大学院に進学してよかったこと
以前よりちらほら「就活か院進か迷っている」という趣旨の相談を受けることが多くなりました.すこし時期としては遅いのですが,大学院に進学すべきか?を考えていこうと思います.あくまで情報系の話であり,筆者の主観を大いに含んでいることはご了承の上で読んでいただけたらと思います.
この記事を読んでわかること
・大学院に進学するとなにができるのか
・院進するメリット・デメリット
・院進をおすすめできる人
大学院とは
大学院は,一言で言えば「研究する場所」です.(当たり前だろって感じると思いますが.)研究とは,wikipediaによると,
ある特定の物事について、人間の知識を集めて考察し、実験、観察、調査などを通して調べて、その物事についての事実を深く追求する一連の過程のことである。研究:Wikipediaより
と述べられています.
つまり,大学院で求められることをゆる〜い(?)口調で言うと,「これまで学部で学んだことを武器に,何か新しいもん考えてね.あ,なんでそれが使えるのかもちゃんと証明してね.」となります.
学部との違い
このように大学院では新しいものの産出が求められます.そのため学部とは知的活動の性質が変わってきます.
ひとつに,前にする問題の答えの有無です.学部の勉強のような「答えがある問題の探求」から,大学院ではそれが「答えがあるかわからない問題の探求」「問題にすらなってないものを問題として提起する」に変わります.
もうひとつは研究発表です.学部に比べて,自らの研究について発表する機会が多くなります.週一ペースで研究の進捗を指導教員やゼミ生にむけ発表し,研究科の講義で他の専門の人にも伝わるよう自らの研究を発表し,場合によっては学会で発表し,就活の面接でも研究について話し...といった具合です.
普段の生活の変化
これは人によるので,私の話をしようと思います.
・人間関係が狭くなる
研究は時間がかかることなので,普段は日中ラボにこもりっきりな生活になりがちです.交友関係も研究室の人たちが中心になります.意識して研究室の外に行かないと交友関係が狭くなっていきます.
・研究のことが常に頭の片隅に残る
ふとした日常で研究のことが頭に浮かぶことが増えました.「あの実験だめだったらどーしよーかな」「あの論文どうやったら実装できんだろ」ということがふと自炊してる時やお風呂に入っている時などに頭に浮かんでくるようになってしまいました.それくらい,研究について考えることが増えていきます.
・自立が重要に
研究は誰にやれなど言われず,2年の時間を自分で好きに使って取り組むことになります.2年という長い時間を有効活用するためには計画を立て,それに沿って行動することが重要になります.何もせず日常にただ流され...という生活をしていると,あっという間に何も残せずに時間を潰してしまいます.
大学院進学のメリット・デメリット
結局,そんな大学院に行くと何がいいのかをまとめてみる.
・メリット
自分の「専門」を持てる
これがやはり一番かなと.自分の専門を活かせる場ならそれがむしろ必要条件にもなり,そうでなくても「自分が周囲の誰よりも詳しい何かがあること」を持っている人は相当強い人材だと言えるでしょう.私が進学して一番よかったと思っていることのひとつです.根拠のない自信として相当強いものとなります.
仕事力がつく
仕事力という抽象的な表現を使ってしまいましたが・・・
・新規性のために研究を探す(サーベイ)→市場調査・解決法の調査
・研究のリサーチクエスチョンを発見→起きている課題に対し,問題設定する力
・研究計画の遂行→物事を計画立てて進める力
・研究発表→背景知識がない人にわかりやすく完結に伝える文章力・デザイン力・話し方
研究をやっていく過程で,このような社会に出てからも役に立つメタスキルを身に着けることができると考えています.
手を動かすので就活で受けがいい(ただしエンジニア系に限る?)
情報系の研究はプログラミングをどこかしらで用いることとなります.研究を頑張っていればおのずとプログラミング量も増えます.そうした経験は少なくともITエンジニア系の企業では受けがよかったです.(ただ,研究は無意味,WEBサービス作れっていうスタンスの企業も多いので,全体に言えることではないかも)
同じ研究をしている学外の知り合いが増える
学会に顔を出し続けていると,他大学の学生から「面白そうな研究だね!僕も〇〇の研究やってるんだ!」と声をかけられ,知り合いとなることがあります.研究の知見を共有したり,研究の苦難を分かち合ったり,違う研究室の内情などを知れて楽しいです.また,学会には企業の研究者の方がいらっしゃることもあり,お話することができます.
・デメリット
時間と金
大学院に進学すると,2年間さらに大学に対しお金を注ぎ込まなければいけなくなります.(奨学金などもありますが・・・)
また,さっさと働いてスキルを身につけたい,という人は研究している時間が足かせにしかならないと思います.
進学先に気をつけないと行けない
進学する先が自分に合わない研究室だと,地獄の2年間を送ることになります.進学する意志が少しでもあるなら,進学先の研究室が自分にとって研究をするのにいい場所なのかどうか見極めたほうが良いです.
就職希望先が研究と全くの専門外の場合,有利にはならない
文系就職などをする場合です.不利になるとまでは言いませんが,多くの場合,大学院進学自体がメリットになることはほぼないと考えています.(そのうような企業では学部卒と院卒で給与が変わらない場合もあります.)
結局どんな人に大学院進学をおすすめできるのか
意欲に関する側面(Will)と知識・技能に関する側面(Skill)で分けると,
Will
・研究したい人,研究を仕事にしたい
・学部で勉強した知識を武器に新しい課題発見・解決をしたい
・自分の専門や業績を作りたい人,自信をつけたい
・好きな学問分野があり,それをさらに知りたい・極めたい
Skill
・研究の遂行に必要な関連知識を持っている
・そこそこ英語ができる(論文は基本英語のものを読むため)
となってくるかな,と思います.
終わりに
私自身,B3の終わり頃には就活か院進かでかなり迷っていました.
そんな中で院進を決めた理由は,就活を始める時期になった時,自分の強みや学生時代に力をいれたことを聞かれて何も答えられず,この状態で就職することに強い不安を感じたことが大きいです.
それよりも,当時はまりつつあった音楽情報処理という研究分野に対し,「この分野のプロです」と自信を持って言えるようにして,自分の自信の糧とする方が自分にとって有意義な道だと感じました.
結果院進して,「音楽情報処理の研究に力をいれました」と胸を張って言えるようになったし,スキルも身についたし,その他の成果物や実績も増えて,今のところは院進してよかったと思っています.
もちろん全ての人が院進して幸せになれるとは限りません.院進しても研究が苦痛で病んでしまう人もいるし,むしろ世の中の大多数は学部卒の人なので,社会に出てから話が通じない場面が増えることもあるかもしれません.
本記事を読んだ方が「いま自分がこういう人間で」「何をやりたくて」「どんな道を歩んで行きたいのか」を自問自答し,自分にとって一番良い道を選ぶことを祈っています.
参考になれば幸いです.それでは.