伯耆大山
令和二年1月10日、世界の始まりを告げる夜明けの向こうに伯耆大山が見えた。
この瞬間に出逢いたくて登山を続けている。
新宿からのバスに揺られ13時間。米子駅から大山寺に向かう始発バスの中に山容はあった。
独り鳥取の山にいる。そんな贅沢を噛み締めながら夏山登山道をアッパーカットのように縫っていく。
登山口に入る前、独りの女性に出会った。どうやら一緒に登りたいようだ。しかし冬の単独行に甘えは死。
自分のパートナーは自分しかいない
自分を救うために孤独はある
単独クライマーは恐怖を餌に山に登る
そんな言葉を自分に向かって繰り返し、女性を振り払う。。
伯耆大山と対話を始めるとそこは氷の世界。無の境地。本当の山の贅沢に突入しかけている。
山頂の小屋まで行くがゴールがわからず同じ場所を彷徨。iPhoneが寒さで死にかけている。
頂上から引き返し、行者ルートから大神山神社へ。
凛とした粉雪の世界。虚しく登り、満ちて帰る。これが自分の登山だ。
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