。8年前にエヴェレストに1ヶ月いたときは、下山して何より感動したのがホテルのトイレだった。

日本は外国と違って公共トイレが多い。店に入らなくてもいい。しかも無料で使える。山に行くとトイレは有料(1回100円)なので、余計に街のトイレは感激する。朝起きてトイレに行き、夜寝る前にトイレに行く。1日の始まりと終わりの両方をトイレが寄り添ってくれる。本当なら人間に「感謝」を教えてくれる場所だが、落書きやわざと汚しているのかと思うほど人間の「醜さ」が露呈される場所である。「当たり前」ほどありがたいものはないのに、人間は当たり前になった瞬間、感謝を忘れる。トイレが4K(臭い、汚い、暗い、怖い)なのではなく、人間が4Kなのだ。

正月明けに観た映画『PERFECT DAYS』は渋谷区にある17の公衆トイレ「The Tokyo Toilet」が舞台。16組の多才なアーティストによる多彩な空間。アート作品でありながら、人が使う実用品である「利便性」、犯罪を予防する「安全性」、個人のプライバシーを保つ「密閉性」が求められる。昼と夜の両方で3つを発揮しないといけない。時間のアート。

この叡智と浪漫の祝福に触れるため、1日で17のトイレを巡る冒険に出た。17の才能が結集した【十七才の地図】を描く。令和六年1月17日、水曜日。土日の静かな街ではなく、多くの人がトイレを使う日常の喧騒の中でアートは躍動する。

映画で清掃員を演じた平山(役所広司)と同じく、お日様が起床する前の5時15分に起きる。のはずだったが寝坊。5時55分に慌てて用意。トイレに篭り、髭を剃り、シャワーを浴び、『百年の孤独』を数ページ読んで旅に出たのは6時45分。極暖ヒートテック、登山用品のミレーのハーフダウン、ネックウォーマー、手袋。役所広司と同じく朝ごはんにBOSSのカフェオレをコインランドリーの自販機で買う。

毎日コワーキングスペースで飲むコーヒーは苦めなので、久しぶりのカフェオレは甘すぎた。しかし、不思議と甘さが心地いい。包み込んでくれる。頭の中でアニマルズの『朝日のあたる家』が流れる。あの暗い歌が薄明かりの早朝に合う。2024年はいろんな発見がありそうだ。

物書きとして独立するとき、前職の同僚が門出にくれた自転車。北新宿の蜀江坂から都会を漕ぐ。最初に目指すのは幡ヶ谷。北新宿からは自転車で15分。

7時過ぎに都庁を通過。朝日があたる。今日は雲がひとつもない。この日を選んでよかった。新宿中央公園では20人くらいが太極拳をやっている。中国の方だろうか?こんな時間に都庁に来ることはないが、サラリーマンが多い。大都会の朝は忙しい。


七号通り公園トイレ/佐藤カズー

新しい世界が生まれてくるような卵。7時15分に到着した「七号通り公園トイレ」は2021年8月の完成。

佐藤可士和さんデザインのピクトグラムが旅の道標。

トイレは男性用と誰でもトイレのふたつ。「誰でもトイレ」というネーミングがいい。「多目的トイレ」や「ユニバーサル・トイレ」はピンとこない。以前は手で操作せず、音声認識で利用できた。残念ながら現在は使えなかった。

文章を習っている先生から、「アートは裏側も見ろ」と教わった。人間も背中で語るように、アートも背中に物語がある。七号通り公園トイレは夜にその真価を発揮するのだろう。

通り沿いからも見えるのも背中。

日が昇ってきた。旅で来光に出逢えると、はじまったばかりなのに勝利を確信する。不思議な力がある。

残念だったのは男性トイレの便器にガムが捨てられていたこと。トイレは99人が綺麗に使っても1人が汚せば「汚い場所」になってしまう。美の儚さ。しかし、それが人間と向き合うこと。スタートから心折れていたら意味がない。

幡ヶ谷公衆トイレ/マイルス・ペニントン

七号通り公園は幡ヶ谷二丁目、その隣の三丁目の朝日を目指す。信号を2つ越えた先に「幡ヶ谷公衆トイレ」はある。最初はトイレと気づかず通り過ぎた。公園内ではなく水道通りと中野通りのクロスロードにある。劇場ホールに来たような、プロジェクターでトイレシアターができる銀幕のような壁。

2023年2月の完成と新しい。3つのトイレを配置するトライアングルの設計。

清掃員を歓迎するピクトグラム。

裏から見ると、真ん中に隙間があり光が射し込む。光の入り口、希望の入り口。

ムラの美学が凝縮された床も温かさを感じる。デザインの不思議。

今回も残念ながらトイレにゴミがあった。スタートから2連続。悪意というより無関心なのだろう。悪気があるわけではなく他人が頭に入らない。コワーキングスペーで大きな声でしゃべる人間と同じ。周りが目に入らない。世界に自分しかない。それが人間の最大の弱さでもある。

笹塚緑道トイレ/小林純子

踏切を越えれば目の前、10分もかからずに次のアートがある。「笹塚緑道トイレ」はサラリーマンが行き交う笹塚駅前。スーパーマリオの世界に迷い込んだような鋼板のパネル。アートに触れながら出勤。こんな素晴らしい1日のスタートがあるだろうか。

後ろから見ると、2023年3月の完成とは思えない年輪。

壁のいたるところにウサギ。太田徹也氏が手がけたもの。円をどう組み合わせるか。シンプルに見えるデザインでも温もりが大きく変わる。

ピクトグラムにも白を施し、三日月の上に乗っている。

トイレなのにお月見。トイレにも季節がある。

金でも銀でもなく銅。色に順位なんてない。会社員時代、こんなトイレから出勤したかった。

西原一丁目公園トイレ/坂倉竹之助

線路と首都高は続くよ、どこまでも。世田谷道を10分ほど走らせると4番バッターの「西原一丁目公園トイレ」が住宅街に溶け込んでいる。ちょっと迷ってしまう場所。3つのトイレは男性女性の区別がなくジェンダーレス。

2020年8月の完成。後ろから見ると物置みたいだが夜にはガラス壁が光り、白い行燈になる。

トイレ=青と赤の概念を覆す緑のオアシス。礼儀正しいピクトグラム。トイレから「こんにちは」と挨拶されている気がする。

樹木のシルエット。トイレなのに森林浴をしているような、スタンドバイミーな空間。この近所には餃子で有名な中華料理屋さんがある。今度は夜に来よう。

代々木八幡公衆トイレ/伊東豊雄

次なる旅は『秒速5センチメートル』の舞台でもある代々木八幡。小学生の貴樹と明里が登下校した場所。踏切もある。てっきり代々木八幡宮の中にあると思って迷い込んだ。

2021年7月に完成した『代々木八幡公衆トイレ』は代々木八幡宮の入り口、思い切り山手通りに面している。ということは、2022年3月27日に『秒速5センチメートル』の舞台を巡ったとき使っていたかもしれない。

向かいのビルでは懸垂下降しながらの清掃員。クライマーの方だろうか。

男性用、女性用、誰でもトイレの個室3つ。女性用トイレは双子のキノコが並ぶ2室。ガラス窓の向こうから木漏れ日が差し込む。『PERFECT DAYS』では平山(役所広司)が○❌ゲームで交流し、代々木八幡のベンチでサンドウィッチを食べていた。

風の通り道、光の通り道。解放と密閉。この両立がトイレの真髄。

モザイク・タイルは土から雲へと昇っていくようなグラデーション。『秒速5センチメートル』の季節に、今度は夜に来よう。

はるのおがわコミュニティパークトレイ/坂茂

代々木八幡宮の向かいには代々木公園がある。井の頭通りを挟んであるのが「はるのおがわコミュニティパーク」。右から男性、女性、誰でもトイレ。色だけでなく、姿勢も美しい。

メジャーな代々木公園を目の前にし、この公園を訪れる人は少ない。

広々とした公園で、木漏れ日が空っぽも砂を温める。

2020年8月オープンと【十七才の地図】の中で歴史がある。鏡面の外壁は本来は透明で、人が入るとスモークになる。気温が低い冬は作動しない。人間みたいだ。人が魂を込めたものには魂が宿る。トイレも生きもの。

なんという瑞々しい空間。

ちょうど工事の方が点検中。透明のトイレを見るには「また夏に来てください」と言ってもらった。梅雨の前に来よう。

9時44分。雲ひとつない空の光は強さを増していた。ここからミレーの手袋を外した。

代々木深町小公園トイレ/坂茂

「はるのおがわコミュニティパークトレイ」から目と鼻の先。歩いて3分もかからない場所に「代々木深町小公園トイレ」が座っている。住所は富ヶ谷一丁目。「はるのおがわコミュニティパークトイレ」は代々木五丁目。オレンジ、ピンク、そしてカラー・パープル。どれもトイレの印象にない色彩のおもてなし。

「はるのおがわコミュニティパークトイレ」と同じ2020年8月5日オープン。色違いの双子トイレ。こちらは外国人の住民が多かった。代々木と富ヶ谷にも小さな国境線があるのだろう。

ベンチもカラフル。凛として爽風。

男性トイレはカラー・パープル。これほど高揚感のある色合いはない。【十七才の地図】で至高のカラー。綺麗に使って欲しい。

代々木深町小公園トイレも今度は夏、夜に訪れよう。

鍋島松濤公園トイレ/隈研吾

ここから一気に「渋谷」に近づく。再び山手通りを南下し、富ヶ谷の料金所を過ぎたあたりに「鍋島松濤公園トイレ」が待っていた。密集した住宅街の中で肩身が狭そうに佇む。"階段のあるトイレ"は珍しい。ほんの数メートルだが、小屋と小屋を逍遥する。

ヨーロッパ系の観光客が数人。映画『PERFECT DAYS』の影響なのかTokyo Toiletのプロジェクトを知っていたのか。

吉野杉に囲まれたトイレ。縄文時代を思わせる。トイレはタイムマシン。『PERFECT DAYS』では2番目に登場。役所広司が迷子の男の子を発見。

内装は桜や欅。ここまでなら子ども向けの平凡なトレイ。しかし、安全性も要求されるアートは一味違う。

やさしい木材に反した堅牢な扉。これがガルシア=マルケス『百年の孤独』のマコンドのような村、集落を形成しているように思わせる。一気に不思議な空間に変わる。異空間度が高い。

落ち着いた公園との対比がすごい。自分が平山(役所広司)で昼ごはんを食べるなら、鍋島松濤公園トイレだ。今度は夕暮れに来よう。

次なる街は恵比寿。The Tokyo Toiletは恵比寿に集中している。十七のうち4つもある。本当は恵比寿公園トイレが最寄りだが、渋谷で遭難。道玄坂を下る予定がセンター街やハチ公前に来てしまった。なぜだ?ルートが狂うのも冒険の醍醐味。美味しそうな飲食店の誘惑を振り切り、渋谷から恵比寿駅まで40分。山手線なら3分なのに。カップ麺が伸びてしまう。

恵比寿駅西口トイレ/佐藤可士和

ゑびす像が見守る恵比寿駅西口。トイレと気付かないほど街に溶け込み、かつ存在感を失わない不思議なCUBE。「恵比寿駅西口トイレ 」は2021年7月に完成。それから30回以上は恵比寿に来ているのに気づかなかった。トイレをアルミ製のルーパーが囲う。「ゑびす像」の存在感を消さない。街のなかのアートだからこそ、街との調和、セッションを考える。ジャズのような存在。

すべての個室に性別のボーダーラインがない。言葉で説明せずピクトグラムが語りかける。ここは国境線がない真っ白なキャンバスだよ、と。トイレに国境はない。

コの字型の通路は、ちょっとした冒険。壁なのに外から気配が見える。顔はわからないけど、確かに人がいる。存在感のグラデーション。

この柔らかい白を汚さない。白は何者にもなれてしまう色。汚す人ではなく、来たときより綺麗にしよう。11時29分、腹が減ってきた。

恵比寿公園トイレ/片山正通

地下に東京メトロ日比谷線が通る都道416号を進み、恵比寿南の交差点を右折すると「恵比寿公園トイレ」に出逢える。2020年8月完成。無機質な鉄筋コンクリートの壁がなぜか温かい。公園との調和、恵比寿との調和を考え抜いた末の質度。「無」の豊かさを教えてくれる。

木目をあしらったラグジュアリーな空間。姿勢を正してくれる。

トイレは入り口と出口が同じ。しかし同じであって同じではない。入ったときの自分と違う自分になって、再び日常に飛び出していく。トイレは『スーパーマン』の電話ボックス。

とびっきりの木漏れ日が待っていた。光が踊り子になっていた。

東三丁目公衆トイレ/田村奈穂

線路を越えて恵比寿駅の東側へ。線路を越えると、そこは別の国。未知の世界が待っている。2020年8月に完成した東三丁目公衆トイレは国鉄沿線にある。女性だから思い切れるのか、鮮烈な赤、斜めに切り出したエントランス。

何通りなのか分からない名もなき道。歩道は狭い。存在感がすごい。

隣には一つの切り株。なんなのか。このトイレは街をデザインする木こりなのかもしれない。

全景を撮りたくてタクシーが離れるのを待っていたが、トイレはみんなが使うもの。このほうが良いと思った。赤と黒。闘牛士のマントのような壁。

背後はコンクリート。ここも赤で統一してほしかったが、狙いがあるのだろうか。

ピクトグラムはルージュの伝言。

マティス展に来たような、不思議な無重力に包まれる。

床も赤だったら、どんなトイレだろう。流石にやり過ぎか。

見上げると、太陽の光を吸収した色にも見えた。

恵比寿東公園トイレ/槇文彦

恵比寿トイレの終着駅。さらば冬のかもめ。トイレが翼を広げている。

2020年7月完成の最古参。恵比寿は西と東に2つずつアートを配置。誰でもトイレの壁は鏡面。男性トイレにはベンチがある。『PERFECT DAYS』で最初に登場したトイレ。平山のテチトリーでもある。

防犯性を考え、広くした通路。ダンジョン感がある。

シルバーブルーのピクトグラムがやさしい。

凛々しい背中。シンプルな色合いだからこそ、夜はまるっきり印象が違うだろう。『蘇る金狼』のトイレ。

スピードを求めないカモメのジョナサンのような時間が流れていた。

ベンチでカップ麺を食べるサラリーマン。タコとカモメ。静かな時間が流れる。次の公園で昼ごはんにしよう。

広尾東公園トイレ/後智仁

広尾駅を出て目の前の並木を抜けて歌をうたって逢いにいく。パプリカ🎶

新宿から最も遠いトイレ。広尾に来ることは少ない。前前職で指を脱臼したとき慌てて病院に駆け込んだとき以来。そのときの先生の印象が良くなかったので、もう来ることはないと思っていた。脱臼した指は今も曲がったまま。このトイレも【十七才の地図】のうち一期一会。

2022年7月完成。スクリーンは79億通りのライトアップ。

昼は植栽の癒し。ひとつの空間に夜と昼がある。

実用はシンプルな壁の安心感。

トイレは2室。どちらも誰でもトイレ。バラバラなピクトグラムの配置がアート。

南向きの部屋。昼下がりの太陽が注がれる。

13時26分、スタートから7時間。ひと休み。木漏れ日と対話しながら、柔らかい時間を食べていた平山(役所広司)。柔らかさを壊したくない。なぜ昼ごはんがサンドイッチなのか、わかる気がした。

残りは4つ。南へ東へ漕いできたが、ここから北上。

神宮通公園トイレ/安藤忠雄

渋谷駅の近く、明治通り。これまでの閑静な住宅街とは桁違いの人、人、人。その圧力に負けない強さの宙船。

ピクトグラムまで屈強に思える。2020年9月完成。

縦格子の外壁。彫刻や建造のアートは裏側を見なければいけないが、神宮通公園トイレは非の打ち所がない。漆黒のUFO。

トイレが見守っているのか、見守られているのか。黒の物体が鮮やかな花々と見事に同棲している。

園内は桜の木。春になれば凄い人で彩られるだろう。

通行人が強烈な磁力に襲われるように次々と吸い込まれていく。巡ってきた空間で圧倒的に利用者が多い。渋谷のブラックホール。

そんなアートにもゴミを捨てる輩は後を絶たない。人間とはなんなのか?アートの力とは何なのか?幻滅してしまう。しかし、この素晴らしいアートを作ったのも人間。信じるしかない。

神宮前公衆トイレ/NIGO

渋谷の喧騒を抜けると新宿は眼の前。まだ3つあるのに、もう帰ってきた気分になる。2021年5月完成の神宮前公衆トイレ。あと2年早ければ。

帰ってきたと錯覚したのも当然。神宮一丁目の交差点。前前職、毎日この明治通りを自転車通勤した。角にあるdieselで服を買った。

平凡に見えるトイレの色がどれほど街と調和しているか、仕事の疲れを癒してくれるか。

トイレというより童話に出てくる家のような、ペントハウスにいるようなフォルム。

シンプルであるほど色んなものが詰まっている。

裏は普通。しかし、この普通こそがアート。このトイレに余計な装飾をしてはいけない。完璧な設計。

天井を見上げるとファンが廻っている。シティハンターの時代を思い出す温かさ。新宿と青山を往復する通勤、このトイレがあれば、どれほど豊かな時間になっただろう。

裏参道公衆トイレ/マーク・ニューソン

言の葉の庭。雨宿りがしたくなる銅葺きの屋根、淡い新緑。

新宿へ近づくほど、やさしい色になっていく。喧騒を癒す。

ピクトグラムは『君の名は。』の瀧と三葉。反対方向を向いているのに同じ場所に向かっている。そうやって世界はまわる。

次は梅雨の時期、夜に来よう。もう新宿は眼の前。

西参道公衆トイレ/藤本壮介

木漏れ日の冒険、フィナーレ。夕陽の向こうに都庁が見える。2023年3月完成。まだ1年未満のルーキー。

白亜の宮殿。

トイレというより巨大な浴槽。宙船。光の当たるトイレも美しいが、闇を吸収したトイレも美しいに違いない。

人が使わない背中のほうが綺麗だったりする。皮肉なもの。

夕陽のような光。

洗い場は流線型で外。川が流れるように陽が沈んでいく。これ以上、美を凝縮したトイレを他に知らない。新宿に帰ろう。

トイレットロール

東京はしゃべらない人と出逢うことが圧倒的に多い。新宿駅では毎日、数えきれない人が通り過ぎていく。あの人キレイだなと思っても二度と会うことはない。トイレは動かない。そこに居てくれる。自分の居場所を作ってくれる。

16時5分、帰宅。すぐにでも仕事をしないと生活が苦しいが、1時間ほど寝て新宿のコワーキーングスペースに向かった。仕事は他者から「頂く」もの。贈りものでありギフト。労働=つらいイメージだが、公共のトイレと同じ、何よりも感謝を教えてくれる。

17の才能による渋谷区のトイレと木漏れ日を巡る【十七才の地図】

走行時間:9時間40分
走行距離:不明
交通費:0円

不覚にも走行距離を測り忘れたけど構わない。The Tokyo Toiletは朝と昼と夜を抱擁する時間のアートだから。

渋谷区のThe Tokyo Toiletは人間の行動を写し出す巨大な鏡。見て楽しむ「絵画」であり、裏側からも見られる「彫刻」であり、自分が一体化できる「実用」でもある。

そこには4K(臭い、汚い、暗い、怖い)から新たな4K(キレイ、カッコいい、個性的、来たい)へ変える力があった。現時点では汚れているほうが多く、99人が綺麗に使っても1人が汚せば台無しになる。美は儚い。だからこそ、次は新宿が襷を継いでほしい。

アートは現実逃避ではなく、非日常を嗜むものでもない。アートを愛することは日常を愛すること。The Tokyo Toiletには当たり前のアートが当たり前に内実していた。

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