経営革新計画の要件が変更~経営革新計画とは~
中小企業診断士の山田盛史です。
中小企業経営者の皆さんは経営革新計画という中小企業支援制度をご存知でしょうか。
この度、経営革新計画の要件が変更になりました。
そこで今回は、新しい要件を踏まえて経営革新計画について解説します。
経営革新計画とは
経営革新計画は、中小企業が「新事業活動」に取り組み「経営の相当程度の向上」を図ることを目的に策定する中期的な経営計画書です。
計画書を策定して都道府県に計画が承認されると様々な支援策の対象になります。
経営革新計画は「新事業活動」と「経営の相当程度の向上」という2点を意識して経営計画書を作る必要があります。
それぞれの内容について順番に解説します。
新事業活動の取り組みとは
新事業ということなので既存事業とは異なった取り組みを行う計画になります。
では新事業活動とは具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。ここでいう「新事業活動」は次の5つの類型があります。
※東京都産業労働局「経営革新計画申請について-記載要領と支援策-」より抜粋
実はこの類型は要件が変更になる前は4つの類型となっていました。
5つ目の「技術に関する研究開発及びその成果の利用」が新たに追加されました。
経営の相当程度の向上とは
続いて「経営の相当程度の向上」についてですが、経営革新計画の最後に数値計画を作成します。
その数値計画において、次の2つの経営指標の要件を満たす必要があります。
※東京都産業労働局「経営革新計画申請について-記載要領と支援策-」より抜粋
要件変更前は給与支給総額ではなく経常利益でした。
計画の事業期間は3~5年となり、この期間は任意に設定します。
付加価値額とは損益計算書の営業利益に人件費と減価償却費を足したものです。
そして一人当たりの付加価値額とは付加価値額を従業員数で割ったものです。
給与支給総額は従業員への給料の他、役員報酬や賞与、給与所得とされる手当も含まれます。
この2つの指標から読み取れるメッセージは4つある
上記の経営革新計画の新事業活動の取り組み、そして満たすべき2つの経営指標から見えてくることは以下の4点あります。
1つ目は営業利益をあげて欲しいということです。
つまり新事業活動を通して本業の利益を高めて欲しいという事ですね。
2つ目は雇用を創出して欲しい、また従業員への賃上げをして欲しいということです。
給与支給総額をあげるということは新規雇用をするか、既存従業員への賃上げや処遇の改善を行う必要があります。
つまり経営革新を通して単に自社の利益を増やすだけではなく、地域の雇用を生み、従業員への賃上げをして地域経済、地域の労働市場へも貢献して欲しいという事ですね。
3つ目は設備投資をして欲しいという事です。
付加価値額の構成要素である減価償却費とは設備投資をして固定資産を増やさなければ増加しません。
つまり設備投資を積極的に行って欲しいというメッセージです。
4つ目は生産性をあげて欲しいという事です。
一人当たりの付加価値額の公式は「付加価値額/従業員数」です。
これをあげるには単に付加価値額をあげるだけ、従業員数を増やすだけでは不十分です。
一人の従業員が稼ぐ付加価値額をあげる必要があるので、より効率的に業務を行うことが求められます。
ものづくり補助金と同様の意味を持つ経営計画書
これらの要件をみて、気づく方もいるかもしれませんが、ものづくり補助金と非常に似ています。
実際に、ものづくり補助金の公募要項概要版では、
ものづくり補助金とは「中小企業が経営革新のための設備投資等に使える」補助金と書かれています。
つまり経営革新計画の取得をされる事業者様は、ものづくり補助金を活用すべきといえます。
また、逆の言い方もでき、ものづくり補助金の申請をされる事業者様は経営革新計画の取得を検討すべきともいえます。
ものづくり補助金では、経営革新計画の取得、または申請中であれば加点されます。
つまり、ものづくり補助金が採択されやすくなります。
ものづくり補助金の申請書にも最後に3~5年の数値計画を記載するのですが、その要件も付加価値額の増加や給与支給総額の増加などがあり経営革新計画と重複しています。
経営革新計画の承認後のメリット
経営革新計画のメリットは、ものづくり補助金の審査において加点される点以外にもいくつかあります。
具体的には以下のような支援策があります。
・政府系金融機関による低利融資制度
・中小企業信用保険法の特例
・中小企業投資育成株式会社の特例
・起業支援ファンドからの投資
・特許関係料金の減免制度
・海外展開事業者への支援制度
・東京都の関連施策の活用(東京都の場合)
-制度融資
-専門家(中小企業診断士)のフォローアップ
-東京都中小企業振興公社の施策(市場開拓助成事業)
上記は東京都の場合です。
経営革新計画は都道府県に申請を行い、都道府県から承認を受ける支援制度なので都道府県によって支援策などは多少異なってきます。
詳細は所在する都道府県にご確認頂くのが良いでしょう。
ただ、これらの支援策は必ず受けられるものではないということに注意が必要です。
例えば融資、これは金融機関の審査によって最終的に決まるため必ず受けられるというものではありません。
そして経営革新計画が承認されたからといって、事業の成功が約束されている訳でもありません。
とはいえ、経営革新計画を策定することを通じて自社の経営を見つめ直し、現状の課題や目標が明確になるなどの効果もあります。
ものづくり補助金と組み合わせて活用していくことも1つの有用な活用パターンと言えます。
経営革新計画を理解して、自社の経営に上手く活用したいものです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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