大和

芳香療法のセラピストとして、東京都内を中心にレッスン・ワークショップを行なっています。 心の内の言葉で表現出来ないことや、表現出来ない理由になっていることを和らげていけたらと思っています。 精油やハーブ、植物や動物が好きです。

大和

芳香療法のセラピストとして、東京都内を中心にレッスン・ワークショップを行なっています。 心の内の言葉で表現出来ないことや、表現出来ない理由になっていることを和らげていけたらと思っています。 精油やハーブ、植物や動物が好きです。

マガジン

  • 張り込みにはパンと牛乳を

    ベテラン刑事・木下和宏と若手刑事・丸山聖也の2人の現場には、いつも差し入れが届くのだが…

  • 役割り

    世界には60億という人間がいて、 この先未来がどう変わるかなんて 見当もつかないし、 自分が残したものが 生き続けるかなんて無いかもしれないけど、 今の自分が観える世界を 今ここに生きている人たちと 少しでも共有出来たら嬉しい。

最近の記事

「張り込みにはパンと牛乳をSecond⑦」

〜前回までのあらすじ〜 ベテラン刑事の「和さん」こと「木下和宏」は若手刑事の「丸山聖也」とコンビを組み、日夜、張り込み現場で事件の容疑者となる人物を見張っていた。そこに差し入れを持って度々現れる過保護な聖也の母「丸山玲子」。玲子は和宏、そして現在は銀座のクラブでママを務める「さつき」と大学時代に苦楽を共にした中であり、また、聖也の父「ディーン・マッケイ」、和宏の前妻「高山つかさ」も同じような関係性であった。 普段は、張り込み現場特有の生温かい空気感を出して、実力を隠してい

    • 「張り込みにはパンと牛乳をSecond⑥」

      〜前回までのあらすじ〜 ベテラン刑事の「和さん」こと「木下和宏」は若手刑事の「丸山聖也」とコンビを組み、日夜、張り込み現場で事件の容疑者となる人物を見張っていた。そこに差し入れを持って度々現れる過保護な聖也の母「丸山玲子」。玲子は和宏、そして現在は銀座のクラブでママを務める「さつき」と大学時代に苦楽を共にした仲であり、また、聖也の父「ディーン・マッケイ」、和宏の前妻「高山つかさ」も同じような関係性であった。 普段は、張り込み現場特有の生温かい空気感を出して、実力を隠してい

      • 「張り込みにはパンと牛乳をSecond⑤

        「やはり、次のターゲットは日本だったのか・・・」 元・夫のディーンがそう言った。 有楽町駅付近で爆発音が鳴る事件が起き、「和さん」こと木下和宏と、息子の丸山聖也は現場に向かったが、新たに国会議事堂・首相官邸の方で事件が起きるかもしれないと、日本に国際事件の情報取集に来ていたディーンがそう言っている。 「どういうこと?ターゲットが日本って、あなたの追いかけている事件は一体何なの?」 ディーンが簡単に追いかけている事件の内容を口外しないことは分かっていたのだが、自分の身の危

        • 「張り込みにはパンと牛乳をSecond④」

          「和宏のこと、玲子はどう思っている?私はね、今は一緒にいなくてもいいから、お互い好きなことをして、良い経験も苦い思いもたくさんして、歳をとって、お互い時間ができた頃にゆっくり一緒に過ごせたらいいなって思っているの。 きっと、これからお互い知らない間に何かを背負ってしまうと思うし、お互いのその責任のような重荷のようなものが、相手を縛ってしまうこともあるでしょ。 和宏の意志の強さやバランス感覚は、きっと、人が絶望の淵から落ちないよう、人を希望に導くためのものだから、多くの人のため

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        • 張り込みにはパンと牛乳を
          17本
        • 役割り
          4本

        記事

          「張り込みにはパンと牛乳をSecond ③」

          「おい、何で居るんだ、何しているんだこんなところで!?」 東京駅で降りる人たちの、疲労感と安堵感が広がる車両の中で、息子の『丸山聖也』が緊張感を生み出した。     一瞬の緊張感によって、静止した世界とも感じられる思考停止の間(はざま)が生み出された。 人はその思考停止の間の中で、膨大な選択肢から何を選ぶべきか判断に迷い、その選択を人に委ねてしまう事がある。この間に言葉を発したり沈黙を破る行動が出来る人は、きっとこの間が生み出す影響の先を見通していたり、強い意志を持った人

          「張り込みにはパンと牛乳をSecond ③」

          「張り込みにはパンと牛乳をSecond②」 

          「お2人に会えで良かったッス!色々と話を聞いでくれで、ありがとうございました!!」 エスカレーターで上がったホームの方から、聞いたことのある仙台訛り若い男性の声がする。 その先には息子の「丸山聖也」と「和さんこと木下和宏」らしき男性が2人、新幹線の車両の中から手を振っている。 「あら〜、このタイミングだったのね。ちょっとまずいから、あなたは向こう側から乗ってくれない。しばらく東京に居るんでしょ。また連絡して」 「明後日の夕方の便で帰る予定だが、また連絡するよ。僕は聖也

          「張り込みにはパンと牛乳をSecond②」 

          「張り込みにはパンと牛乳をSecond①」

          「やあ、遅れてしまってすまないね」 待ち合わせの時刻より、少し遅れてあの人は現れた。久しぶりに足を踏み入れたこの土地は、あの人にとっても嫌な思い出ばかりのように思う。それでも、この日にここを訪れることは、私たち2人にとって必要な時間であり、これからもこの鎖のような縁が切れることはないと思う。 「ええ、いいの。あなたが遅れるのはいつもことだから」 再会を喜ぶこともなく、私たちはタクシーに乗って目的地へと向かった。本当はこれまでのこと、今のこと、懐かしい顔を見ながらたわいも

          「張り込みにはパンと牛乳をSecond①」

          「張り込みにはパンと牛乳を⑩」

          仙台駅午後8時20分東京行きの新幹線車内。 「お、加藤君、一体どうしたんだい?」 ベテラン刑事の和さんが、眉間に皺を寄せ、少しかすれた声でそう言った。 話は数分前に遡る。 新幹線を待つ仙台駅のホームにて、乗車しようと待っていた和さんと私の前に、母・丸山玲子からの差し入れを持って現れた仙台県警所属の加藤小次郎警部補は、巻き添えを喰ったような形で新幹線に乗車してしまった。 「いや〜、丸山警部にやられたっスよ。何で乗ってしまったんだが。あ〜ぁ」 加藤警部補はオロオロしな

          「張り込みにはパンと牛乳を⑩」

          「張り込みにはパンと牛乳を⑨」

          午後8時20分の「やまびこ72号東京行き」を待つ仙台駅のホーム。 「世の中には自分のことを知っている奴と、知らない奴がいる」 ベテラン刑事の和さんが、少しかすれた声で、いつもよりも饒舌にそう言った。 「自分の本音よりも目の前の見えることや他人の受け売りで幸せや不幸を判断するとはよくあることだ。 俺は別にそれに文句があるってわけじゃない。 ただ、世間の中の正しいという常識や思い込みが自分を動かし、大衆の幸福論の中で自分を上げたり下げたりして生きていることしたら…。 そんな

          「張り込みにはパンと牛乳を⑨」

          「張り込みにはパンと牛乳を⑧」

          午後3時の南青山。 私に襲いかかってきた男を所轄の警官に預け、和さんと私は青山通りを一本入った路地裏にある喫茶店に入ったのだが、そこにはなんと「母・丸山玲子」と和さんの元奥さん「高山つかさ」が奥の席に座っていた。 「あら、和ちゃん。あ、聖ちゃんも」 「あら聖也くん、大きくなったわね。元気そうで。あら和宏さん、あなたはいつもと変わらず冴えないのね」 二人に声をかけられた和さんと私の間に、さっきの出来事よりも胸を圧迫されるような緊張が走った。 「つかささん、ご無沙汰して

          「張り込みにはパンと牛乳を⑧」

          「張り込みにはパンと牛乳を⑦」

          午後1時の南青山・青山通り。 春の陽気に移り変わったものの、首筋をなぞる風がまだ冷んやりとしている。街には卒業式を終えた袴姿の女性が目立っている。ここ数年は式典や催しを自粛する企業・団体が多く、学校行事も例外ではなかった。そのせいか、この瞬間を迎えられることに感慨深く、複雑な感情が溢れている人たちが多いように見えた。 「この日のために努力したのか、努力したからこの日があるのか、どっちなんだろうな…」 ベテラン刑事の和さんが、少しかすれた声でそう言った。 「そうですね、ま

          「張り込みにはパンと牛乳を⑦」

          「張り込みにはパンと牛乳を⑥」

          午後11時の銀座8丁目。 高級店が賑わう昼間の華やかさとは違い、この時間は黒塗りの車や、街角に立つ屈強そうなスーツ姿の男性、そして着物やドレスを身に纏った女性が目立ち、重苦しいが煌びやかな世界を演出している。ここ数年の不況の影響を受け、昼間は以前のような旅行客で賑わうことは少なくなったが、その分、夜の顔が大きくなったように感じる。芸能人やテレビ関係者、そして政治家や大手企業の重役たちが、たまたま居合わせたのを装い密談を交わす。その姿を追いかけて記者たちが今日も銀座の街をウロ

          「張り込みにはパンと牛乳を⑥」

          「張り込みにはパンと牛乳を⑤」

          午後7時の井の頭恩賜公園。 吉祥寺は中央線沿い屈指の人気スポットであり、住みたい街ランキングでは常に上位に入っている。実際、駅の北側にはサンロード商店街と大型電気店が賑わいを見せ、西に伸びるダイア街、中道通りと東急百貨店裏にひしめく雑貨店がある。そして駅の南側一体は井の頭公園を中心に緩やかな雰囲気を醸し出す癒しのスポットでもあり、週末はカップルや家族連れが目立つが、この吉祥寺周辺は緑も多くベッドタウンとしても人気があるので平日でも人通りは多い。 「相変わらずこの街は活気が

          「張り込みにはパンと牛乳を⑤」

          「張り込みにはパンと牛乳を④」

          午後6時のお台場海浜公園。 レインボーブリッジを「ゆりかもめ」に乗って渡ってきたと思われる学生や、デートを楽しむ数組の男女が波打ち際に押し寄せる小さな波に戯れている。砂浜では鴎の群れに幼い子供が近寄っては飛び立つというのを繰り返している。 「お台場も昔と比べたら訪れる人が減ったな」 ベテラン刑事の和さんが、少しかすれた声でそう言った。 「そう言えば、確かにそうですね。小さい頃は母に連れられてお台場によく遊びに来ていましたが、あの頃に比べると何だか物足りなさを感じます。

          「張り込みにはパンと牛乳を④」

          「張り込みにはパンと牛乳を③」

          午前9時の新宿御苑。 爽やかな鳥たちの囀りと、御苑を散歩する老若男女のほのぼのした会話が聞こえてくる。 眠らない街・新宿と言われる繁華街の近くにありながら、新宿御苑は心地良い空間を作り出している。だが、待ち合わせの時間に30分遅れていることで、和さんの機嫌を損ねないか心配で気が気では無い。 「和さん、すみません、目覚まし時計がなぜか鳴らなくて…」 ベンチに腰掛ける和さんらしき中年の男性は、カーキの帽子に錆びれたコートに身を包み、遠くにいてもいかにも刑事という風合いを醸

          「張り込みにはパンと牛乳を③」

          「張り込みにはパンと牛乳を②」

          午前2時の代官山。 近くでアパレルブランドの展示会があったらしく、業界を騒がす著名人や芸能人・モデルらしき若い男女が集まったせいか、この時間でも楽しそうな話し声が街に響いている。 「代官山はいつも賑やかだな」 ベテラン刑事の和さんが、少しかすれた声でそう言った。 「やれやれ、同世代とは言え、あんな奇抜なファッションが出来るなんて、ほんと感心しますよ。和さんの娘さんも大学を卒業したら、アパレル関係の仕事に就くんでしたっけ?」 和さんこと「木下和宏」には、別れた奥さんと

          「張り込みにはパンと牛乳を②」