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最近、スポーツのデジタル活用が加速化している件について

このnoteは、普段ニュース記事を見ていて、気になったもの、疑問に思ったものなどをピックアップし、その内容についての“自分なりの考え”を皆さんにお伝えしていくものです。そのため、発言は個人の見解であって、所属組織を代表するものではありません。あらかじめ、ご理解ください。

今週のnoteは、熱狂の中閉幕したカタールW杯でも話題になった「スポーツとテクノロジー」について、掘り下げていこうと思います。

W杯では、円滑な試合展開の実現のため、8年前にはゴールラインテクノロジー、4年前にはVARと、機械を用いた判定制度が導入されてきました。そして、今大会では「半自動オフサイドテクノロジー」が新たに導入されています。

サッカーを始め、過去さまざまなスポーツは、人の「感覚」でルールが適用されるか否かが判断されたり、試合環境の調整が行われたりしてきました。しかし、昨今はうまくテクノロジーと融合を行い、共に新しいステージに向かっています。

とはいえ、スポーツの“理想的な形”を追い求め、ルールを厳密に運用することで、突然のアクシデントや人による判断の揺らぎによる“ドラマ性”が少なくなることも考えられます。

今後私たちは、どのようにスポーツの魅力と向き合い、楽しんでいくべきなのでしょうか。背景をもとに、自分なりの考えをお伝えしていきたいと思います。

W杯で導入された新しいテクノロジー


カタールW杯ではビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)において新しく導入された「半自動オフサイド技術」の正確さに注目が集まりました。

公式発表によると、カタールW杯では、スタジアムの屋根の下に設置された12台の専用トラッキングカメラが、ボールと個々の選手の「最大29のデータポイント」を1秒間に50回追跡し、ピッチ上の正確な位置を計算。収集された29のデータポイントには、オフサイド判定に関連するすべての情報が含まれているそうです。

この新技術には、ボールにも“秘密”があります。公式試合球である「アル・リフラ」には、内部に慣性計測装置(IMU)センサーが搭載されており、3次元の慣性運動、並進運動、回転運動を検出できます。また「アル・リフラ」は、観客席の最前列前の外周に張り巡らせたアンテナとの連動で、ボールがラインを割ったか否かなどの判断を、数ミリ単位で測定することが可能です。

それらのトラッキングデータを組み合わせ、さらにAI(人工知能)を応用することで、ビデオ・オペレーションルーム内に自動的にオフサイドの警告が通知。最終的に、レフェリーが判定を確認した後には、位置データを用いた3Dアニメーションがスタジアムの巨大スクリーンやテレビ画面などに映し出され、正確な情報が提供されるとのこと。

1次リーグE組最終戦、日本 - スペイン戦での決勝ゴールにつながった「ゴールがラインを出たように見えた場面」でも、この技術が大いに生かされていましたね。改めて考えると、目を見張るような技術革新です。

なお、オフサイドの判定タイミングは一瞬なため、過去には度々、“誤審”が起こり得てきました。そのため、このような新しいテクノロジーを利用した技術には、世界中から歓迎する声が多く挙がっています。個人的にも、よりスポーツとしての本質に近くなりつつあると感じています。

テクノロジーが支える世界最高峰自動車レース「F1」


このように、アナログスポーツは、公平なルールのもとで行われるよう「デジタル化」に向けて日々進化を遂げてきました。

その中でも個人的に、モータースポーツの世界選手権の一つである「F1」は、特にテクノロジーを惜しみなく活用しているスポーツだと感じています。

「F1」は、マシンやレーサーを支えるため、最先端技術をふんだんに利用することはもちろん、世界中のファンに向けても新しい技術を取り入れ、レースの視聴体験の向上に力を入れていると感じられます。

例えば数年前から導入されたシステムの「タイヤ・パフォーマンス・グラフィック」。これは、タイヤのすり減り具合を可視化させ、そのデータを中継画面に表示させるものです。ファンはレースの展開が今後どのように変化するかなどについて、従来に比べてより楽しむことができるようになりました。

このようなテクノロジーを利用したサービスは、ルールを知らずに観戦をするユーザーに対しても、快適な演出になることでしょう。オリンピックで注目を集めた競技、フェンシングも、AIや4Kカメラを駆使し、新たな価値を生み出していたことが記憶に新しいですね。

テクノロジーのおかげで、ルールが厳密化し、試合は公正化され、ユーザー側も快適に観戦できる。ただその一方で、観戦者として気になるポイントも出てくるのかなと思っています。

スポーツに運要素やアクシデントは必要なのか否か


それは、テクノロジーのおかげでルールが厳密に運用できるようになることで、逆に「面白さ」も減ってしまうのではないか、という課題です。

個人的に、特に印象に残っている事例があります。それは、2021年末に行われたF1の「アブダビGP最終戦」のこと。この一件は、年間タイトルの行方を大きく左右してしまうほど、物議を醸すこととなりました。

F1は年間を通して22レースを行い、それぞれのレースごとの獲得ポイント合算値の多さで年間タイトルが決定します。2021年は、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)と、ルイス・ハミルトン(メルセデス)が熾烈に争い続け、その行方は最終戦にまでもつれ込みました。白熱した最終戦、レースが残り5週となったところで、事件が起こります。レースディレクターのある判断により、年間タイトルの行方が左右されてしまうのでした。

↑詳細は上記の記事を参照ください。

残り5周の波乱の展開を制したマックス・フェルスタッペンが年間タイトルを獲得したわけですが、この一件でタイトルを逃すこととなったメルセデス陣営はレース終了後にすぐさま抗議をしたものの、FIA(国際自動車連盟)は「レースディレクターが自由に決める権限がある」として、メルセデス陣営の訴えを棄却しています(https://www.as-web.jp/f1/770717?all より参照)。
しかしその後、FIAが調査を進めた結果、この一件は“「人為的ミス」によって引き起こされた”と結論が出されたのでした

周回遅れの車かどうかを判断するのは、これまで当たり前のように人によって行われてきました。しかしその結果、今回のような事態が引き起こされることにつながっています。そんな今回のケースを重く受け止めたFIAは、2022年のF1シーズンから、周回遅れを解除する必要のある車のリストを自動化するため、新しいソフトウェアを開発していることを発表。信頼性の向上を図ることを約束したのです。

複雑なルール下で、人が瞬間的な判断を行うことはとても難しいことです。ただ仮に、このレースでテクノロジーを利用した判断を行い、アナウンスが出されていれば、結果は全く変わっていた可能性があります。

つまり、言い換えれば「人の判断」により、今後も語り継がれる一戦となったこともまた事実なのです。

テクノロジーが発達することで、よりスポーツとしての本質に近づくかもしれない。けれど、アクシンデントがなくなることにより、ファン目線での面白さも半減してしまうかもしれない。これは、スポーツのデジタル化が今後進んでいくことで、一つの論点になりそうだと感じています。

「スポーツのあるべき姿」とは?


個人的には、平等と公正のもとに選手が競い合うという点が、スポーツの最大の魅力であると考えています。とはいえ、運による勝負も、スポーツの面白さの一つ。皆さんが思うスポーツのあるべき姿は、どんな形でしょうか。

ちなみに、デジタル技術だけを利用したスポーツである「eスポーツ」は、ルールが厳格に運用され、アクシデントも起こることがなく、実力のみの勝負になります(仮にアクシデントが起こったとしても、“公平なアクシデント”しか起こり得ません)。例えば「グランツーリスモ」シリーズでは、後ろを走っている車に故意に衝突された場合、プレイヤーが運転する車は透明になって抜けていったりします。

今回のnoteでご紹介した通り、これから先は、よりスポーツにテクノロジーが取り入れられ、進化をし続けていくのだと考えられます。ただ、どんな進化を遂げたとしても、スポーツが与えてくれる感動は、私たちの生活を豊かにしてくれることに変わりはないでしょう。

これからもスポーツコンテンツがどう進化していくのか、個人的にさまざまな取り組みに注目をしていこうと思っています。

なお、このnoteでは、普段ニュース記事を見ていて、気になったもの、疑問に思ったものなどをピックアップし、その内容についての“自分なりの考え”を皆さんにお伝えしていきたいと思います。ぜひ、次回の更新もチェックしてみてください。

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