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映画レビュー「PERFECT DAYS」

ビム・ベンダース監督といえば「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」。
大学時代に人気のあった監督の一人。

いつの間にか彼は日本人になっていた。
日本の繊細な季節感や日本人らしい感情、立ち振る舞いを見事に描く。
僕らにとって当たり前な日常が海外からすれば違和感に感じることも多い。
それをさらりとごく普通に映す。
ビム・ベンダースは日本人なんだ・・・。
そう思ってしまった。

本作は2023年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で、
役所広司が主演男優賞を獲得した作品。
話題性がある作品が昨年末に公開。
もっと早い公開でもいいと思うが、映画界ならではの事情もあるのか。

素晴らしい映画はいくつかに分類される。
観る者に考えさせる余裕がある映画がその一つ。
緊張しっぱなしの畳みかける作品もいいが、
本作のように静かに時間が流れ、映画と自分を溶け込ませる作品もいい。

描かれるのは平凡な日常。
何もなければ何もない。
いつも通り起きて、仕事に出掛け、風呂に入り、酒を飲み、本を読んで寝る。
規則正しく毎日が過ぎていく。

人によってはつまらない毎日かもしれない。
人によってはかけがえのない毎日かもしれない。
平凡の捉え方で日常のありがたさは変わる。

いや、経験や年齢によっても違うのかもしれない。
これが若者であれば、もっとチャレンジしろ!とか、
出会いを見つけよ!とか、発破をかけるだろう。

しかし、多くの経験を経た者にとっては、そんな発破は必要なく、
ただ忠実に自分に向き合い他人の邪魔をせず生きていくだけ。
人の眼も気にしない。
それだけで十分な価値はある。

果たして僕はそんな生き方ができるだろうか。
映画と共に歩みながら、何が幸せか?とふと考える。
それが考えさせる余裕のある映画。

ここでようやく理解できた。
なぜ、本作が年末の公開なのか。
年末年始にこれからの生き方をじっくりと考えさせたかったのだ。
なるほど!
(勝手な解釈です・・・)
観てない方は、今年の年始は長いので是非!

本作には東京都内の公共トイレがあちこちと登場する。
古臭いイメージはなく、どれもオシャレなデザイナーズトイレ。
(そんな表現はないか)
その施設も一見の価値ありだが、僕らはもっと環境に感謝しなきゃいけない。
そんなことも感じさせてくれた。

映画コラムニストとして2024年最初のブログ。
ブログの内容はともかく一本目としては相応しい作品。
僕の映画仲間の評価もすこぶる高い。
2023年1位の声も多かった。

自分にとっての「PERFECT DAYS」。
目指していきたいね。

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