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BtoBこそクリエイティブ力が必要:デザイナー以外に求められるクリエイティブスキルとは?

“クリエイティブ”や”デザイン”という言葉がビジネスと並列で使われるようになり久しいですが、BtoBの業界ではまだまだ”クリエイティブ”や”デザイン”への意識は薄いと感じます。

営業は営業、マーケティングはマーケティング、と同じく、クリエイティブはあくまでデザイナーの仕事であり、自分は関係が無い、と考えている人も少なくないのではないでしょうか。BtoCでは顧客がダイレクトに生活者となるので、デザインやクリエイティブの領域が明確かと思います。

一方で、BtoBにおける顧客は企業となるため、デザインやクリエイティブとは何か、と問われても明確なイメージを持つことは難しいのも事実です。

また、BtoBはどこか真面目で固いイメージがあり、BtoCにおけるクリエイティブのイメージとは程遠く、「良い商品を作れば売れる」「高い技術を持っていることが大切」「強い営業組織が最も大切」という思考が強くなりがちであるという点も、クリエイティブ思考から距離を置いてしまっている1つの理由ではないでしょうか。

クリエイティブの重要性に気づいた旭硝子での経験

新卒で入社した会社が国内のBtoB企業の中でも最大手である旭硝子でした。旭硝子はグローバル市場において圧倒的な地位があり、技術力も極めて高い素晴らしい会社です。僕が配属された当時の花形事業はグローバルでNo.2のシェアを誇っておりNo.1の企業を追い越せ!とイケイケドンドンで僕自身もその空気に高揚していた感覚を覚えています。

ただ、入社した後に見た旭硝子の提供するプロダクトが顧客向けに制作したイメージビデオと、競合であるシェアNo.1の米国企業が提供するプロダクトのイメージビデオを見比べた時に、
「あ、マーケティングのレベルが全然違う…これはやばい。」
と新卒1年目ながらクリエイティブの圧倒的な差を感じてしまいました。

旭硝子のビデオでは、商品の強みや性能を丁寧に羅列して表現していたのに対し、競合のビデオは、その製品が生活のあらゆるシーンに導入されている未来の僕らの生活をリッチなCGと共に描いており、見る側がとてもワクワクする内容でした。当時の僕には、この差がビジネスの何に影響を及ぼしているのかの見当もつきませんでしたが、BtoBのマーケティングはやばい、という直感に従い旭硝子を退職する決断のきっかけになりました。

数年たった今、当時の僕のイメージとは一転、高橋一生さんをクリエイティブの主軸においた社名変更のリブランディング施策がオンラインからオフラインまで幅広く実施されています。

このCMを初めて時、(とても勝手ながら)マーケティングやクリエイティブに対しての方針を大きく切り替えたのかな、と思い感銘を受けました。

AGCのリブランディング施策の軸を推測するに、
・顧客ポートフォリオがよりグローバル化し、「旭硝子」という旧来の社名ではグローバルブランドとしてのイメージを維持しづらくなった
・グローバルでの人材強化を図る上で、「旭硝子」という日本特有の社名では良い人材の確保拡大に課題が生じた
・機能面や顧客との関係性だけでは競合との差別化を図ることが難しくなってきた

あたりの課題解決かと僕は思っています。

かなりの予算を投下しているはずですが、あの施策を通して間違いなく「AGC」という社名の認知は向上したはずですし、取引先や未来の顧客や従業員の方にとっても誇らしい企業になったのではないでしょうか。

BtoBにおける”クリエイティブ”や”デザイン”とは何か?

BtoBにおける従来の”クリエイティブ”や”デザイン”の定義とは、

プロダクトデザイン:プロダクトそのものデザインやUI設計、およびそれを支えるUX設計
広告クリエイティブ:プロダクトを訴求する為の広告施策におけるクリエイティブそのもの

の2つに大別されています。
プロダクトデザインはUI/UXデザイナーの領域であり、広告クリエイティブはマーケティング部やクリエイティブディレクターの領域と定義されており、その他の営業、エンジニア、CSMなどの職域とは切り離されて考えがちです。

しかしながら、BtoBが直面する市場や顧客の変化に鑑みると、”クリエイティブ”や”デザイン”は上記のような狭義の定義ではなく、プロダクトに繋がる為の認知や営業現場、体験後の顧客サポートも含めた周辺体験まで含めた事業全体で考えるべきことだと僕は考えています。

例えば、どれだけプロダクトが素晴らしくても、営業資料がコテコテで読みづらかったり、社員の振る舞いが良くなかったりすれば、顧客からするとネガティブな印象を持ってしまいます。

要は、プロダクトそのものではなく、顧客が目にするであろうプロダクトに関わる全てのモノやヒトは等しく同じ水準の基にデザインされている必要があります。

顧客はプロダクトそのものでなく、周辺価値すべてを加味して購入している

BtoBにおいて、機能差分だけで他社を圧倒することは極めて難しくなってきています。数値化できない定性的な認識の積み上げが、情緒差分に繋がり、結果的に競合優位となり得ます。

例えば、
・よく噂を耳にする
・イケてる雰囲気の会社
・営業が全員スマート
・提案資料がかっこいい

言葉にすると平易ですが、BtoBにおいてもこのような感覚は顧客に影響を与える重要な因子になりますし、検討フェーズにおいて比較材料となります。

クリエイティブを強化する為の最初のチェックリスト

・プロダクト組織全体が提供すべきコアバリューを理解しているか?
・コアバリューを体現するメッセージやロゴ等のビジュアルイメージは統一されているか?
・メッセージやイメージに沿った営業資料、ランディングページになっているか?
・フォントや使用する素材は統一されているか?
・社員の振る舞いやリテラシーはコアバリューを体現できているか?

上記のチェックリストの通り、
全ての原点となるバリューがデザインにより具現化されていて、
それが各メンバーに落ちていて、
事業全体が発信する全てのアウトプットが上記考えのもとに統一されている

ことが徹底されていれば、事業全体の”クリエイティブ”力は向上するはずです。

「くだらない」「お金にならない」と思われがちな領域ですが、一方で”クリエイティブ”や”デザイン”の思考が薄い企業は今後衰退していくことは間違いないと僕は思います。

事業を強く支える基盤が”クリエイティブ”ですので、今一度、上記チェックリストに従って自身の事業の”クリエイティブ”に向き合ってみてはいかがでしょうか。

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