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充実はしていた。しすぎていたかもしれない:2022年をふりかえりつつ。

あっという間だったのか、長かったのか。2022年も終わろうとしています。〆切を過ぎて、担当の先生にえらくご迷惑をおかけしてしまった論攷2本を昨日今日とお送りし(内容的には、どうも煮詰めきれていない感じがしています。反省)、ひとまず年内の仕事は納まりましたが、自室の片付けは全く手付かず。残り時間で少しでもできればと思っています(思っているだけになる可能性大です)

さて、昨年も振り返りをしました。今年もしてみたいと思います。

1.  講義のこと。

まずは本業から。

メインの講義科目の進め方

2022年度は対面ベースに戻りました。これまで継続して開講している科目については、対面をベースにしながら、昨年度までに制作したオンデマンド講義素材も活用するというスタイルを採りました。

2022年度の企業行動論の進め方(ただし、このとおりに進んだわけではないです)

こちらは、2022年度の企業行動論の進め方として受講生のみなさんに説明したものです。Google Formによる質問アンケートを毎回実施したので、Slackチャンネルは実質的に稼働することはありませんでした。また、Stand.fmも実施するための時間を用意できなかったです。

企業行動論に関しては、講義素材と対面の併用はそれなりに好評でした。ただ、後期の企業発展論になると講義動画を視ていればいいと考える受講生も増えてしまいました。実際、対面で説明している内容は、講義動画をより深く理解するためにおこなっているので、同じことをしゃべっているわけではありません。どちらかといえば、企業行動論のほうが抽象度が高いので、解説的な内容を中心にしたかもしれません。企業発展論のほうが、明らかにレベル的には高めに設定しているので、動画だけでやりきるというのはかなり困難だとは思うのですが…。

このあたり、オンデマンドの講義動画の併用の良し悪しについて考えさせられました。体調を崩してしまったりした受講生にとっては、自習用素材があるというのは意味があると思うのですが、結果として「オンデマンド講義素材があるから」というほうへ流れてしまう受講生を生み出してしまったのも事実です。次年度に向けて、再考しないといけないところです。

教養特殊講義C(デザインマインドが拓く価値創造)のこと。

2022年度から新たに始まった教養特殊講義C(デザインマインドが拓く価値創造)は、バイオコークス研究所の冨田義弘先生とご一緒に。具体的な素材があるのは、やはりありがたいです。学びのプロセスは、基本的にXデザイン学校で学んだサービスデザインの流れを基本としつつ、素材起点で考えることになるので、少しアレンジを。素材をベースに考えると、いわゆるモノ中心的な思考に陥りがちなので、そこは工夫を。

意外と(意外ではないけれども)難しいのはチームビルディングかもしれません。5学部の学生、しかも1年生から受講できる全学共通教養科目の1つのため、ちゃんと出席してくれている学生は徐々に顔つきも変わってきています。一方で、ちゃんと出席・参加していない学生もいます。このあたり、来年度以降の課題です。履修辞退期間というのが近畿大学にはあるので、それまで講義的な内容をやって、そこで意欲確認も含めた小テストをするというのも必要なのかも。あんまりしたくないけど(笑)

でも、この科目、これからも継続的にやっていきたいなと考えています。いろいろ質問してきてくれる受講生もいるのは、やっぱり嬉しいです。


オンデマンドとオンタイム(対面 / リアルタイムオンライン)の組み合わせの可能性:これからの学び方

対面となると、いろんな準備も必要になります。それに、受講生の側もモバイルPCやパッドなどを持参してくれている学生もいれば、手ぶら状態でくる学生もいます(後者などけしからん!ってお怒りになられる方もいらっしゃるかもですが、ここではそういう感情は入ってません。単に現実としてそういう学生がいるということのみ述べています)。オンデマンドと対面をうまく組み合わせる学びのスタイルというのは、まだまだ定着していないのが現実だと思っています。

2020年度や2021年度は、テキストをちゃんと購入して授業に臨んでくれる学生が増えましたが、2022年度はそれが大幅に減った(元に戻ってしまった)という話も耳にします。私自身は、いわゆるテキスト(場所をとるとはいえ、フィジカルな紙の本のほうがなお)もあったほうがいいという立場です。企業行動論も企業発展論も、今の内容に即したテキストを設定し直さないと(=書かない)といけませんが。

学生の可処分所得と同時に可処分時間の変容ということにも、意識を向けていかなければならないように思っています。大上段からの”こうあるべき”論はご遠慮申し上げます。現実問題として、「なぜ学ぶのか(学ぶ必要があるのか)」「そもそも学ぶとはどういうことなのか」「どのように学ぶことができるのか」といった点は、これからも考え続けないといかんなと、あらためて感じています。これは、正解のない問いなので。

2.  ゼミのこと。

14th。6年目の価値創造デザインPJ。

こちらは、例年どおりもちろん紆余曲折はありながらも、充実したかたちで展開できていると思います。決して華やかなプロジェクトではないです。学生に人気の商品企画とかがメインなわけでもありません。けれども、価値の流れをデザインするという点は、メンバー全員が共有してくれているようにも感じています。

株式会社インテージのお二人においでいただいたときの写真

どんな活動をしていたのかは、ゼミメンバーがInstagramで投稿してくれているので、そちらの紹介で(笑)近々の2つだけ載せてます。

これからもまだ続きます。

今期の唯一の残念事は、合同ゼミに参加できなくなったこと。合同ゼミは研究報告を通じて自分たちの活動や得られた知見を問い直す、すごくありがたい機会です。ただ、今期は諸々の事情で参加できなくなってしまいました。山縣個人としては、これがいちばんつらいです。

とはいえ、2月21日開催予定のゼミのプロジェクト成果報告会では、研究も含めた成果報告をしてもらいます。対面&オンライン開催を予定していますので、ご興味を持ってくださる方はぜひお運びください!詳細は後日!

15th。ビジコンからの始動と諸々。意外にみっちり(笑)

山縣ゼミ第15期も、例年どおりKINDAIビジコンから動き始めました。いろいろ悩みながら、1月18日の最終報告に向けて頑張ってくれてます。

同時に、今期からは他にもいろいろ。株式会社インテージさんとのご縁で、短期型のワークショップを開催することになったり、その他にもいろいろと。

PBL型のゼミ運営はそれなりに(もちろん、日々を見れば紆余曲折試行錯誤ばかりですが)実りあるものにはなっているように思います。こういう局面だからこそ、リフレクティブな姿勢をもたないとなとも感じています。

あと、デザインって名乗る以上は、〈構想する〉〈リサーチする〉〈描き出す〉〈かたちにする〉のプロセスをちゃんと実行できるように、そしてそれを理論的に言語化できるようになりたいなと。これは、毎年の想いでもあります。

13th。卒論。けっこう苦しんだかもしれない。

今年の卒論、けっこうたいへんでした。まだたいへんの途中といったほうがいいかもしれません。

きっちりやっているメンバーももちろんいます。ただ、そうではないメンバーもいて。それがかなりまずい状態でした。かなりていねいに、毎度のように伝えていたつもりだったのですが、なかなか伝わらないものです。

論文を書くというのは、別に研究者になるためだけではありません。むしろ、研究者でなくても、自分の抱いた問いをこれまでの研究成果を踏まえつつ、またデータを集めて、それを然るべき方法で分析し、そこから考察して自らの見解を導きだすというプロセスは重要です。その際、先行研究それ自体やデータを吟味する姿勢を身につけるということ、そしてそれを論理的に言語で表現できるようになること、これこそが〈学士〉の要件だと思っています。ここだけは、私は大学として譲れない一線だと考えています。

だからこそ、卒論に関しては、どうしても厳しくなります。メンバーにしてみれば、「何でここまでせなあかんねん」て思うかもしれません。けれども、学士として学位を授与される以上、一定水準を充たしてもらう必要はあります。

なので、最後までしっかり仕上げてもらうつもりです。

3.  研究&思索のこと。

今年は、共著本1冊と紀要論文1本にとどまりました。

こちらは、経営学史学会の創立30周年を記念して刊行される経営学史叢書第2期のうちの1冊。このなかで、山縣は大学院での指導教授である海道ノブチカ先生とご一緒させていただき、第3部のドイツ経営学の歴史のうちの、第9章、第11章、第13章を執筆させてもらいました。

文字数の制約はありましたが、ドイツ経営学史を通観したものを書くのは、実はこれが初めてだったので、私自身の勉強にもなりました。これをもとにして、ちょっと師匠と共著企画が動くかもしれません。

紀要論文は、以下の1本。もっと書かないといけないのですが、日常に追われて。しかも、この論文も私自身でも不満と反省ばかりです。

ただ、書きたいことが書けてないのかというと、そういうわけでもないです。勢いで書いたので、ちょっとなぐり書き感があって、個人的には不満が残ります。でも、これは自分に対する言い訳でしかないので、今年はもっとちゃんと整えて書きたいと思います。

あと、学会報告としては、経営学史学会での統一論題報告。こちらは、来年5月に経営学史学会年報第30輯に掲載される予定です。この報告をしたあとになって、より歴史学の方法に関心を持つようになってきました。ここらあたり、私のこれからの研究にも影響してきそうです。

もうひとつ。3月には臨床経営学フォーラムに登壇させていただきました。木村祥一郎さんとご一緒に。伊藤智明先生、ほんとにありがとうございます。

発酵的共愉というのは、これ以来まだ使っていませんが、今後も使っていきたいと思います。

このあと、夏の臨床経営研究会にも参加させてもらって、ひじょうに勉強になりました。こういう新しい研究の場に参加すると、やはりすごく刺激を受けます。伊藤先生、さらに服部泰宏先生はじめ、みなさんにあらためて感謝申し上げます。

その他にも、福岡大学の樋口あゆみ先生にオンライン研究会にお招きをいただいたりなど、いろいろ刺激をもらえる一年でした。

私もちゃんとみなさんに少しなりとも刺激を与えられるように研究して、それを公にしていかないとなと、あらためて感じています。

思索の場。

こちらは、2022年も引き続き、文化の読書会とデザイン文化の会。私の今年のnote記事の多くは文化の読書会のための投稿でした(笑)

学術的な読書会とは少し違いますが、だからこそというべきか、かなり広めの視座を鍛えることができてるなぁと思います。コロナ禍で始まったこの読書会、私自身のperspectiveにかなり大きな影響を与えてくれてます。今年かいた紀要論文にもその影響は出てます。

もうひとつのデザイン文化の会では、昨年からのクリッペンドルフに引き続き、マンズィーニの新著を読みました。こちらも学ぶところが大きかったです。このマンズィーニ新著の読み込みは、もう少し続きます。

どっちも準備などは大変っちゃ大変です(笑)でも、こういう学びの場があるから、少しは思索が衰えずに済んでいるのかなとも感じています。

あと、今年はこれにも参加できました。

フィールドワークって、意外と私はその機会をこれまで得なかったので、いろいろ勉強になりました。あと、対面で議論できるのっていいですよね。それと、福岡おいしかったです(笑)

出会いの11月(10月末も含む)。

それと、10月にはオープン・ファクトリーイベントのFACTORISMで堀田カーペットさんに初訪問できたり、11月に入って、藤田金属さんの工場にも行けたり、発酵デパートメントの小倉ヒラクさんと久々にお目にかかれたり(しかも、2回も)、ゼミのプロジェクトでお世話になっているオールユアーズさんにも久々に伺えたり、もう一つ待望だった松本市の藤原印刷さんや東御市のわざわざさんにも訪問できたりと、いろんな方にお会いできたのも実りの一つでした。

こうやって、現場でいろんな話を伺うのは楽しいです。2023年からは、それを思索にちゃんと反映させていきます。

4. 公職のこと。八尾市産業振興会議。そして、新たに。

こちらは、2021年度でいったん任期満了となったのですが、お声がけをいただいて2022年度からも再任ということになりました。今期は、前期の“やお糠床モデル”を具現化していくための実証実験を重ねていくというのがテーマ。

八尾のみなさんは、市民の方も行政の方もどんどん動いていかれるので、議論もぐいぐい進んでます。年明け以降、さらに実験が加速していく予定です。

加えて、年度も後半になって、近畿経済産業局さんから関西デザイン経営推進研究会という諮問会議の委員になってほしいという依頼で、お受けすることにしました(存じ上げてる方がおられたからというのが最大の理由です)。

すでにあるものとして“デザイン経営”を普及させるというよりは、「そもそもデザイン経営って何やねん」というところから。表層的な話ではなく、企業のみなさんが「お、それやったらちょっとやってみよか」という姿勢になってもらえるような議論になったらなと考えています。

5.  能のこと。

今年も引き続き、国立能楽堂の解説パンフレットは執筆させていただいてました。2016年からなので、もう6年になります。毎月なので大変ですが、勉強になります。

あと、2022年はだいぶ能の催事も増えてきた感があります。私も昨年よりは観ることができました。印象に残ったものを思いつくままに。

こう見ると、大槻文藏さんの舞台が明らかに目立ちます。舞台数が多いということもありますが、それだけではありません。このなかでも、やはり『檜垣』はもう非の打ちどころのない舞台でしたし、2月の金沢での『定家』も素晴らしかった。11月の『山姥』は優しくも崇高雄大な趣で、印象鮮烈。1月の『羽衣』も、これまでこの曲をおもしろいと感じたことがなかったのに、こんなに艶麗な曲なのかと認識を大きく改めさせられました。文藏さんも満80を超えられ、老いの兆しはないわけではないですが、それでも当代随一の役者だということは疑いをいれません。ここに挙げていませんが、能狂言『鬼滅の刃』で累の役を演じられたのも、現代語の詞がありながら、それが能になっていたところに強烈な印象がありました。

他にも、友枝昭世さんの『阿漕』も連綿として豊かさを感じる(舞台上にあるのは、残酷な物語であるにもかかわらず)舞台で、驚嘆しました。

あと、今年2度観ることができた佐々木多門さんの舞台も佳かったです。『松虫』での背中の充実や、『楊貴妃』での冷ややかな美趣は、ことに印象に残っています。

この一覧には載せていませんが、今年の最後に観た大阪能楽養成会研究発表会(12月27日)での稲本幹汰さんの『胡蝶』、これは初シテなので、謡などに関してはもちろんこれからの鍛錬ということになるのでしょうけれども、身体の処し方に稽古の成果がみえるようで、今後に期待したいところ。さらに、同じ研究発表会での高林昌司さんの舞囃子『富士太鼓』も独特の力感とリズム感があって、目の離せない舞台でした。若手に魅力的な人がいるというのは嬉しいことです。

来年、どんな舞台に出逢えるのか、楽しみにしたいと思います。

6.  2023年に向けて

2022年は、これまで以上に慌ただしかったです。それだけに、仕事が遅れ気味でした。これは大いに反省しないといけないところ。2023年はもう少し仕事も絞りながら、手際も考えて進めていきたいと思います。

あと、11月にお目にかかれた小倉ヒラクさんから「本、書かないの?書いてよ!」と励ましをいただいたので、2023年は「書く」ことに比重を置きます。

これまでも同じことを抱負のように書いてきたのですが、励ましをもらえると本気で頑張らないとと思うわけです(笑)

師匠との企画以外は、特に執筆予定もないので、来年は書くことに時間をとります。

あとは、体力配分なども考えながら、やっていきたいと思います。

2022年もありがとうございました。
2023年もどうぞよろしくお願いいたします。

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